第19話 帰還
まだまだ、物語は続くのですが………。
思うところあって、勉強し直して再び書くことにしました。
これは、自分の力量の無さの証として、プロットタイプとして、掲載させていただきます。
コドウは数名の人外の者で偵察隊を編成し、聖アモン帝国軍が駐屯する元の羅帝国の咸陽の城を目指して隠密性の高い進軍をしていた。
城を出て直ぐにアモンの遺体を回収し、城からの別動隊へ引き取らせた。浩宇へ処理を任せるためだ。おそらく目が覚めた国王陛下に指示を仰ぐことになるのであろう。
第1の任務であったアモンの遺体の回収も済みコドウは部隊を野営させ、第2の任務である帝国軍の動向を探る準備を整させ、充分な休憩を取るように命じた。
「出発は明朝!それまではゆっくりと休憩を取ってくれ!」
森の夜が深くなり、コドウが焚き火の前に座り食事後のお茶を飲んでいると、オウランが隣に腰を降ろした。
「自称相棒がいないと少し寂しいな。」
「おおっ、これはオウラン殿。
なぁに、そうでもないさ。
強くなって帰って来ると言ってたしな。
確かに日ノ国の方々は皆、我等賀王国の人外の者より数段階高みにいる。そこで修行させてもらえるんだ、奴も命懸けだよ。」
「そうだな。」
ふたりはそれから、その時のことを思い出しながら語り合った。
ロウ達遊撃隊総員が、正気を取り戻し話せるようになり浩宇から今までのことを説明された賀王国国王に呼ばれて謁見室に居た。
「感謝しても感謝しても感謝しきれぬ………。」
この言葉で始まった国王の言葉は、長く、ツキヨは座して頭を垂れた姿勢であることをいいことに居眠りしてしまうほどであった。
ロウ達7名の者に賀王国の貴族として迎える準備があることや金塊による恩賞を授ける話も出たが、ロウは丁重に辞退した。
「我等は日ノ国天子様の勅命により参じたまで、賀王国の平和はそのまま日ノ国の平和に繋がります。これを機に今まで以上に友好を深められれば天子オウジン様もお喜びになります。
官位、恩賞は賀王国の平和に尽くした賀王国の者や国の復興のためにお使いされるようお願い申し上げます。」
「うむ、そうか、残念じゃが致し方あるまい。
天子オウジン殿とこれまで以上に連絡を密にし、友好を深めてまいろう。
其方達のことも直接、我賀王国国王から報告しておこう。」
「ロウ殿の言葉、真の武人らしい言葉であったな。」
「そうだな、見習いたいものだ。
その後だったな、ハッカクが騒いだのは………。」
「ああ………。」
コドウはオウランにお茶のおかわりを勧めながら頷いた。
新たに設けられた参謀室に浩宇、各参謀、コドウ、オウランが偵察部隊の行動詳細を決めるために詰めていた。
そこへロウ達7名が帰還の挨拶にやって来た。
「浩宇様、参謀の方々、コドウ殿、オウラン殿、世話になった。
おかげで任務を無事に達成することができた。
本日夕刻、我等は日ノ国へ帰国する。」
浩宇は無言でロウ達に近づき、満面の笑みで礼を語った。
「ありがとう、日ノ国の戦士達よ。
我等も国王同様、感謝しても感謝しきれぬ………。
本当にありがとう。」
(この人もこんな笑顔を見せるんだ。ずっとしかめっ面だったものなぁ。)
浩宇の笑顔を見てタケルは今までの彼の苦難の道のりを思った。
参謀達、コドウ、オウランも近づいてきて遊撃隊の面々と談笑が始まった。
しばらくして笑い声も聞こえる参謀室の扉が大きな音を立てて開きハッカクが駆け込んで来た。
ハッカクはそのままロウの前に進み正対すると正座をし座礼をしながら叫んだ。
「ロウ様っ!
俺を日ノ国で修行させてください!
もっともっと強くなって賀王国の平和に貢献したい!
