The three giant ~森の魔森神~
今回はある程度真面目に書きました。
むかし、彼は一人でした。
体は土で、その身を木の根で覆っていました。
彼は、いつもその身を縮こまらせ、俯いて暮らしていました。
ある日、彼は自らの体に、いろいろな者が暮らしているのに気が付きました。
木の洞にはリスが居ました。枝には鳥が卵を温めています。木の根では兎が体を休めています。
それを見て、彼はなんだか安心するような、ほっとするような気持ちになりました。そこで彼は、それらと触れ合おうと、自らの体を震わせました。
動物たちはその瞬間、慌ててどこかへと消えて行ってしまいました。
彼はそれを止めようと思いましたが、どうしようもありません。誰もいなくなってしまってから、彼はいなくなってしまった動物たちを探して、旅を始めました。
彼の旅は、寂しいものでした。動物たちは、彼の姿を見るだけで逃げ出してしまいます。だから、彼は決して、動物に会うことができませんでした。会えるのは、ただ、木や草だけでした。
そうしてしばらく旅を続けていると、やっと、彼は誰かを見つけることが出来ました。二本足で立つ、誰かです。
それらは、彼を見ても住処からは逃げ出しませんでした。
彼は喜び勇んでそれらと触れ合おうとしました。
しかし、それらは彼に火や棒を持って立ち向かいました。彼は火を向けられ、棒で叩かれ、すごすごと彼らの住処から立ち去りました。
それらに拒絶されても、彼は諦めきれませんでした。彼らの住処の麓にずっと立ち続けたのです。
そうして、どれほどの時が立ったでしょう。彼のいた場所で、地震いが起きました。地面は揺れ、それらの住処にも山上から大きな岩がいくつも落ちてきます。
彼は、それらの住処に向かいました。何人ものそれらを助けました。大きな岩を身を持って受け止め、その根を地面に張って、地面が崩れないように支えました。
地震いの後、それらは彼に感謝し、彼に手を添えました。彼は再び、ほっとするような、安心するような気持ちになりました。
それらは、彼に話しかけました。彼に祈りました。自らを人間と呼び、彼を神木と呼びました。
神木となった彼は、もう動くことは出来ません。根っこが地面に張ってあり抜けないからです。
ですが、彼はもう動こうとはしないでしょう。何故なら、彼の周りにはもう、たくさんの人々がいるのですから。
なろラジ大賞と冬童話投稿用の作品。
童話用ってこともあるけど、なろラジ用の前作、前々作に比べれば真面目に作ってみた。
なお、一応設定的には拙作の”オーク転生”内で伝えられている話っていう設定。某老木様とはそこはかとなく関係ある。