6.魔王フェンネル様と精霊女王アルカ様~次期魔王様の嫁は天然王妃~
さて、話は変わるけれど、
この学園には魔国、コキュートスからの留学生も多数在籍していたわ。
今回はその内の一人……【アルカ】様について話そうかしら?
アルカ様…彼女は先端に向かうほど新緑色へと変わっていく空色のロングヘアー、見る角度によって違う色に見える虹色の瞳、犬の獣人の様なモフモフの耳と尻尾。
なんていかにも人間ではありえない髪色や瞳の色と身体的特徴、それ以外は人間とあまり変わり無い姿をしていたわ。
その種族は【精霊女王】。
人間は魔法属性を1つ、多くて2つまで、
魔族でも3つから5つ程しか持たないけれど、
精霊女王である彼女は全ての属性が扱えた。
そんなアルカ様とは、アリア様経由で"お友達"になったのよね……。
これは、アーちゃんとのあの会話の日から数日後のお話。
「お疲れ様でした、アルカ様。」
「お疲れ様、エリカさん。
…今日もレインハルトさんとお仲が宜しいようで、微笑ましい限りですね♪」
犬耳をパタパタ、尻尾をフリフリしながら、アルカ様はそう言って屈託なく笑った…
かく言う彼女も、婚約者である魔王殿下…フェンネル魔王殿下とはかなり仲がいい……と言うか、学園が違うだけ(剣がメインな魔王殿下は騎士学校)で毎日放課後は一緒に過ごしているのを、私は知っているわ。
そんな彼女に対して私も笑顔で返す。
「アルカ様こそフェンネル魔王殿下との仲は大変宜しいようで。」
「ええ、そうですねぇ……
フェイはいつも私に優しいですから…少し、過保護な気もしますが。」
「……それには同意しますの。
レインと同じ位に過保護な気がしますわ。」
「…あぁ…そうですね……
いえ、嬉しくはあるのですが…
「「人前では少し自重して欲しいですわ(ですね)…!」」
そう……フェンネル魔王殿下は、
放課後になると直ぐにアルカ様の隣へ転移して来るので……
もう、クラスメイトである私達は見慣れてしまったわ………
そんな魔王殿下とレインは波長が合うのかよくお話しているし、
私は私でアルカ様と仲良くさせてもらっているわ………
……ええ、ええ!
それはもう!!
お互いに相思相愛な恋人が居る者同士だから……!!
しかも、似た様な悩みを持ち、お互いに婚約者に惚れた弱みがあると言う共通項があるのだから仲良くなるのは必然だったわ……!
身分どころか種族すら違うけれど………!
しかも、本人が気さくだからか、他に人が居ない場所ではアルカ様はかなり砕けた態度になるので他国の王族(の婚約者)なのに接しやすい……のよね………
と、アルカ様と話していたら件の魔王殿下が転移してきたわ。
「アルカ!遅れて済まないっ!」
「あらフェイ、こちらも先程終礼をしたところですよ。」
「そっか……良かった。
っと、ウルフェンさん、いきなり失礼したね。」
「いえいえ、お気になさらず。
貴方様の方が身分は上なのですから。」
「いやいや、そちらこそそんなに他人行儀な言葉遣いをしないでくれよ、僕と君達の間柄じゃないか!」
「……人前ですので。」
「ははは、人間というのも中々に大変だね………
「魔族程寛容ではありませんもの……
魔王殿下…フェンネル様はその綺麗な銀色の髪を後ろで纏めた髪を楽しげに揺らし、深紅の温和そうな瞳をスっと細めてわざとらしく肩を竦めた……
フェンネル様は気さくで楽しい(快楽主義者とも言う)魔王殿下様なのよね。
ちなみに、魔族はかなり開放的というか、王族相手にも礼儀は必要無いらしいわ。
だから魔王殿下のフェンネル様に対しては礼儀を欠いても気にされないのだけれど………
でも、恐れ多いわね……………
何せ、【魔王様】と言えばこの世界に満ちる"マナ"…魔力の源を調整する【管理者】であり、この世界における国同士の争いの一切を取り仕切る【調停者】の事なのだから。
魔王様が居らっしゃるから、私達人間の国同士で無用な争いが起こらないのよ。
………とは言え、馬鹿な事を考える者は何時だっているのだけれど。
フェンネル魔王殿下曰く、今はラミネス公国の一部勢力が不穏らしいわ。
あの宗教国家は、魔王様や魔族を不要として、排除しようと画策している、とか。
フェンリル帝国を悪の国だと決めつけている、とか。
今の【帝国】はともかく、
【魔王様】が悪逆非道だなんて、何処の物語なのやら……全く馬鹿らしいわ。
…………まぁ、その馬鹿は、身近に居るのだけれど。
「……魔王……!」
「はぁ……………
(また貴女ですの………?ラミエス嬢………)
「おや、そんなに僕を見つめて、何かなレディ。」
あぁ、魔王殿下やアルカ様達、コキュートスからの留学生達はあくまでコキュートスのルールで動くから"知り合いでもない異性"に話し掛けるのはご法度では無いわ。
……でも、そうなるともしかしてあの子って魔族…?
でも無さそうなのよね………魔族なら、魔族嫌いの理由が説明できないし。
と、私が考えている間にもフェンネル様はラミエス嬢のそばに寄っていく。
……うん、まぁ、フェンネル様なら良いかしら。
アルカ様も気にしている様子は無ーくはないわね、耳も尻尾も逆だってるわ。
…でも、魔国の事に私が口出しするのはお門違いね。
そう思い、余程酷くならない限りは静観する事にしたわ。
「っ!わ、わたしはあなた達が悪いヤツだってしってるもんっ!!
