第六話 レプリティアン
ここで『レプリティアン』の物語を、少し語ろう。
レプリティアンは人類の誕生より、遥か昔から存在した生物であった。
だが、人類が現れて『ヘビ』という『名』を付けると、レプリティアンは、地を這う爬虫類であると『定義』され、手足を失う。
「人間め、この恨みは忘れない」
暗く湿った薮のなかで、レプリティアンは人間を呪った。
そのレプリティアンを救ったのは悪魔である。
悪魔はレプリティアンを『使徒』として使うために、人間に似た『姿』と『知能』を与えた。
悪魔の使徒としての最初の任務は、人類を堕落させることだ。
まず、レプリティアンは、美男子に化けて、人妻の女性に近づく。
「美しき女性よ。君は、もっと人生を謳歌するべきだ。なぜなら、君は『自由』なのだから」
「私は自由?」
「そうさ、人は誰も、生まれながらに自由だ。その自由は、誰にも奪うことはできない」
と、誘惑して、レプリティアンは女性を『堕落』させる。
そして、妻の堕落に気付いた、夫は怒り、
「お前は、何て事をしているんだ!」
と、妻を殴り『負のエネルギー』に飲み込まれた。
この夫婦の間に生まれた双子の息子も、『負のエネルギー』の強い影響を受けて、互いに争い、憎しみあって、ついには、兄が弟を殺害する。
こうして、人間は、負のエネルギーに支配されるようになり、人々の間には『盗み』『暴力』『詐偽』『殺人』等が横行した。
その様子を見た神は、人類の堕落した姿に失望する。
「愚かなる人間よ。こうなってしまえば、絶滅させるしかないだろう」
と、神は人類を滅ぼそうとしたのだが、その人類を絶滅から救ったのは、意外にも悪魔とレプリティアンであった。
レプリティアンは町の中で『利己的な人間』を探して、その男に声を掛ける。
「我と共に歩む欲望に正直な者よ」
「それは、この私のことですか?」
「そうだ。よく聞け、神が人間を滅ぼす。お前は、生き残りたいか?」
「はい。私だけでも、生き残りたいです」
「正直で、よろしい。やがて洪水が襲い来る。高い山の頂上に、お前の家族と共に避難するがいい」
皮肉にも、神の起こした洪水を生き残ったのは『利己的な人間』の家族であった。
神は、その後も、大地震を起こしたり、火の柱を町に落としたりと、堕落した人間を滅ぼそうとしたが、
結果は、いつも悪魔に出し抜かれ、生き残るのは『利己的な人間』ばかりだった。
この頃である、神が『東の島』に赴き、イザナミと出会い結婚したのは。
その後、レプリティアンは、悪魔の命令で神を殺し、神の子の出雲と戦って、重傷を負う。
出雲との戦いの傷が癒えたレプリティアンは、こう思った。
「悪魔を殺せば、俺が、世界の支配者になれる」
そして、ついに、レプリティアンは『ロンギヌスの槍』で、悪魔を貫いたのである。
「何をする、お前を救ってやったのは、この私なのだぞ!」
悪魔は、怒り狂いながらも、消滅した。
『神』も『悪魔』も消えた世界では、人類が、ますます増長し、世界大戦を何度も繰り返すようになる。
あの『東の島』も隣国に攻め込み、結果、報復として、国土を焼き尽くされることになった。