1.魔王様と勇者様、怒る。~魔王様&勇者様VS王子様(笑)&ヒロイン(笑)~
不定期更新ごめんなさい。
アーちゃんが帝国の皇后陛下となり、接点はほとんど無くなった訳だけど、
だからと言って、ラミエス嬢のターゲットから私が外れた訳では無い。
むしろ、レインを恋人?にしたいらしい彼女からしたら私自身も障害物なのだし。
「酷いですウルフェン様……!」
「…?なんの事ですの。」
「とぼけるなウルフェン嬢!貴様は、アリスの教科書にこんな酷い事を………!」
愚殿下が掲げた教科書…だった物は切り刻まれたのかボロボロになっていた。
……これ、剣でやったのかしら?
一応、学園内では帯剣が許可されているし私もレインも、この具殿下も帯剣しているわ。
ただしー
「お言葉ですが殿下、私の"剣"をご存知ですの?」
そう言って私は鞘から剣を引き抜いて見せる。
その剣は闇色に光る水晶で出来た"棒"、と表現するしか無い物。
私の戦い方は、この棒で叩く様な戦い方。
非殺傷武器のこれでどうやって切り刻むのかしら?
しかし、愚殿下もラミエス嬢もそんな私の反論を否定する。
「その棒だけでは無いだろう?
そもそも、その棒に闇属性魔法を這わせれば剣にもなる。
言い訳にしても見苦しいぞウルフェン嬢!!」
「そうですよ!それこそ闇魔法で切り刻んだのでは!?」
「……その 闇 属 性 魔 法 の刃、【精神体用】ですわよ。
授業でもそう習いませんでしたこと?」
……何度も言うけれど、闇属性は精神・魔法防御の属性。
その闇属性魔法で作った刃は精神体や魔法しか斬れない。
ラミエス嬢の言う闇魔法は、何かの揶揄かしら?
そんなにも私を"悪役"にしたいのかしらね。
……尤も、物理剣は地属性で"砂鉄を集めた剣"を作れるから確かに言い訳にはならないわね。
…ややこしくなるし不利になるから態々言わないけれど。
「ええい!言い訳ばかりを重ねるなウルフェン嬢!
今ならアリスに謝るだけで許してやるのだぞ!?」
「何もしていないのに何故謝らなければならないのですか殿下。
私がやったと言う証拠はありまして?
第1ー
ー第1、エリィは私と一緒に居ましたよ殿下。」
…私が反論すると、私を後ろから抱きしめたレインが私の反論を引き継ぐ。
そんなレインの態度に愚殿下は激高し、自称ヒロインは顔を歪ませる。
…自称ヒロインの割には随分醜い顔をするのね?ラミエス嬢。
「また貴様かレインハルト!!
いくらコイツが婚約者だからと言って、罪人を庇い立てするなら貴様も同罪だぞ!!」
「殿下こそ確固たる証拠が無いのに思い込みだけでエリィを犯人だと決め付けるのはやめて頂けませんか?
……王族相手とは言え、名誉毀損で訴えますよ。
それに、そちらのラミエス嬢に至っては男爵令嬢でしょう?
下手に上級貴族へ在らぬ疑いばかりかけていると、自分の身に返ってきますよ。」
「レインくん!優しいレインくんまでそんな悪い人みたいに権力を盾にしちゃダメですよ!!」
「…ラミエス嬢、本当に……本当にいい加減になさいませ……?」
あぁもう………本当に、なんなのよ……話が全く通じないこのイキモノはどうすればいいのかしら。
何度も何度も注意してもなおさない、態度を改めない、それなら一体どうすればいいのよ。
レインも頭を押さえて深いため息をつく、そして、愚殿下に向かって何度目かの忠告をする。
「殿下。
付き合う人間はある程度選ぶべきかと存じます。
その様な貴族の自覚も無い、非常識な方との交流は貴方の為になりませんよ。」
「えぇい黙れレインハルト!!
アリスを愚弄するな!………近衛兵ッ!」
「「殿下ッ!!」」
「なにこれぇ……
「うわぁ……
あら?
