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恋する凡田くん  作者: pgmn
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渡瀬ひなの

「おはよう、渡瀬さん!」

「……おはよう」

  渡瀬ひなの。彼女こそ、僕の意中の相手だ。高校生活初日、シンプルに一目惚れした。それ以来、彼女のことが頭から離れない。


 例えば、冴えない男子が主人公の物語は、決まって女性の方が先に好意を寄せている。些細なキッカケで、冴えない男子が女子にとっての特別になる。それに気付かない男子も、徐々に女子の好意を知り、惹かれて行くという寸法だ。


 おかしいだろうと思う。現実にそんなことがあるはずがない。そんなことがまかり通るなら、あの時電車で席を譲ってあげた彼女も、財布を届けてあげたあの子も、僕のことを好きになっていないと計算が合わないではないか。

  現実はどうだい?指折り数えてみると、彼女がいない年数と年齢が見事に一致するではないか。こんな奇跡、お呼びでないんだよ。


  危ない。このような愚痴を上げ連ねれば、やがて夜は明け、大地は枯れ、アスファルトに花は咲き、それを見た通行人に笑顔が溢れ、下らないことを悩むのは止めようと、自らの人生を省みてしまうところだ。


  そう、こんなことを考えていても、渡瀬さんが僕を見てくれるわけではない。ネガティブになったら、それこそおしまいだ。具体策を練るとしよう。


  今日の出だしは悪くなかった。渡瀬さんが僕より先に学校に来ていた。そうすれば、まず挨拶できる。話しかける理由があるのとないのとでは、天地の差だ。朝から話しかけることに成功したのだ。ここで畳み掛ける。


「今日は良い天気だね!」


  そう、天気の話題。この前読んだ本に、天気の話題は間違いないと書いてあった。大富豪で言うところの2、チェスならクイーン。さあ、どう出る、渡瀬さん。


「曇ってるよ」


  ああ、渡瀬さん。今日もクール。今にも好きが溢れ出てしまいそうだ。

  僕はこれまでの人生で、17回フラれている。10回目くらいから、フラれるショックも薄れてきた。こういうの経済学では効用が減ると言うらしい、知らないけれど。

  ただ、この17回の挫折も無駄ではない。フラれる理由は見た目や運動神経ではないことが解ってきた。告白とは、それそのものに大した意味はない。告白する頃には勝敗は決まっているのだ。僕は今までそこまで仲良くなっていない子に告白していた。それで成功するなら、僕は今頃サッカー部のキャプテンだ。冴えない僕は、より確率の高い方法を取らなければならない。


  当面の目標は、渡瀬さんと仲良くなることだ。


「そそ、そ、そそそうかな、僕は曇りも嫌いじゃないよ、涼しいから、へへへ」

「ふーん、変なの」

  キーンコーン…

 ホームルーム開始のチャイムが鳴る。今日は良い日だ。朝から渡瀬さんと話せた。もっと渡瀬さんと仲良くなりたい。

そうだ、いつかは僕も。


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