【創作怪談】秋の行列
10月半ばの土曜日に、大学のサークル仲間4人でハイキングをしようという話になった。
私以外の名前を仮に、A,B,Cとする。
体力に自信のないメンバーばかりだったので、交通アクセスの良い、神奈川の小さな山を選んだ。
当日の朝、JRに乗って最寄り駅で集合し、コンビニで軽食を買って山に入った。
紅葉にはまだ早いが、涼しい秋の気配がする山を歩くのは気持ちが良かった。
ちょうど前日に台風が通り過ぎた後で、雨で洗われた木々が美しく、私達は爽やかな気持ちでハイキングを楽しんだ。マイナーな山だったせいか、人がいないのもよかった。
頂上で軽食を取り、記念写真も撮って、下山に入った。
一本道で迷いはしなかったが、途中から道が細くなり、急峻な上りが続いた。加えて、昨日の台風のせいで地面がぬかるんでいる。
私達はA,B,私,Cの順で一列になり、口を閉じ、視線も落として足元に注意しながら進んだ。
視界に入るのは自分の足と、前を行く人の踵ぐらいだ。
しばらく進むうちに、私は視界に移るものに違和感を覚えた。前を歩くBのコンバースの横に、裸足の子供の足が見える。土で汚れた、小学生の足に見える。
気づけば、少し前までにぎやかに聞こえていた鳥の鳴き声が聞こえなくなっていた。
重苦しい沈黙の中で、私はひたすら自分のつま先を見つめながら、歩き続けた。
30分ほども歩き続けたように思う。私たちはハイキングコースの入り口に戻っていた。お互いの顔が青ざめている。
Aが呟いた。
「私達だけじゃなかったよね」
私達はそれぞれ人ならざるものを見ていた。
Aは、自分の前に、苔むした鹿の足が見えたといった。
Bは、Aの足の隣に巨大な獣の尾が見えたといった。
私は、Bの足の隣に子供の足が見えたといった。
Dは、私の隣にまぶしい金色の光が見えたといった。
私たちはもう一度目を合わせて、何も言わずにそのまま帰った。
あの日、私たちは異形の行列に紛れてしまったのだと思う。