そう言えばさっきからアル様が見当たらないと思ったらフェイ様を連れてくる為に騎士学部へ転移していたのね……
私とレインが声を荒らげると同時に現れたアル様とフェイ様がドン引きした声を上げた………
「アルカが慌てて僕を呼ぶから何かと思えば………
オイ、そこのイキリ王子。」
「「!?」」
え………?
ふ、フェイ様…………?
フェイ様が普段からは想像出来ない、地を這うような低い声を上げた事に私とレインはビクリとしたわ。
そして、フェイ様は普段から帯剣している彼の剣……【双界】を少し引き、刃を見せるようにして威圧しながら続ける………
「今すぐ、兵を退け。さもなくば、我が相手になろうぞ。」
「やっぱり!本性を現したな魔王っ!ライトくんっ!あの悪い魔王をやっつけよう!!」
「ああそうだなアリス!」
……そう言って愚殿下を焚き付けたラミエス嬢は掌に魔力を集め、光の玉を作り出し、
愚殿下は愚殿下で剣を引き抜きフェイ様と対峙する。
そんな異様な事態に周りに居た生徒は皆、悲鳴を上げて逃げ出した……
当然の反応ね。
ただ、その中でルゥちゃんともう1人だけは教室から逃げ出さずに私とレインのそばに来たのだけれど。
「「エリカ様っ!」」
「…ルゥさん、フィーさん、貴女達も逃げなさい。」
「嫌です…!エリカ様達を置いて逃げるなんて私には出来ませんッ!」
「んっ…ワタシ、も…エリィとバンバルディア様を守る……!」
「2人とも。」
私は、少し声を強めて逃げる様に促した、けれどルゥちゃんは、フィーちゃんは、逃げ出さない。
それどころか、私を守る様に前に出たわ………
「エリカ様、私だって魔族の端くれです!
エリカ様を守る位私にもできますっ」
「ワタシ…だって…退魔師の端くれ…!」
「…っ。わかりましたわ。
お二人共私から離れないでくださいまし。」
「うんっ!」
「んっ…!」
私は、私達の前に闇属性と地属性の魔法障壁を展開し、
この後の展開に備えた。
それに倣う様に2人もそれぞれの属性で障壁を上貼りする………
……フィーちゃんは、闇属性魔法の使い手でダーレム侯爵家の令嬢だわ。
そして、私と同じかそれ以上に闇属性魔法に詳しい【退魔師】の家系よ。
その漆黒の艶髪をなびかせ、紫水晶の様な神秘的な瞳を輝かせる様はまるで1枚の絵画の様、だけれど今は目の前に集中しないと………
「そうか……我等に敵対するか………ならばコチラも容赦はせぬぞ?」
……あぁ、やっぱり。
おどろおどろしい雰囲気をまとっていても、フェイ様はフェイ様なのね……
まだ、威圧しているだけのフェイ様は本気ではない……何故なら本当は、無駄な争いを避けたいんだから。
しかし、愚殿下と自称ヒロインはその意図に気付かず戦闘を開始する………
教 室 の 中 で 。
馬鹿だ馬鹿だとは思っていたけれどここまで考え無しなのかしら!?
「ッラァ!!」
「…遅い。」
「消えちゃえっ!!」
「避けるまでもない。」
「そんなぁっ!?」
斬りかかってきた愚殿下の剣をあっさり避け、ラミエス嬢の魔法は着弾する前に霧散する……
魔王殿下、なだけにマナの扱いは超一流。
その魔王殿下に貴女如きの魔法が届くと思っているなら本当におめでたい頭ね。
「おバカな事は、やめませんか?」
反撃とばかりにアル様が2人に魔弾を飛ばす。
が、牽制弾の為か威力は低そうに見える。
案の定弱い弾だったらしく愚殿下も愚令嬢も避けるなり弾くなりしてみせた、けどあの程度の牽制弾なら私は受け止めてそのまま返すまで出来るわ………
が、愚かな2人はそれに気付かない。
「ハッ。勇者なんて言っても所詮は魔王の腰巾着だな!」
「醜い犬は消えてくれないかなぁ!?」
『はぁ………』
そんな2人の態度に私達6人は呆れたため息をついた………
あのねぇ………今の、アル様の実力の1%も出てないのだけれど………
なんなら、あの牽制弾ならこの学園全域に隙間なく降らせるくらい出来るわよ………
そんなアル様の気遣いが分からないなんて……
と、ここで今度はレインが前に出て声を上げる。
「これ以上の愚かな行為はお止めください殿下ッ!
