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たとえ瞳が失われても  作者: しっつう
1章 出会いとこれから
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5

そんな嫌な過去を思い出していた月華は、回想をやめ、小さくため息をついた。

月華がふと時計に目をやり、時間を確認すると、時刻は18時05分であった。

そして、月華は目の前の机に視線を落とす。

その机の上には、携帯電話が置いてあった。

その携帯電話は月華のものであり、昨晩届いたメールの画面が映し出されている。

差出人不明のそのメールには、こんなことが書かれていた。


「明日、19時に西方学園生徒会室に集合」


西方学園というのは、月華や聖が通う高校のことである。

だが、月華からすれば言われずとも今日は生徒会室に来る予定であった。

なぜなら、今日は月華が生徒会長に就任して、初めて生徒会業務を行う日であるからだ。

この学園の生徒会システムは、少し変わったものであり、生徒は自由に生徒会役員に立候補できるが、立候補者などの名前は公表されず、学園理事長が独自の判断で選考するというものであった。

月華は生徒会長に立候補したわけでもないのに、なぜか生徒会長という肩書を手に入れていた。

更に不思議なことに、一般生徒には月華が生徒会長になったということは公表されたが、他役員の名前は公表されていなかった。

しかし、月華にはなぜ自分が生徒会長になったのか、なぜ他役員の名前が公表されないのかについての大方の見当はついていた。


西方学園の生徒会は、年に一度、生徒会役員全員が入れ替わり、新しい面子になるため、前生徒会役員や、教師に邪魔されることなく、一カ所に《瞳戦争》に関係する人間だけを集めることができる。

しかも、理事長が選考するのなら尚更だ。

何者かが理事長の頭を洗脳し、生徒会役員が《瞳戦争》の関係者だけになるように選考させたのだろう。

まあ、そんなことするやつは俺が知る限りだと《天使》以外いないが。

俺に、こんな化け物じみた能力を与えた《天使》からすれば、一人の人間を洗脳し、自分のやりやすいように行動させることなんてそう大したことでもないだろう。

そしてあの性格の悪い《天使》のことだ。

俺の《守護人》となる人物と、俺が初めて顔を会わせる予定の日より前に、俺が《守護人》が誰なのか知ってしまっては、面白くないと考えたから、他生徒役員の名前は公表されていないし、生徒会長である俺にも知らされていないわけだ。


そんなことを考えていた月華はふと、あることを思い出した。

昨日月華は、学園理事長にこんなことを言われたのだ。


「明日の19時までには生徒会室にいてねー。

19時になったら、生徒会室に顧問の先生が来て、生徒会業務についての説明があるから、よろしくー」


あまり深くは考えていなかったが、昨晩メールを送ってきた人物が生徒会顧問なのだろうか。

それとも、《天使》か?

いや、《天使》であればメールなんて回りくどい手は使わないか...。


そんな思考を月華が巡らせていると、いきなり生徒会室の扉が開かれた。


時刻は18時10分

誰だと思い、不機嫌そうに月華は扉のほうに目を向けた。


そこに立っていたのは、白髪に少し気怠そうな顔、高校生とは思えないほど、鍛え上げられた肉体をしている、一人の男子生徒だった。

月華はその男のことを全く知らなかったが、男の高校生離れした肉体と、顔は気怠そうだが、男からたしかに感じる鋭い殺気、そして今日、この時間に一人で生徒会室に来ていることから、月華は男が自分の《守護人》となる人間だろうと察した。


そして男が口を開き、月華に対しこう言った。


「お前、《瞳憑き》か?」


やはり、か。

なんとなく察しはしたが、本当にこんな頭の悪そうな、脳筋タイプの男が俺の《守護人》だとはな。

力はあったとしても、頭が悪くては俺の役には立てん。


そう、月華は心の中で落胆した。


月華は非常に頭が良いため、《守護人》も自分と同じような、頭脳派の冷静な人間であってほしいと考えていたのだ。

月華は、感情に任せて行動したり、力が全てだと勘違いしているような、肉体派のバカは嫌いだ、と常々思っていた。

そして月華には、自分の《守護人》であろう男が、月華の嫌う人種に見えたため、落胆していたのだ。


だが月華は落胆しつつも、


「ああ、そうだ」


と答えた。


その月華の返事を聞いた直後、口元に笑みを浮かべた男の右手から、一気に体全体へと稲妻が巡り始めた。

そして男の全身を稲妻が包んだ瞬間、男は月華へと殴りかかってきた。

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