探偵宇奈月啓太と宇野益海の関係。
あけましておめでとうございます。
今回はジャンルが探偵モノでは無く、恋愛オフィスラブになっていますが敢えてです。
わざとです。
あらすじなどで察しがつくかもしれないですが、今回は宇野益海の恋愛感情に焦点を当ててみました。
新年一発目でいつもよりショートショートかもしれないですが楽しんで頂けたら幸いです。
1月1日。
僕と秘書の宇野益海は事務所にいた。
秘書の益海は「もう、新年なんですね。」と言った。
僕は「そういえば、キミを雇ってから1年経ったのか。思えば早いもんだな…。」とそう呟いた。
ドア鈴がカランカラン音を立てて事務所ドアが開き、女性が入ってきた。
秘書の益海は「あの、今日はまだ、開いていないのですが…。」と言うもそれをも押しのけて。
写真と情報の書いた紙を僕に差し出した。
「この猫を探して欲しい。昨日の大掃除のときに窓を開けて掃除していたのだけど、そのときに掃除機の音に驚いて飛び出してしまって。」
その女性は終始淡々と語る。
愛猫が飛び出した割には感情が見えない。
「依頼主はあなたで良いのかな?それとも親さんとかに頼まれてきているのかな?」
優しい口調で僕は問いかける。
その女性は「えぇ、私で問題ありません。」と答える。
僕は「でも、僕。子供の頃は病弱だったからあまり動物とか飼ったこと無くて…。猫の生態とか捕獲とか…。全く分からないので見つかるか保証できませんが…それでも僕に頼むのですか?」と訊ねた。
その女性は「きっと、あなたなら見つけられると思う。私より持っているから。」と感情が全く伝わらない。
宇野益海は突然「私、猫飼っているから分かりますよ。」と横から割り込んできた。
その女性は「心強いですね。」ずっと感情の無いしゃべり方をしていた。
宇野益海は僕に「ねっ?行きましょ?探しに。受けましょ?この依頼。」と僕に迫って来た。
僕はため息を吐き。
「困った人は放っておけませんからね…。休みの日ですし、見つかった際には。弾んで頂けるんですよね?」と言う。
その女性は「えぇ…。」とのみ答えた。
僕は契約書を印刷して、相手に連絡先や住所、名前を書いてもらった。
印鑑は持っていないみたいだったので、サインをしてもらった。
そして、僕たちは車を走らせて猫がいなくなった家の付近に行った。
宇野益海は「依頼主さんのお家…。この辺ですよね…。」と言う。
僕は表札を見て驚いた。
依頼主の家は昔ながらの大豪邸でいかにも名家であると、自ら醸し出していたのだ。
「依頼主の話だと、庭をも飛び越して外に行ったとか…。本当に見つかるの?」僕は疑心暗鬼だ。
僕は近くの駐車場に車を止めて。
歩いて探す。
依頼主からもらった、迷ってしまっている猫が好きなおやつを片手に回りをうろうろ。
しかし、野良猫はおろか、地域猫すら見当たらなかった。
僕は宇野益海に自販機でホットの紅茶を買い自分はコーヒーを買う。
宇野益海「全然、見つかりませんね。」と言ってきた。
僕は「見つからなかったら、責任もって説明してもらうからね…。」と益海に釘を刺した。
そのときだった、益海のスマートフォンに電話が掛かってきた。
益海は立ち上がり、僕から離れて電話を取った。
僕はその間、猫の習性などを調べて探す方法の参考にしようとした。
益海はちょっと長めであったが戻ってきた。
僕は「探すの再開するよ。」と言って歩き出した。
益海もそれについてきた。
僕は近所の人に聞き込みをして、猫の集会場所を教えてもらった。
日も傾いた頃だった。
猫が集まり出す。
僕は暗視ができる双眼鏡で猫を観察すると、その中に一匹。
似た模様の子がいた。
僕は餌でおびき寄せようとするが、他の子たちが寄ってきた。
そのときだった、益海がどこから抜いてきたか根のついたエノコログサを振り回して、その子をおびき寄せる。
