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掌編作品(1~4000字)

スクールアナウンス。

作者: はなうた
掲載日:2014/01/20

私の掌編二十作目です。

前作と同名のキャラがいますが、前作とは全く関係ありません。


 ――七月。夏休みと期末テストの影響か、それぞれの教室では焦りや喜びの声が飛び交う。そんな喧騒を遮るように、昼休みを伝えるチャイムが校舎中に響き渡った。


 さあ今日も始まりました。「スクールアナウンス」の時間です。

 司会は私、三年Cクラス、日下部太郎くさかべたろうが務めます。

 私がこの放送部のエースの座を獲得してはや二年。楽しい事、苦しい事、様々な経験して思うことがあります。


 いいかげんこの部屋にもクーラーつけろやっ!!


 そんな暑い願いを胸に、今日も張り切っていくとしましょう。


 さて、毎度おなじみスクールアナウンス。一日ごとに本校の学生一人ずつにスポットライトを当て、彼らの昼休みライフを実況中継する放送番組です。ただし、教室に備え付けられている隠しカメラでの実況ですので、ターゲットが登場せずに終わる事も多々あるという地雷つき!

 こんな穴ぼこだらけの番組を企画したのはどこの誰か! ……ごほん、まぁそれはともかく、早速今日の生徒を――


「ワシじゃよ。若い衆」


 おおっと、そういえば本日の解説者の紹介を忘れていました。私の隣にいらっしゃいますは当学園のOBにて当番組の創始者を自称するご老体、前野歳三まえのとしぞうさんです。本日はよろしくお願い致します。


「うむ、よろしく頼む」


 前野さんがこの番組を作ったキッカケはどのようなものだったのでしょうか?


「よい質問じゃ。まあ、単純なものじゃ……。この学校では生徒一人一人が主役であってほしい。それぞれの生き様を描くドキュメンタリーなどあってもいいと思っての。だから、三十年前にこの番組を始めたんじゃ」


 なるほど。この学校の生徒のためを思っての事ですか。恐れ入ります。


「いやいや、当然の事をしたまでじゃよ」


 しかし、この学校が創立したのは今から二十年前。前身の施設も存在しませんでした。しかも当番組が始まったのは今年の春です。この矛盾は一体どういう事でしょう?


「……」


 おおっと、いきなりだ! ホラでした! 私の隣にいたのは、初っ端から嘘を吐く正体不明のホラ吹き爺さんでした!


「ちょっと、カッコつけたかったんじゃ……」


 言い訳は結構です。罰として入れ歯をお預かりいたします。


「ふががーっ」


 では、番組を進めてまいりましょう。今日の獲物……ごほんっ失礼……主役の生徒は、三年Cクラスで学級委員長を務める烏羽かえで(からすばかえで)さん。

 容姿端麗、頭脳明晰な彼女は、やはり学年でも高い人気を誇っているようです。

 クラスメイトの皆さんに彼女の事を伺ったところ、主な回答は以下のようなものでした。


『あの……サラサラな黒髪で、叩かれてみたい……です』

『気の強い彼女に足蹴にされたいッス!!』

『かえでちゃんの赤縁メガネ、ほすぃ』


 ……そうでした。私も所属する三年Cクラスはそんな奴らばかりでした! 先日も担任の先生に「お前らCクラスじゃなくてMクラスだな」と、何とも不名誉なお言葉を頂いたばかり!


「へぎふんががー」


 何を仰ってるのか分かりません。仕方ないので入れ歯はお返しします。


「カポ……、青春じゃな。ワシも若い頃はよくビンタされてのぅ。でもなぜか嬉しかったもんじゃ。何と言っても婆さんのおっぱいは大き……」


 黙れそんな事はきいてません!!


 ……おっと、そうこうする内に教室に姿を現したのは噂の張本人。サラリとした長い黒髪、チャームポイントの赤縁メガネ、その奥に潜むやや吊り上ったキレイな瞳。烏羽さんは噂に違わずの誰もが認める美人です。


「オイ、何だか彼女、怒ってるようじゃぞ?」


 言われてみれば、いつも以上に目を吊り上げ、肩を震わせています。彼女に一体何があったのか!?


『あたしの食べかけのメロンパン……どこへやったのかしら……?』


 どうやら彼女が席を立っている間に昼食が消えてしまったようです。しかし、その場所はカメラが逃していませんでした。何と、クラス一の変態と名高い男子学生――酒田敏男さかたとしお君が平らげてしまっていたのです!!

 彼に言い逃れはできません。何故なら、彼の口の周りにはその証拠がこってりと付着しているのです!


