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第3話 初めての依頼

 SP(スキルポイント)の割り振りを終えた俺が、ウキウキで向かうのは――そう、武器屋だ。


 場所は冒険者ギルドのすぐ隣。

 初心者でも迷わない、ありがたい好立地である。


 ちなみにこの界隈には、他にもポーションや旅道具が揃う道具屋、情報収集に便利な酒場など、冒険者に必要なものが一通り揃っている。

 まるで冒険者のためのテーマパークだ。


 ……住みたい。いや、割と本気で。

 そんなことを考えながら、俺は武器屋の扉をくぐった。


 さて、いざ武器屋の扉を開けると――

 中には剣、槍、短剣、斧、そして革製の防具たちが、これでもかと並んでいる。まさに、「これぞ冒険者のための店」といった雰囲気で、見ているだけでテンションが上がる。


 店の奥から現れたのは、いかにも熟練の店主といった渋い中年の男。

 (さて、何を買うか……)

 予算は限られている。ポケットの中に入っていた謎財布の中身、そろそろ底が見えてきた。

 

 小物を入れるための小さな袋と、採取用のナイフを手に取る。

 初心者らしく、見た目も機能もシンプルなものだ。

 だが、今の俺にはそれで十分だった。


 この世界に来たときから身に纏っている装束も、見た目以上に防御性能があるらしい。

 わざわざ鎧を買う必要はないと判断した。


 そして、隣の道具屋で念のためのポーションを買っておく。

 せっかく憧れの異世界に転生できたのに、ここであっさり死ぬなんて御免だ。


 まずは生き残ること。

 話はそれからだ。


「合わせて銀貨10枚だ」

 そういえば、さっき宿代を支払ったとき――

  スキル選びに夢中になっていたせいで、この世界の通貨について全く説明していなかった。実は、冒険者ギルドでシエルに冒険者の“いろは”を教えてもらった時、ついでに通貨についても質問していたのだ。


 その年で知らないのかと、驚かれたが、それはそれはとても田舎の出でと何とか誤魔化した。いや誤魔化しきれなかったかもしれん。

 この世界の通貨は「ルム」と呼ばれ、銅貨・銀貨・金貨と続く定番のラインナップ。ざっくりだが、1ルム(銅貨)=日本円で約100円。銀貨なら約1,000円。つまり、装備一式で10,000円ほど学生の頃のゲーム課金より安い。


 道具屋を後にし、俺は再び門へと向かった。


「おう、坊主。これから依頼か?」

 先ほど冒険者ギルドまで案内してくれた門兵のおっちゃんが声をかけてきた。

「おお、おっちゃん。」

「なーにがおっちゃんだ。一人前の冒険者気取って。俺はまだ25歳だ。名前はパリィ。よろしくな、坊主。」

 そう言いながら、照れ隠しに頭をワシワシと撫でてくる。憎めないおっちゃんだ。


「俺も坊主じゃねぇよ。ヤクモだ。よろしくな、パリィのおっちゃん。」

「まあ、いい。気をつけて行ってこいよ。」


 さて、初めての依頼だ。気合い入れて行くとするか!

 拳に力を込め、深呼吸をして――俺の冒険が、ここから本格的に始まる。

 オレンジの町周辺は強力な魔物がほとんど現れず、俺のような駆け出し冒険者にはもってこいの狩り場だった。

 広がる草原を抜け、視界の端に森の緑が見えてくる。冒険者ギルドの情報によれば、この森の浅瀬にゴブリンたちが潜んでいるらしい。


 息を潜めて近づくと、早速その姿が見えた。ゴブリンが2体、まだこちらには気づいていないようだ。

  さあ、初仕事の始まりだ。

 先ほど取得した鑑定を試しに使ってみる。



 ▼ ステータス


【名前】:―――

【年齢】:0

【種族】:ゴブリン

【称号】: ―――

【レベル】:1



 おお、ほんとに見れた。鑑定のレベルはⅦだ。細かい情報まで見られるが、いつ他の敵に見つかるかわからない場所で、確認するのは難しい。


  シエルの話だと、ゴブリンは人間の子供くらいの身体能力しかないらしい。レベル1なら問題ないだろう。

 落ち着いて不意をつけば、問題なく倒せるはずだ。


 そして、俺が武器屋に寄らなかった理由。それは魔掌の双套による武器の再現が可能なためだ。一度消失ロストさせた武器を瞬時に取り出すことができる。傑物の大斧はスキルだけでなく、武器としての性能も高く、安物装備とは大違いだ。


 一呼吸置いて、全力で近づいた。


「『再現(リバイバル)ーー傑物の大斧』」


 狙いは脳天。思い切り大斧を振り抜く。

 真っ二つに切り裂き、地面にドスン、と鈍い衝撃音。


  すかさずもう一匹へ向かう。

 俺に気付いた時には、俺の手はすでにその首を締め上げ、持ち上げていた。力を込め続ける。やがて息が絶えた。


 どうやらレベルが上がったらしい。強くなったことが、感覚でわかる。魔力やスキルを使うための器がより強固になった気がする。


 生き物を殺すことに、案外戸惑いはなかった。生きるために殺すことに、違和感はなかった。

 俺はこれまで、自分の命を最優先に生きてきた。もっとも、24で死んだのだけれど。

 それでも、タバコや酒といった、能動的に命を削るようなことは一切しなかった。


 今やっている行為は、その価値観とは真逆だ。

 だからこそ、生まれてからずっと大事にしてきたもので駆け引きする行為に、今まで味わったことのない高揚を感じていた。


 依頼の証拠である耳を、先ほど購入したナイフで切り取る。


 これで二つ。残りは三体だ。

「次は魔法を試してみるか」

 そんな考えが頭をよぎったとき、草木がざわりと揺れた。


 ――何か来る。直感がそう告げる。

 某RPGでも草が揺れるときはレアモンスターが現れる。今の揺れは、まるで草木そのものが淡く光を放っているように見えた。

 そしてそこから現れたのは、一匹のはぐれシルバーウルフだった。



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