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白の王国と聖女

人の声がする。


遠くなったり近くなったり、とぎれとぎれだったりするが、どうやら囲まれているようだ。


頬がひどく冷たい。あの路地裏にしてはすべすべした石の質感と硬さが全身に広がっていく。


――私、助かったのかな。


「うっ……」


不意に強い光を顔に当てられた。


「目覚めたようだぞ!!」


「おお……ついに成功か」


警察の人?それとも救急隊員?


それにしてはなんだかおかしなことを言っている気がしたが、そんなことよりも早く助けてほしい。


「百合は……妹は??」


助けて、刺されたのと言おうとしたはずの口は妹の安否を気遣っていた。


「お目覚めですか、聖女様。妹君はこちらにはいません」


「せい?……何を言ってるの……妹は無事なの!?」


痛みを堪えてなんとか起き上がる。


周りにいた男の人の一人がよろける私に手を貸してくれた。


無意識に刺されたはずの背中に手を当てる。


「え……」


「ど、どうかいたしましたか?」


「な、なんで……!?」


体を地面に打ち付けられた痛みはたしかにあった、背中の刺された箇所にも鈍い鈍痛が走っているのに――傷がない。


あの時、刺されていなかった……?いや、あれだけ痛い思いをしたのだ、そんなことあるはずがない、背中に走った灼熱の痛みを思い出して思わず身震いをする。


「私、刺されましたよね?背中に傷、ありますよ、ね……」


「――ちょっと失礼」


男は私の背中をおそるおそるさすった。


「いいえ、ありませんよ。傷なんて」


「ど、どうして……?あれ……あなた警察の人じゃない?」


私はその時初めて男を見て驚いた。


コスプレのようなフード付きのローブにくすんだ金髪の髪に落ち窪んだ眼には疲れが滲んでいる、日本語を話しているはずなのにどうみても男の顔は外人そのものだったからだ。


周りを見渡すと同じような服装に同じような人種の顔立ちをした男たちが多数。


私がいたはずの路地裏ではなく、光がない地下の広いホール……あたりはひどく暗かったが、松明がところどころに点在しておりゆらゆらと私の不安を煽っている。




「え!?なになに!?ここどこ!?」




こんな場所はしらない――私、まさか誘拐された?


妹は? あの男は? そもそもこの外人さんたちは誰?


私の顔色を見て支えてくれていた男の人が静かな声で喋りだす。




「ここはスノウリア王国の地下聖堂。あなた様のいる世界とは別の世界でございます。聖女様、ずっと待っておりました。この国を救ってください!!」




「別の世界……い、異世界??」


こくこくと頷く男たち。


「わ、私が聖女??」


さらにうなずく男たち。


「な、」


「な?」


「何よそれ~~~~~!!!!????」




地下聖堂に私の声だけが無情にも響き渡っていた。


死んだと思ったら異世界? それなんて漫画?



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