裕子とSNS
パソコンに向かう母と小学生の娘。
「ママ、なにしてるの?」
「SNSよ」
「えすえぬえす?」
「パソコンで色んな人とおしゃべりできるの。ほら、これがママ」
画面に母の姿に似た二頭身のキャラ。
「わ〜、かわいい。他にもいっぱいいるね」
「パソコンの中のママを動かして、周りの人とお話しするの。北海道とか沖縄とか、遠くにいる人とも好きなだけお話しできて、楽しいわよ」
「確かに楽しそうね。でも……」
「でも?」
「遠くの人たちと話せるようになったことで、逆に近くにいる人との関係が希薄になっていないかしら。SNSで話すにはインターネットが必要。なら、ネットをあまり使わない人はどうなるの」
「裕子……?」
「インターネットが普及したことで、距離の壁は無くなった。でもその代わりに、ネットを『使う人』と『使わない人』という新たな壁ができたわ。日本中の――世界中の人々とコミュニケーションをとれるのは素晴らしいこと。でもそのせいで、パソコンを使わない身近な人との関係がおろそかになるのは、賢い使い方といえるのかしら。SNSの長所と短所を正確に理解しなければ、私たちは結局狭い人間関係しか築くことができないと思うのよ……」
「あ、あなた! 裕子がいきなり、新たな壁ができたとかって……あなた!」