魔王殿下に刃を向けるとは何事ですか!!
それでも貴方は次期国王となるお方なのですか!?」
「黙れ!黙れ黙れ黙れぇぇぇッ!!」
「っ!」
レインの忠言に声を荒らげ、雷魔法を飛ばしてくる愚殿下……
しかし、私がレインに贈ったイヤリングが発生させた魔法障壁で完全に防がれる……
って、イヤリング程度に込めれる魔力だけで防げるなんて、いくらなんでも殿下の魔法、弱すぎないかしら……
弱過ぎてビックリしている私を見て逆の事を思ったらしい自称ヒロインは私を嘲笑うように魔法をこちらにも飛ばしてくる………
相変わらずムカつく位に詠唱破棄なのね。
今のは中級光属性魔法の『ライトジャベリン』に上級魔法の『ジャッジメント』かしら?
なるほど、味方が愚殿下しか居ないから遠慮はしない、と。
あの自称ヒロインから見たら愚殿下以外全員敵だものね?
だけどね。
「……貴女、ビックリする程愚かね。」
闇属性魔法の使い手に、"魔法"が効くとでも?
当然の様に自称ヒロインの魔法は私とフィーちゃんの闇属性の魔法障壁に阻まれ霧散する。
闇属性の魔法障壁は対魔法特化の障壁。
余程の実力差が無い限りは魔法に対する絶対防御になるわ。
だから闇属性魔法の使い手には"物理攻撃で攻める"のがセオリーよ。
ただしー
「むぅぅ…!ならっ!」
続いて自称ヒロインは魔導具の【爆弾】を投げつけて来る。
なるほど、闇属性魔法の使い手には物理攻撃である爆弾は効果的ね。
だけどその爆弾は私とルゥちゃんの地属性の魔法障壁に阻まれる。
爆風で飛ばされてきた机や椅子なんかも同じく地属性魔法障壁が弾き返したわ。
地属性の魔法障壁は対物理特化の障壁。
余程の胆力が無ければ破壊不可能な強固な壁となる。
…………要するに、自称ヒロインのラミエス嬢は弱いのよ。
悲しい程にね。
「グゥォォォッ!?」
「きゃぁぁぁっ!?」
そしてその爆風で飛んできた机や椅子は、アル様の魔法障壁で守られているフェイ様やアル様本人、私の贈ったイヤリングで自動防御されたレイン、そして混合障壁で防いでいる私達3人には当たらなくとも、無防備な愚殿下や自称ヒロインには当たる。
何しろ2人とも地属性は持たないもの。
まさに自爆、と言うに相応しいわね。
机や椅子で殴られた2人は、全身痣だらけの満身創痍状態になったわ。
……本当に、何がしたいのかしらね?
「…ハッ。我との戦いの最中に他の者に手を出すとは気の多い事よな?
それで自爆していては世話無いが………
「まったくですね、王太子なんてこんなものですか?
