面接試験その3・・・脱走逃走奮闘中
とりあえずなんとか部屋からは脱出できた・・・が
問題はここがどこかさっぱり分からないと言うことだ。
「どこだよ、ここ・・・!」
とてつもなく長い廊下を全力疾走しながら僕はあたりを見渡す。
するとさっきの部屋と同じ色鮮やかな内装と大きな吹き抜けが目に入った。
(ビル・・・なのか?でもこんなド派手なビルがあるなんて聞いたこと無いぞ?)
少なくとも僕の住んでいる近所では無いと言う事がわかる、はたして僕は無事に家に帰れるんだろうか?
・・・帰っても同じ、か。
どうせ家に帰っても僕には―――
―――いや、今はここから出ることだけ考えよう、その後の心配なんて外に出た後幾らでもすればいい。
(ここからどうしようか・・・?)
曲がり角が多い建物の中だからと言って延々と鬼ごっこを続けていればいつか捕まってしまうだろう。
相手は僕を見失っているとは言え鬼のような脚力を持ってるんだからな。
・・・まぁ流石にここまで長い廊下だと後ろに気をつけていれば気付いてからでも曲がり角に飛び込めるか。
問題は逃げてどうするか、だ。
(どこかに隠れる?でもそれじゃあ見つかった時に詰む・・・やっぱりどうにかしてここから出るしかないか)
そのためには出口の位置を確認しなきゃいけない、ラッキーな事にさっき吹き抜けから出入り口っぽい所があった気が―――
「うらぁぁぁぁっっっ!!!」
ドォン!!
・・・え?
なんだ?今後ろで何かが爆発した様な・・・?
「・・・見っけたで・・・」
・・・小さい、聞き覚えのある声が聞こえる・・・
いやちょっと待て!まさかそんなはずないだろ!?さっきまで廊下には誰も居なかったはず・・・
そう思って後ろを良く見ると壁に大きなクレーターが出来ていた。
・・・って待て、この位置にクレーターがあるってことは・・・
もしかして、向こうの壁から吹き抜けをぶち抜いてこっち側まで飛んできたのか!?
「ずいぶん手間かけさせてくれたなぁ?ぼん?」
・・・これが蛇にらみってやつだろうか?目の前の化け物に睨まれた瞬間僕は足がすくんで動けなくなってしまった。
「さんっざん人のこと転ばせてくれおって・・・自分の部屋の床三回もなめる事になるなんて思っとらんかったわ・・・」
二回目以降は僕のせいじゃないだろ!?ってかあのあともう一回転んだのかよ!
「いい加減に・・・せいやぁぁぁ!!」
ヤバイ、と思ったときにはもう遅かった、僕は羽交い絞めにされてしまったのである。
「っ!放せっ!」
「るっさい!放したらどうせまた逃げ出すんやろが!」
「僕を・・・僕を一体どうする気なんだっ!」
「だからさっきからゆーとるがな!ウチはただぼんが欲しいだけやっ!」
「やっぱりそうなんじゃないかぁぁぁぁぁぁ!!」
「何がやぁぁぁぁぁぁ!?」
フルパワーで暴れる僕を女性は難なく押さえつける、力比べでは勝てないとは薄々分かってたけどここまでとは・・・!
「誰かぁぁぁ!助けてくださ―――うぐっ!」
「叫ぶなぁ!」
僕の口を塞ぎながら女性は僕に言う
「なんか勘違いしてるみたいやけどもなぁ、ウチは別にぼんをどうにかしようって訳じゃないんやで?ちょっと話を聞いてもらえればちゃーんと家に返したるから、な?」
「信用できるか!不審者の鏡みたいなセリフ言って!」
「不審者ってお前・・・あーもう、わかったわかった」
そう言うと女性はあっさり僕を放すとなにやら腕輪の様な物を僕の腕にはめた。
「な、なんだよ、これ・・・?」
外そうとしても外れない、腕輪の中央には宝石の様な物がはめ込まれている。
「そいつは『契約の腕輪』、もしもウチがこっから先ぼんに何か危害を加えようとした場合、その時からぼんは自由にあの公園に帰る事ができる、これでどうや?」
「はぁ!?自動で帰れるってどういう事だよ?」
「どういうことも何もまんまの意味やって、んじゃもう1つ付け加えよか、『ウチはぼんが新しい契約を結ぶまで危害を加えられない』」
女性がそう言った瞬間腕輪の宝石が緑色に光りだした。
「うわっ!?ど、どうすんだよ!?これ!」
「落ち着け、しばらくしたら勝手に止まるわ」
女性の言うとおり、光はだんだん淡くなっていって最後には消えてしまった。
「さて・・・これでゆっくり話ができるな」
「い、いや、結局この腕輪がなんなのかわかんないままじゃないか!」
「・・・いちいち文句多いなぁ、んじゃこれで―――」
そう言うと女性は手刀を構えて・・・って待て待て!あのパワーで突きなんか食らったら・・・!
「―――おらぁっ!」
「ひっ!」
思いっきり放たれた手刀、それは僕の貧相な体を貫くには十分と思われる速度と勢いを持って真っ直ぐ―――
『契約違反を確認、ペナルティ1』
カキンッ!
「・・・あれ?」
突きが放たれた瞬間、いきなり僕の前に謎の透明な壁が現れて手刀を弾き返してしまった。
「・・・まぁよーするに、ぼんとの契約がある限りウチはぼんに手ぇ出せへんってことやな」
・・・正直何が起こったのかさっぱりわからないが、とりあえず僕は今の所ギリギリ安全(?)である事は分かった。
「どや?これで少しは話を聞いてくれる気になったか?」
僕は少しの間考える。
(落ち着け、落ち着いて考えてみよう、ここで下手に反抗したらどうなるか・・・?着いていったとしたら・・・?)
悩みに悩んだ末、僕は意を決して女性に言った。
「・・・ああ、でも聞くだけだからな」
別にこの人を信用した訳じゃないけれどあのまま羽交い絞め強制連行コースよりかは遥かにマシだ、そもそも逃げられない距離まで近付かれてしまった以上僕には着いて行く以外選択肢は無い。
それにこのよく分からない腕輪がある限り向こうからはこっちに手が出せないんだ、それなら大人しく着いて行っても危険は無いはず・・・
「ふ~っ、これでようやっと話が出来るようになったなぁ・・・」
そうため息を吐くと女性は僕の手を取る。
「ち、ちょっと待って!手は出せないんじゃなかったのか!?」
「『危害が加えられない』だけや、ほらいくで~」
・・・もしかして、いやもしかしなくても僕、選択間違えた?