あ、悪は滅びるっ!勇者様があなたを倒しちゃうんだから!!」
「……勇者?」
「あら…懐かしい響きですね……
「…?」
子供じみた身振り手振り、そして指をさしながら(いくら魔王殿下が寛容とはいえ人に指を指すのはダメよ……)ラミエス嬢が言った【勇者】、その単語に反応した2人はなんだか、急にふんわりほっこりした雰囲気に……?
と、アルカ様がフェンネル様の隣へ歩いていき、彼の腕に自身の腕を絡ませた……?
「はぁい♡私がその勇者アルカですよー♡」
「……え?」
………あ。
これってアルカ様、ちょっとイラッとしてないかしら。
楽しそうな本人に自覚は無さそうだけどね、
ラミエス嬢へ意趣返しするかの如く、わざとらしく、いつも以上にフェンネル様にイチャつくアルカ様は、多分自分が怒ってる事にも気づいてないかもしれない。
「あのですね?
間違った情報を鵜呑みにしているのかは知りませんけど、
【勇者】というのは、魔王様の守護者にして、
"間違った道へ進んだ魔王様を倒す者"の事ですよー。」
「な……え………?」
「だから、ハッキリ言いますね?
勇 者 ア ル カ は 魔 王 フ ェ ン ネ ル の お 嫁 さ ん で っ す ♡」
あー、これ、勇者(自分)が魔王(フェンネル様)を倒すとか言われたからかなり怒ってるわね。
そのアルカ様はイイ笑顔で口撃を続ける。
「えへへー♡
私は大好きなフェイが道を間違えそうになったら全力で更生させますよ!
なぜなら大好きなフェイとはずっと一緒に居たいからでーすっ♡
分かりましたか人間さん♪」
………あの天然無自覚姫は、ああやって甘々な雰囲気をばらまいてる事を、本人が1番理解していないのがねぇ………
…フェンネル様曰く、『そこがアルカの魅力なんだよ。』だそうだけど………
…私もアレ、やってみようかしら?
レインがどんな反応をするのか見てみたい気もするわ。
……………ってダメよ!?私までアルカ様に引きずられてどうするのよ!!
なんて、アルカ様達の雰囲気に当てられて私の思考が迷走しだした頃、
いつの間にか隣にレインが居て、私の頭を撫でていたわ。
「…エリィ、これはまたですか?」
「…きゃうっ!?れ、レイン…?え、えぇ、そうね。」
「…………。」
「あの…レイン…?」
「………はっ!!
あぁ、すみません。
エリィの反応があまりにも可愛らしくて固まっていました。」
「か、かわっ!?レイン!貴方も雰囲気に呑まれてないかしら!?」
と言うより、雰囲気に呑まれたから私の所に来た様な気がしてきたわ…………
ま、まぁ、婚約者としての立場から言えば嬉しいけれどっ!
そのレインは気を取り直すように私の頭を撫でていた手を流れる様に腰へ添え、私を抱き寄せる。
「…全く、あの女生徒は頭が悪いのでしょうか?
授業でも習いますし常識ですよね、ねぇ、エリィ。」
「…そうですわね………いくらなんでも、魔王様を【悪】だなんて………
確かに、200年程前の魔王様が暴走して勇者様が退治した、らしい、と言う話はアルカ様から聞きましたけれど。」
ただ、魔王様自体は本当にこの世界に欠かせない重要な存在なのよ、それだけは確かね。
だから歴代の魔王様は勇者様を伴侶としてきた……
どの時代でも同じ、勇者様が夫或いは妻となり魔王様を支えてきた。
ちなみに、正確には魔王様を倒すのは勇者様を筆頭に、精霊神様や魔国四天王(今代は近衛騎士隊長、魔導師長(今代に関しては精霊神様がそうらしい)、メイド長、マナの巫女)の皆さん、そして各国の勇士達ね。
…と、言うのをこんこんと説明するアルカ様。
あのラミエス嬢に真面目に説明しても理解してくれるのかしら………
「ーという事なのです♪
私達魔族の事、理解出来ましたか?」
「……訳が分からないよっ‼」
((ですよねー。))
ええ、ええ、分かっていたわよ!
貴女には理解出来ないだろうって事はね‼
私もレインも呆れ果ててゲンナリした気分になったわよ……それはもう………
そんな相手にもニコニコ笑顔で丁寧に対応するアルカ様って……
凄いわよね…………
「ははっ!君には難しかったかな?
だけど僕達は敵じゃないって事は理解してくれないかな!」
「……魔王死すべし!」
「あららー…おイタはダメですよー♡」
「っ!?」
………本当になんなのあの子。
魔王様に魔法をぶつけるなんて品性を疑うわ……
……さりげなく光魔法【ライトボール】を無詠唱なのが納得行かないけれど。
それを笑顔で受け止めるアルカ様もアルカ様だけれど。
「全く、危ないですねー?えいっ♪」
パァァァン☆
あー……アルカ様、光の玉をサクラの花弁に変えたわねー……?
属性上書きに魔法上書きなんて……精霊女王の力を発揮しちゃってまぁ………
「…エリィ、私達は何を見せられているのでしょうか?」
「奇遇ですわねレイン。
私も同じ事を思っていましたわ。」
「おやおや、アルカがそうするなら…それっ!」
あら、今度はフェンネル様が花弁を星(☆)に変えて散らばしたわね…………
キラキラと光って綺麗だわ……
「レイン、これ、そろそろ止めるべきですの?」
「……ええ、止めてきます。」
なんだか、混沌としてきた所でレインが止めに入るのだった……
この人達、愉快犯なのか真面目なのか………
良い人達ではあるのだけれど………
……お気づきの方も居るでしょうが、はい。
スターシステムって奴です。
彼等が主人公の物語も一応あります()