もっともっと強くなってコドウ様の本当の相棒になりたい!」
それだけ言うとハッカクは座礼をしたままピクリとも動かなくなった。ハッカクの言葉は単純ではあったがその分、熱意と決意は十二分に皆に伝わった。
するとコドウもハッカクの横に正座して座礼をした。
「ロウ殿、私からもお願いする。」
ロウは一瞬、困った表情を浮かべたが、横目で座礼するふたりを微笑んで見つめているスサ老師を見て口を開いた。
「おふたりとも立ってくだされ。
ハッカク殿、一緒に日ノ国に行こうぞ。
帰還したら未熟なタケルをスサ老師の元で鍛え直すところであった。
良き修行仲間が増え、タケルも喜ぶであろう。」
ロウとスサ老師を除き、座礼の姿勢から立ち上がったふたりを含め参謀室にいた総員が開いた口がふさがらないという表情を浮かべ、しばらく沈黙が続いた。
タケルの何処をきたえるのだ?という思いが参謀室に充満していた。
「ほっほっほっほー。」というスサ老師の笑い声と「ありがとうございます!」というハッカクの叫びだけが参謀室に響いていた。
「タケル殿の何処を鍛えるのであろうか?」
「そうだな、上には上があるということではないかなぁ?
コドウ殿、お茶のおかわりを!」
「すまない、お願いする。」
コドウとオウランは焚き火の火を見つめながら、深夜まで語りあった。
「任務完遂、お疲れ様でした。
天子様は明日、連邦軍指揮所より戻られます。オロチ殿も御一緒にこちらへ来られるとのこと。
謁見は明後日の午前中となります。それまでは御所内の宿泊施設でごゆるりとしてください。」
遊撃隊一同とハッカクが、転移妖術で帰還すると待ち構えていたかのように文官が出迎えてくれ、宿泊施設へ案内してくれた。
宿泊施設の広間で夕食を食べ終わり、ひと息ついているとスサ老師が立ち上がり皆を見回しながら話し始めた。
「タケルとハッカクよ、天子様に謁見するまで修行じゃ、時間はたっぷりとあるからのう。ほっほっほっー。
他の者はゆっくりと休みなされ。」
ロウは知っていたのであろう、頷きながらニコニコと微笑んでいたが、他の者は「もう修行?」という様な表情で少し驚いていた。
タケルだけはスサノヲが時間をも操れることを思い出していた。
(確かに時間はたっぷりあるなぁ。
俺はまだまだ未熟だ。こんなんじゃ、大切な者達を守ることはできない。)
タケルはアモンの一撃で怪我を負ったことを思い出しながら考えていた。
そんなタケルと何を言われたのか理解に苦しむような表情をしたハッカクの襟首を掴みスサ老師は何処かへ転移し広間から消えた。
「さぁ、我等はお風呂でもいただきましょう。」
ロウは皆を促し広間から出て行った。
翌朝、ロウはシュレイを伴い広間へ朝食を食べにやって来た。
「我等が一番かな?」
「ロウ様、誰かもう居るようですよ。」
広間の一角に姿勢を正し一点を見つめるタケルと疲労困憊な表情をしたハッカク、その横にのんびりとお茶を啜るスサ老師が居た。
「タケルっー、修行は終わったのか?
おっ、少し顔付きが大人びたか?
ハッカク殿はボロボロだなぁ。」
「姉上、姉御、おはようございます。
はい、スサノヲ様に1年間たっぷりと稽古をつけていただきました。
アマテラス様、ツクヨミ様にもお会いし御言葉も賜りました。」
「うむ、御苦労であった。」
ロウはニコニコとしながら、お茶を啜るスサ老師に一礼し、タケルとハッカクの頭を撫でた。
「タケル、ハッカク殿、朝食を一緒に食べようぞ。食べたら風呂をいただきなさい。
午後からは天子様にお会い出来るぞ。」
気を効かせたシュレイの計らいで給仕係の者達が朝食を運んで来ていた。