面接試験その4・・・もしかして:チェックメイト
「まずぼんに言っとかなきゃあかん事があってなぁ」
僕の手を引きながら女性は言う。
「ええか?よー聞きな?ウチがぼんを連れて来た事がバレたら大変なことになるんや、だから誰にも見つかったらアカン―――」
「あっ社長じゃないですか、さっき何か叫びませんでしたか?」
「やばっ・・・」
言った傍から見つかってるじゃないか!
とっさに僕は後ろに隠れる、姿は見えなかったけれど声からして相手は女性みたいだ。
「お、おう!ちょっとでかいマネズミがおってな!」
「社長この間特大サイズのマネズミ殴り倒してたじゃないですか・・・と言うか社長、まだニンゲンなんですね」
「も、戻すのも面倒やからな!」
まだ人間って・・・確かにこの人は人間軽く超越してそうだけどもあまりにも酷くないか?
「そうそう、それよりも!新人君のスカウト、どうなりました?」
新人君のスカウトってもしかして僕のことだろうか・・・つかこの人社長だったんだな。
「う、うん!順調やよ!?あともう少しで落ちるな!」
「へぇ、さすが社長・・・で、どんな子でした?契約は?」
「あ~、えっと、元気な子やったよ?めっちゃ走り回ってたしな?」
うん、確かに走り回ったな、誰かさんから逃げるために。
「ほうほう、元気なのは良い事ですね!で契約は?」
「あ~っと、今ちょ~っと手が放せへん状況みたいでな?ちょっと待ってくれって言われたわ」
確かに手が放せない状況だな、放してもらえない状況でもあるんだけど。
「そうですか・・・ところで社長、さっきから後ろに何か隠してませんか?」
!?
「ぐっ!?い、いや~?なんも持ってないけどなぁ~?」
「い~や、何か持ってますね~?もしかして・・・お土産ですか!?」
「違うわ!そんなんや無くてなー・・・」
「な~ん~で~す~か~!教えてくださいよー!」
やばいぞ・・・これ、どうするんだ?
「・・・しゃーないか、ぼん、覚悟決めとき」
え?今小声でなんていった?
「え、えっとな、ディシエ、スカウトに行った子の事やねんけど・・・」
「ん~?突然どうしたんですか?そんな事よりもお土産ですよっ!」
へぇ、あの女性の名前はディシエさんって言うのか・・・って言うかこの流れはまさか・・・
「・・・もうめんどうなってな!直接連れて来た!」
いきなり女性が横に飛び退いた、当然僕はディシエさんの目の前に晒されることになる。
「ど、どうも・・・」
「あ、これはどうも・・・って、え?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・ええええええええええええっっっ!?」
・・・うん、まあそうなりますよね、知ってました。
「しゃ、社長!これはまずいですよ!『向こうの世界』のニンゲンがこっち側に入って来たなんて、もしもアリアさんが知ったら・・・!」
「だ、大丈夫!バレへんようにさっさと契約を済ませるから!」
「そういう問題ではなく!いやそういう問題なんですが!」
2人ともてんやわんやの状況で僕だけがぽかんとしている、『向こうの世界』ってなんだ?契約って?
「よーするにアリアにさえバレへんかったらええんやろ!だったら大丈夫やって!」
「いやでも社長、今アリアさん確か―――」
「ゴメン!あんまり話してる暇ないねん!早く契約を済ませんと!」
「わっ!」
そう言うと女性は僕の手を引いて近くの部屋に入って行く。
「しゃ、社長!?そっちはマズ―――」
ガチャ!
「・・・おかえり、ヘレル」
部屋の中には眼鏡を掛けた長身の女性が座っていた。
・・・もしかして、この人が・・・
「た、ただいま、アリア・・・」
「さて、一体何があったのか・・・最初から最後までキッチリ教えてもらおうかしら?」