一話 魔術
魔術。
この世界の全ての生物に生まれつき備わっている力…魔力を身体の外に放出することにより使える異能の力。
この世界はそんな魔術というものが日常に溢れている。
この世界の地位は圧倒的実力主義。実力のない人間は人権すらあたれられないこともある。
俺はそんな世界で無能の貴族として生まれていた。
「あ、兄さん起きてたの。」
そう言いながらその扉を開けるのは俺の妹のシリカ。彼女はこの国でもトップクラスの才能の持ち主ともてはやされていて、この家で最も期待されている少女だ。
「あぁ。まあな。それで?なんか用か?」
かくいう俺、アルはこの国の貴族でもトップクラスで魔術の才がないと言われている。
「今日は魔術の特訓しないの?今日一日暇だし見てあげるよ。」
「ちょうど今からやりに行こうと思ってたとこだ。行くか。」
俺はそう言いながら腰をあげ、移動する。
そうして俺たちは家の近くの森へと訪れていた。
俺の家はかなりでかい。もちろん家に魔術の練習をする場所はある。しかし、俺には才能がない。
俺が練習をしていたところで他の兄弟達に邪魔をされたりすることも多い。
だから俺はよく家の裏にあるこの森で魔術の特訓をしているのだ。
「魔力の総量は他の兄弟を見ても頭一つ抜けているのになんで魔術使えないんだろうね。」
シリカは俺が魔術の特訓をしている様子を見てそんな言葉を呟く。
「さあな。俺にもわからん。」
しかし、いつも思うのだがシリカはどうしてこんな落ちこぼれに話しかけてくるのだろうか。
他の兄弟からは虐げられ、無視され、罵倒されているのにも関わらず彼女だけは俺に話しかけてくれている。
「なあ。シリカ。」
俺がそうやって話しかけたときだった。
「あ、もうこんな時間。ごめん兄さん私先に帰るね。」
シリカはそういい急ぎ足で家へと向かう。まあシリカも暇じゃない。何かしらあるのだろう。
さて、と。
「そろそろ出てきたらどうだ?そんなんで隠れられてるとでも思うのか?」
俺がそう叫ぶとおよそ10人ほどが木陰から姿を現す。
「まさか、バレるなんてね。これでもプロなんだが…。」
コキコキと首の音を鳴らしながらそういう男に俺は問いをなげかける。
「ん…で?何の用だ?」
「アンタ、あそこの家の貴族の底辺とか言われている人間だろ?まがりなりにも貴族だ。金になる。」
「それで言うとシリカの方が金になると思うぞ?あァ悪いな。お前らみたいな雑魚がシリカに手を出せる訳ないよな。コテンパンにされて終わるだけだ。」
「ハハッ。生意気なこと言うねぇ。落ちこぼれ。噂は聞いたよ?魔力量が桁違いなのにも関わらず魔術を使えない雑魚だってね。」
コイツらは山賊とかその辺だろう。だから俺を狙って身代金をあの家に要求でもしようとしているのだろうか?
アイツらがだすわけもないのにな。ま、最悪人間はバラして売ればそこそこの金にはなる。
「ふふっアハハハハ。」
「何がおかしい。」
「いやー。笑えてくるなと思って。あの頃の俺はお前らなんかに喧嘩を売られることはなかったからな。」
「ちっ。もういい。一旦痛めつけてやるよガキが。」
次の瞬間その賊達は俺めがけ複数の攻撃を仕掛けてくる。
「ガッハァ。」
次の瞬間俺の拳はリーダーっぽい男に刺さっていた。
その一撃はこの場にいた誰の目にも視認することがかなわなかった。それほどまでの速度。
男はその拳が当たった瞬間困惑した。それもそうだ。こんな速度人間業じゃない。それも魔術の使えない落ちこぼれがこんな芸当をやってのけた。
「【焔】」
その勢いで吹き飛ばされた男に俺はその魔術を発動する。
その炎に包まれた男は一瞬にして灰とかす。その一撃には慈悲など存在しない。
その一撃を横目に見ていた他の賊達は恐怖の表情を浮かべる。
(あぁ…懐かしいな。かつての俺に対して人間共はそんな顔を浮かべていたっけな。)
「さて、と。この力を見られた以上お前らは生かしておけねえ。全員まとめて殺してやる。かかってこいよ。雑魚ども。」
その言葉によりその賊の行動は色んなものがいた逃げるもの。戦うもの。動けないもの。
「ここは家から近いからな。そこまで派手には出来ねぇし…【暗雷】」
次の瞬間その電撃は円状に射出される。その電撃にあたった賊は丸焦げになり意識を失っていく。
「一人…取り残しちゃったか。」
俺はそう言いながらその男に近づいていく。
「やめろ…来るな。悪かった…。もうこんなことやらねえ。だから…。」
「知らねえよ。そもそも先に手を出してきたのは…お前らだろ?」
「ひぃっ。お前…お前は何者なんだよ。」
恐怖に歪む顔の中男はそう声を荒らげる。
「何者…何者かぁ。ハハッ冥土の土産だ。おしえてやんよ。俺こそが…『大魔王』だ。」
いかがでしたでしょうか。
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それではまた次回