『酒田……あんた、よくも人のメロンパン食べてくれたわね……』

『いや、あの……。お、美味しく頂きました』

『このボケナスーーっ!!』


 暴言とともに彼女の左フックが酒田君の脇腹を抉るぅーっ!!! 烏羽さんはクラス一の美人ですが、手の出る早さもクラス一でした!

 酒田君は何故か満面の笑みで床に倒れ伏します!


「あれは、痛みより喜びがまさっておるのぅ……」


 やはり最強クラスのМ属性は伊達ではないという事ですね……。次々と襲い掛かる烏羽さんの踏みつけ攻撃! それに涙ながらも嬉しい悲鳴をあげる酒田君! その表情たるや、風呂上りにビールを引っかけマッサージチェアでだらしなく声をあげる中年男性の如くです!


『ぎゃぃん! ぎゃふん! そこ、そこぉぉーー!!』

『あんたねぇ! キモイのよ! 通報されないだけ有難いと思いなさいよ!』


 二人を取り巻くクラスメイトたちは全く動けません。女子はオドオドと、男子は羨ましそうな目で、ただただ二人を見守っています!


「しかし、あやつ幸せそうな顔で蹴られとるのぅ……」


 お、ここへ一人の男子がクラスメイトの輪から出てきました。

 彼は隣のBクラスの鷹崎孝一たかさきこういち君。

 手元の情報によりますと、実は烏羽さんの幼馴染で、彼女にとってはお兄さんのような存在であるようです。小さい頃から彼の後ろを追っかけていたという烏羽さん。彼女にもこんな可愛らしい弱点があったのです!


『かえで。その辺にしときな』

『だ、だって……。コイツがあたしのメロンパン……食べたんだもん』


 出ました! いつもクールな受け答えをする烏羽かえでが『だもん』を発動しましたーーっ! 遠巻きの男子どもの顔が一気にとろけ出します!


「ほんま、ドギツイ奴らばっかしじゃのう」


 悔しいですが同感です。

 先程までの地獄絵図から一転、やや黄色い空気が教室を支配しております。


『俺も昼まだだからさ、一緒に購買行こうぜ。今日は俺が奢ってやるからさ』

『う、うん……。ありがと、お兄ちゃん』


 なんだこの甘い空気は! 委員長の『お兄ちゃん』は強烈でした! 今現在、クラスの男子で立っている者は一人もいません。皆同じようにヘチャバっています! 中には泣いて土下座をする子もいます! 酒田君など顔の輪郭が崩壊寸前だぁぁー!! 誰ですか! 最早誰かもわかりません!! 彼は変態すぎてスライムになってしまったのかーー!!


「ぶほぅ!!」


 何と、前野さんにも効果を及ぼしていたぁぁ! 前野さんの鼻から赤い噴水が飛び出しております! 機材が壊れたら弁償よろしくお願いします。


「む、無理じゃぁ……。ワシ、婆さんに家から追い出されておって……」


 そんな空気お構いなしに見つめ合う幼馴染同士。レアです! 烏羽さんの潤んだ瞳はもう目の前の『お兄ちゃん』しか捉えていません!


「無視とは……、やるのう、小僧」


 徐々に顔が近づいていく二人。このまま彼らの距離はゼロになるのか!? そして唇と唇がー!? 分かりました。私が責任を持ってカウントダウンを送ります。


 五、

 四、

 三! 

 二!! 

 いーち!!


『ちょっと、購買行くの待っててくれる?』


 あと一秒で烏羽さんがストップをかけたぁ!

 何と照れ屋属性も備えていた彼女! それとも焦らし属性か? 焦らすだけ焦らして楽しむタイプだったのかぁーー!?


『いいけど、どうしたんだ? 何か用事か?』

『ちょっとね。まず、あのうるさいバカをぶっ飛ばしてくるから』


 おお……? おおっとぉぉ!? 先程までの黄色い雰囲気潤んだ瞳はどこへやら! 彼女の鋭い視線が捉えるは何と隠しカメラの方向です! 今度は放送室の我々の身に黄色信号が灯りました! 彼女は隠しカメラの場所を見つけてしまっていたぁぁーっ!

 これは大変ですね、前野さん。


「そうじゃな……。だが、ワシの勝ちじゃ。ワシの入れ歯はごーるどじゃぞ!」


 それは黄ばんでるだけだよクソジジイ! それはそうと我々は早急にここを脱出しなければなりません。幸運にも放送時間も終了にさしかかる頃です。

 では、次回の放送もお楽しみに!

 シーユーネクストターイム!! 


 ――次の日以降。不法侵入者の老人の逮捕、日下部太郎の負傷を受け、スクールアナウンスは無期限中止となった。




これはキレイに評価が真っ二つの作品でした。

作者もビックリでした。

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