そして、益海はポケットからおやつを取り出して。
そのまま捕獲した。
僕たちは捕獲した子をケージに入れてよく観察した。
どうやら、この子が依頼主の飼い猫のようだ。
僕はその日のうちに依頼主へ連絡した。
電話越しで依頼主の声が安心から少し柔らかくなったのが分かった。
依頼主は夜、すぐに事務所に来てくれた。
僕はどうしても気になっていた質問をぶつけた。
「どうして、地元の事務所じゃなくてわざわざ僕を頼ったんですか?」
依頼主の女性は冷たい感情のこもらない無い声で「なんとなく。」とのみ答えた。
僕は猫を見せて間違いが無いかを確認してもらった。
依頼主の女性は「リリーちゃんかわいいねー。寒かったでしょー。良かったねー。もふもふ。お家に帰れますよー。」さっきまでの無表情と無感情が嘘みたいな猫撫で声のとろけ顔を見せた。
依頼主の女性は我に返って、「あっすみません…。つい…。」と気まずそうにした。
僕は「良いですよ、間違いないですね。この子で。久々の再開ですもんね。」と言った。
依頼主の女性はかなりの大金を報酬としてくれた。
最初の契約の通りではあるが。
しかし、僕はそれより宇野益海の横顔が気になった。
浮かない顔をしていたのだ。
益海はこっちを見ていた僕に気づいて。
「啓太さん。話がある…。」と言う。
僕は「何かあった?」と訊いた。
益海は「他の探偵事務所の探偵から、こっちに来ないかってお誘いがあったけど…。迷っているの…。啓太さんはどう思う?」
僕は迷った。
でも僕の口から出たのは「そっちの方が待遇は良いのか?」そんな言葉だった。
そんなのは引き抜く位だからわかりきっていた。
益海は「ここよりは確実に給料は上がると思う…。だけど、やり甲斐があるかは分からないわ…。ここでいろんな人と出会って、いろんな事件を解決して。感謝されて楽しかったし…。」と決めかねている様子だった。
僕は「給料が上がれば、その方が好きなのモノだって買えるし、給料が高いのにこしたことは無いから、この事務所は僕一人でも、多分なんとか回せるしさ?キミは好きな方を選べば良い。」
僕が強がった。
益海がいないと成り立たない事務所。
それなのに好きな方を選べば良いと。
益海は「啓太さんなんて大嫌い!!!!」そう叫ぶと、事務所を泣きながら飛び出していった。
僕は大きなため息を吐いた。
僕はタバコを吸うため、事務所裏の非常階段に出る。
宇野益海はそこですすり泣いていた。
益海は「今まで黙っていたけど、ずっとあなたが好きだったの。あの暗い部屋であなたがまだ刑事だった頃に入ってきて、捕まって。更生したら雇ってやるって言われて本当に雇ってくれたあの日からずっと…。」
僕は知らなかった。
益海がずっとそんな気持ちだったなんて。
僕は益海を抱きしめる。
「あんなこと言ってごめん…。僕だって本当は辞めて欲しくなかった。とても優秀な部下だったし、でもあなたの将来をここで棒に振っても欲しくなかった…。」
益海は「あなたのためなら、将来なんて棒に振っても構わないわ…。だから、結婚しましょ…。」
僕は突然の告白に驚いた。
でも、これを逃せば益海は僕以外の好きでも無い人と結婚することになる。
益海の言葉はうそ偽りも無かった。
真剣な目だった。
僕は「あぁ、その覚悟あるなら僕もOKだ。これからもいっしょに居よう。」
そうして、僕と益海の間にあったしこりは完全に消えたような気がした。
最後までお読みいただきありがとうございます。
楽しんで頂けたでしょうか?
今回は頭に残っていた設定を消化する…。
いや、降ってきたイメージを元の設定と合わして…。
つまり悪魔合体ですね。(?)
それを元に大体の流れを書いて、このような作品に仕上げました。
後書きまで、しっかりと読んで頂き。
本当にありがとうございました。