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(くっそ、あいつら次会ったら絶対ぶっ殺してやる)
オオカミの血が付いたことに俺はまだイラついていた。
そして道を少し歩いているとまた敵らしきものに出会った。
(またか......いくらなんでも多すぎだろ)
敵は見る限り五匹で、道を塞ぐように並んでいた。
外見は言うならば緑色の怪物で、漫画なんかでしか見たことないがゴブリンと言えるものだと思う。
ゴブリン達は全員こん棒のようなものを持っており、俺の剣よりも少しでかいぐらいだろう。
体格は俺の数倍はでかく、優に2メートルはあるだろう。
(さっきの憂さ晴らしをさせてもらおうか)
素早く背中から剣を取り出し、前に構えた。構えた瞬間ゴブリンが一匹前に走って出てきた。
そしてこん棒を俺のほうに振り下ろしてきた。
(冷静にっ!)
前回のオオカミ達の戦闘を反省し冷静になった。しっかりとゴブリンの行動を見て冷静に対処した。
(これを、避ける!)
まず、ゴブリンが振り下ろしてくる剣を避けた。
そして力を込め、一気にゴブリン首元目掛けて剣を突き刺した。
「ゴフッ」
剣はゴブリンの喉を貫き、空気が抜けるような音がして首から血が流れ出した。
血がかからないように素早く剣を引き抜き、後ろに下がった。
ゴブリンは剣を抜くとフラフラっと歩いたかと思うと、すぐに倒れた。
(あぶねぇ~、一発で殺しきれてよかった)
しかし敵はまだ4匹もいる。まだ油断はできなかった。
そう考えていると4匹のうちの2匹が同時に攻撃を仕掛けてきた。
(来る!)
1匹がさっきと同じく、俺に向かって振り下ろしてきた。
同じように避けてまた反撃しようとしたが、もう一匹を全く見ておらず攻撃を食らってしまった。
「グッ!」
痛みは全くないものの体は小さいため吹き飛んでしまった。
(中々いいコンビネーションをしてやがる)
さすがに相手もバカではないようでうまく二匹で連携して攻撃していた。
逃げることも考えたが逃げ切れるとは限らないし、仲間を殺したのでただで逃がしてはくれないだろう。
ならば一匹一匹潰すしかないだろう。
「ゴアアアアアァァァァァアァ!!!」
ゴブリンの一匹が痺れを切らしたのか雄たけびを上げ突っ込んできた。
(ここで仕留める!)
すぐさま立ち上がり俺も攻撃を仕掛けた。
ゴブリンよりも早く、なぎ払うように剣を振った。
しかし、
「チッ!」
俺の渾身の攻撃は簡単に避けられてしまい思わず舌打ちをしてしまった。
(さすがに相手も冷静だな、これは簡単には倒せなさそうだ)
体勢を立て直すため一度引こうとした。
が、剣を引こうとするもなぜか全く動かなかった。
なぜだ、と思い見てみると木に剣がしっかり刺さっているようだった。
(またこのパターンか!)
剣を抜こうと試みるもビクともせず刺さったままだった。
こんな悠長な事をしていてゴブリン達が見逃すはずもなく、二匹で畳み掛けてきた。
(ゲッ、まずい!)
焦ってすぐさま俺は剣を抜こうと、大きく力をこめた。
すると、剣はすっと気から抜けそれと同時に、一匹のゴブリンの腹を切り裂いた。
「ゴブッ!」
ゴブリンは腹を切られたことで前のめりになって倒れてきた。
そして俺はその倒れてきたゴブリンを横に避け、仲間が倒れたことで今だ動揺しているもう一匹の首元に狙いを付ける。
「フンッ!!」
止まっている敵を切るなんて得に難しいことはなく、しっかりと首を切り落とした。
もともと首があった場所からは血があふれ出し、後ろに倒れた。ゴブリンの顔は驚愕したような表情が張り付いていた。
そして足元に居る腹を切ったゴブリンはまだ息があるようなので、切っ先を首元に突き刺しておいた。おそらくこれで死んでくれるだろう。
「ゴルルゥ」
少し離れた場所で見ていたゴブリン二人の、恐らく体格が一番でかいであろう奴が、牙をむき出しにしこちらを鬼の形相のような顔で見ていた。
俺のほうに向かってくると思い剣を構えた。しかしゴブリン達は体の向きをスッと変えて、森の中にゆっくりと消えていった。
(ふぅ、正直危なかったな)
俺はゴブリン達が消えてほっと一息をついた。今もし最後のゴブリン達が引いてくれなければ危なかったかもしれない。ゴブリンを三匹殺されたのは事実だが、それもすべて運によって勝てたも同然だった。確かに力はとてもあるかもしれないが、俺には技術などが全くない。それによって負けることは大いにあっただろう。なのでゴブリン達が逃げてくれて俺はとても安心していた。
しかし先ほどの戦闘で力の使い方が少しわかったような気がする。今までは体が重いような、鈍いような感覚が取り憑いていた。今ではとても良く馴染み、たった今目覚めたようなすっきりとしたものがあった。
三つの残骸が血まみれで倒れている惨劇から俺はすぐに離れようと道なりに進んでいった。
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~5日後
ゴブリンに出会ってから五日がたった。それまでに色々なモンスターに出会った。
前にも会った同じ種類であろうオオカミ、めっちゃでかいアリ、体中にへばり付いてきたスライムなどなど、五日間で出会いすぎだと思う数に出会ってきた。そしてそれまでの五日間、と言うより俺が最初に目が覚めてからこれまで飲まず食わずでここまで来てしまった。そのため俺は精神的にヘロヘロだった。しかしこれまで何も口にしてこなかったにもかかわらず、恐らくこの体のおかげだろうが肉体的には何も問題はないように思えた。だからと言ってこれで言い訳ではない。眠ろうとしてもモンスターに襲われ追い返し、また襲われ追い返すなど、今まで一睡もできなかった。なので精神状態はすでに極限であった。
「ハァ......ハァ......このまま行くと俺、ハゲるぞ」
冗談を言うくらいの余裕はあるが、少し足元がふらついて来た。
しかしそこに一筋の光が見えた。
「あ、あれはもしや町か?!」
一番良く見えるとても高いだろう塔が見え、その周りを囲むようになっている外壁、それが森を抜けた山と山の間のとても広い平原に俺の目には見えた。