君は突然に
「ねぇ、異世界に行ってみる?」
「は?」
「だって君、さっき異世界に行きたいって言ってたでしょ?」
君は突然そんなことを言ってきた。挨拶すら数回程度しか交わしたことのない僕に、だ。
確かに、僕はさっき「異世界に逃げ込みたい」とは言っていたが(と言うか独り言だったはず。よし、これからは独り言のボリュームを下げよう)、それを聞いただけで、「異世界に行ってみる?」となるだろうか、否、普通はならないだろう。まず、根本的に、異世界なんて存在するのか?
「うん!存在するよ。」
「わぁ!びっくりした〜」
「だって君がわかりやすい悩み事をしていたから、悩みの種を一つ無くしてあげようと思って。」
「まず君が、今一番の悩みの種だよ。」
「あっ!喋ってくれた!」
「君は僕を何だと思っていたの?僕だって、普通に喋るさ」
「いっつも静かに本読んで、周りに人を寄せ付けないようにしてるくせにそんなこと言うの?」
「痛いところ突いてこないでよ」
「私は正論を言っただけです〜」
「はいはい、そうですか」
「「ふふっ」」
「なんか馬鹿らしいけど、君と喋るの楽しいよ。」
「僕もだよ。人と喋るの案外良いね。」
「じゃあ、これから積極的に喋りかけるね!」
「それはやめてほしいかな。できるだけ人がいない時なら良いけど。」
「えぇ〜、まぁいっか。それで、話戻すけど異世界に行く?」
「唐突すぎるよ…行けるなら、いきたいかな。」
「わかった。じゃあ、今週の土曜日、朝9時に雨色駅に来てね」
「わかった。ほんと、唐突だよね」
「それが私の長所だから。じゃあ、またね、遅刻しないでよね」
「遅刻なんてしないよ!バイバイ!」