醜い自称ヒロインは消えてください。」
あー……アル様意趣返ししてるわねぇ………
と、2人はそんな状態にでも立ち上がる気力はあるらしく、フラフラと立ち上がった……
あらあら、見た目だけは良かったのにそれすら酷い有様になるなんてー
「惨めですね、殿下。
ですがそれがその令嬢と"お友達"になった結果ですよ、いい加減に理解してください。」
「だ…まれぇぇ……!」
「はぁ……………
ーあら、私が思った事を言ってしまったわね、レイン。
まぁ、わざと、なんでしょうけど。
そして、愚殿下はフラフラと幽鬼の様な有様でレインに剣を振り下ろす。
しかし、当然の様にレインは魔法障壁に守られ、刃は届かないわ。
「……殿下、貴方は弱い。
そんな下賎なる女にうつつを抜かし、いつから鍛錬をサボっていたのですか?」
「黙れ……アリスを……愚弄するな……
「煩いぞ、負け犬が。」
「ガッ!?」
「……魔王殿下。」
「…あ。あはは………ごめんごめん!」
そんな愚殿下に厳しい目を向け、説教を始めるレイン。
しかし、魔王殿下はいい加減に目障りだったからか愚殿下の鳩尾に拳を叩き込んだ。
いい感じに入ったらしく一撃で沈んだわね……
レインが非難する様に声を上げると、フェイ様は雰囲気を霧散させていつものフェイ様に戻り、頭を掻きながら苦笑いした。
自称ヒロインの方はアル様が魔法で眠らせたみたい。
「…この子、上級魔法を詠唱破棄出来るくらいに魔法が使えるのに、なんで威力や魔法防御が伴わないのでしょうか……
…ああ、なるほどぉ……。」
……。
精霊女王であるからか、自称ヒロインのスキルを解析したのかしらね。
何かに納得したアル様は、自称ヒロインに興味を無くした様に私のそばにやってきたわ。
「…私は、勇者として沢山頑張ったから努力する人は好きなんですよ。
なので、エリーちゃんは好きです。」
「存じていますわ。」
「ですが、この子は【聖女】スキルで光属性魔法を上級まで詠唱破棄出来るみたいなんですよ。
努力もしないでいきなりこんなスキルで光属性魔法を使いこなせたら、確かに自分をヒロインだと勘違いしても仕方ないかな?とは思いますね……許しはしないですが。」
「……聖女?」
あの……アル様?
今サラッととんでもない事言いましたよ??
しかし、ことも無さげにアル様はその話を流す。
「とりあえず、同じ聖女ならウチの悪魔聖女さんを見習ってほしいです。」
「………。」
あぁ、あの、アークデーモンなのに『私の力は皆さんの笑顔です♡』と言ってはばからない絶世の美女で慈悲深い本物の聖女様……ね。
最上級悪魔族なのに天使みたいとか……
いえ、あの方は本当に【笑顔と幸福と希望】が力になるタイプの悪魔みたいだから………
ちなみに、あの聖女様は各国の孤児院に自身の分体を置いているので、この国の孤児院にも彼女の分体が常駐しているわ。
彼女曰く。
『悪魔らしく常に皆さんを監視して笑顔と幸福を効率よく回収しているのです♪
…だから…私はどこまで行っても自分本位な【悪魔】、なんですよ……?』
らしいわ。
………そんな貴女が悪魔なら人類なんて皆悪魔よ?
あ、彼女の種族は悪魔だったわ、あの聖女様……ええ、ややこしいわね!?
………それはともかく、段々と酷くなっていくわね、愚殿下も、自称ヒロインも。
私だけならまだいいわ。
防御は得意中の得意だし、レインがそばに居てくれるから、精神的苦痛もその場で癒される。
けど、ルゥちゃんやフィーちゃんはそうもいかない。
彼女達の婚約者もまた、あの自称ヒロインの信奉者と化しているのだから。
まったく、とんでもない【聖女様】だこと。
酷い有様になってしまった教室は、アル様が魔法を使うと時間を巻き戻す様にあっという間に元に戻ったわ。
そして、床に転がっている愚殿下と自称ヒロインはと言うと………
「「罰としてこのまま放置しよう(しましょう)。」」
とフェイ様とアル様が言うのでその通りにしたわ。
まったく、命拾いしたわね2人とも………
※ちなみに力関係は
魔王族>>>越えられない壁>>>各国の王族
となっている。
その為、平常の魔王様や魔王殿下に武器を向けるのはその場で切り捨てられても仕方が無い重罪であるが、今回は魔王殿下自らが"無かったこと"にしてくれたのでこの王子様(笑)とヒロイン(笑)は助かったのである。
話が段々と酷くなっていく………(色々な意味で。)
もっとスッキリまとめれたなら…………




