第三話 新世紀神話における創世記
今回は、この新世紀神話に記された最初の章『創世記』を、ご紹介しよう。
そこには、世界の始まりが、こう記されている。
「最初に薄暗い時空があり、その時空から、万物の『素』が飛び出して来た。やがて、万物の素は森羅万象を形成して『名のない世界』が造り出される」
この『名のない世界』は、美しく、穢れのない世界だった。
その世界には、次々と、多種多様な動植物が生まれ、最後に人類が誕生する。
しかし、どうやら、人類という生物は『余計な知能』を持って生まれたようだ。彼らは万物を『定義』して『名前』を付けた。
こうして『名のある世界』が誕生する。
そして人類は、自らの存在を『向上させる』ために、叡知で『神』を創造したのだが、同時に『悪魔』も、生み出してしまう。
その悪魔とは、人間の発する『負のエネルギー』の塊であった。
新世紀神話によると、この悪魔の策略により、人間は『堕落』して、結果、現代に至るまで『欲望』と『快楽』に溺れて暮らしているのだ。
一方、神は、堕落した人間に失望しながらも『東の島』に赴き、人間の女性『イザナミ』と出会う。
「なんと、美しい女性なのだ」
「なんて、神々しい男性なの」
二人は引かれ合い、結婚した。
この『東の島』は、神の影響を強く受け、人々は争いを知らず、自然は豊かな恵みを与え、楽園のような土地にる。
そして、神とイザナミの間に息子が生まれた。
その息子は『出雲』と名付けられたのだが、幸せな暮らしは、長くは続かない。
出雲が、まだ幼い頃に、イザナミが病で死んでしまったのだ。夫である神は、嘆き悲しみ、
「イザナミ、そなたを必ず、甦らせてみせる。私は神なのだから」
と、死者の国へと旅立つ。だが、たどり着いた死者の国で神が見たものは、
「な、なんという事だ」
薄暗い時空で『醜く朽ち果てた』イザナミの亡骸であった。神は自分の目を疑ったが、
その薄暗い時空が、語りかけてくる。
「この世界に変わらぬ物はない。すべての存在は、刻一刻と変化しているのだ。その変化は『誕生』から始まり『死』へと向かっている。これは森羅万象の法則なのだ」
神は落胆したが、所詮は神も人類の叡知から生まれた『存在』だ。森羅万象の法則を超えることはできない。
そして、神は東の島に帰ろうとしたが、帰路、刺客に襲われ、槍を突き付けられた。
「何者だ。私は『神』である。槍を退け」
「俺は悪魔の使徒『レプリティアン』だ」
人間の姿をした爬虫類のレプリティアンは、神の胸に『ロンギヌスの槍』を突き刺した。
槍は深く刺さり、神は死んで消滅する。
その頃、東の島では『神』を失った人々の心が乱れ、争いを始めた。
争いは次第に激しくなり、やがて、権力をめぐる大乱となる。
この大乱で、神の子として、将来の『王の地位』を約束されていた出雲も、島の辺境の砂丘に追いやられた。
大乱に勝利した男は『皇帝』を名乗り、自らを『太陽神の化身』と、自称して、この東の島を支配する。
その頃、悪魔は、使徒のレプリティアンに、こう命じた。
「神の子を殺せ」
「我主の御意に」
レプリティアンは『ロンギヌスの槍』を担ぎ、東の島へと向かう。