第四話 砂丘での戦い
東の島の大乱で、辺境の砂丘に追いやられた『出雲』であったが、剣士『国主』に育てられ、精強な剣士に成長した。
ある日 、師匠である、国主は出雲に、こう語る。
「お前には、心身を鍛えるために、剣を教えたが、いずれは剣を捨てよ。お前は『神の子』なのだから」
「なぜ、ですか?」
「剣に頼る者は、剣に倒れる」
「では、なぜ、師匠は剣を?」
「私は剣で倒れる事を望んだ人間だ。私は、病で死ぬより、敵の刃で葬られたい。しかし、それは『神の子』である、お前の生き方ではないのだ」
「では、私は、どのように生きれば良いのでしょうか?」
「自分の生き方は自分で決めるものだ。それに、一介の剣士の私には『神の子』の生き方など、説けるはずがないだろい」
国主は、そう言って豪快に笑った。
それでも出雲は剣の修行を続ける。その日も砂丘で一人、剣の修練をしていたのだが、
突如、人間のような姿をした爬虫類が現れた。その爬虫類は槍を担いでいる。
「なんだ貴様は、奇っ怪な姿、魔物か?」
「俺は悪魔の使徒『レプリティアン』だ」
そう言うと、レプリティアンは『ロンギヌスの槍』で、出雲に襲いかかった。
応戦する出雲は、剣を交えながら、刺客に問う。
「なぜ、貴様は、僕を、狙うのか?」
「神の子だからだ。神は俺が殺した」
「なに、貴様が父上を殺しただと!」
出雲は怒りにまかせて、激しく剣を撃ち込んだが、レプリティアンの槍に防がれる。
そこへ、師匠の国主が走って来た。
「無事か、出雲!」
国主も剣を抜き、レプリティアンに挑んだ。
二対一の戦いになる。国主と出雲は、一気呵成に斬り込んだが、レプリティアンの巧みな槍捌きで、翻弄された。
激しく、剣と槍で戦う、三人。
そして、レプリティアンの槍が煌めき、その矛先が、国主の腹を貫く。
「ぐ、ぐあっ」
国主は、口からも血を吐き、その場に倒れた。
腹部の傷からは、おびただしい血が流れ、砂丘の砂に吸い込まれる。
「師匠!」
出雲は悲痛な叫び声を上げた。それを見て、ニヤリと微笑むレプリティアン。
「あとは、この若造、一人だ」
と、一瞬の油断が生じる。 その隙を出雲は逃さなかった。
「いやぁーっ!」
剣が閃光のように走り、 レプリティアンを袈裟斬りに、深く斬った。
「あが、ああぁっ」
血を吹き上げ、倒れるレプリティアン。だが、まだ死んではいない。出雲が止めを刺そうとした、刹那。
空が紫色に光った。
「何だ!」
と、出雲が顔を上げると、天空には、巨大な光る球体が浮かんでいる。
「いったい、何だ」
「我は、悪魔なり」
悪魔は人間の放つ『負のエネルギー』の塊だ。実態はなく『固体』でも『液体』でも『気体』でもない。
人がよく、擬人化する悪魔の姿は、実はレプリティアンの姿であった。
「使徒よ、助けに来た。もう大丈夫だ」
悪魔が、そう言うと、レプリティアンの身体は宙に浮かび、光の球体に吸い込まれる。
その後、球体も消えて無くなった。
「な、何が起こったんだ」
呆然とする出雲。砂丘に倒れた国主は、すでに死んでいる。
「師匠!」
出雲は、何度も呼びかけたが、当然、返事はなかった。