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プリンセス王子と虹色騎士団  作者: 美作美琴
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第82話 消せない過去


 「ほら、ここに入ってろ!!」


 アルタイル、ティーナ、イワンの三人は、武器や装備品を奪われた上で固い木材で出来た檻に入れられた。

 

「最初に言っておくが、この檻には魔法を無力化する加工がしてある……逃げようなどとは思わないことだな!!」


 そう言い残しフランクは踵を返した……他の耳長族の男たちも後に続く。


「フランク!! お願いだから私の話を聞いて!! ここに来たのは魔王の支配からこの世界を救うために必要な用があったからなの!!」


 去り際の背中に檻の中から悲痛なティーナの叫び声が向けられる。

 その言葉に反応しフランクは足を止め、無言で首だけを横に向けティーナを睨みつける。


「世界を救うだと?」


「そうよ!! 女勇者の末裔、シャルロット様がこの世界の状況を変える為に戦ってくれているわ!! 私は彼女の役に立ちたいのよ!!」


 ティーナの言葉を聞き、フランクの身体が小刻みに痙攣する……それはやがて大きくなり、握られた拳までもが大きく震えた。


「どの口が言う!? 俺の、耳長族の平穏を壊した元凶であるお前が!? ふざけるな!!」


 勢いよく檻に飛びつき激昂するフランク。


「あなたには酷いことをしたわ……今更謝っても許してもらえないのも分かっている……でも私は自分の心に嘘を吐けなかった」


「あああーーー!! お前はわざわざ俺を怒らせに返って来たのか!?

 ご丁寧に駆け落ち相手まで連れてきやがって!! お前がティーナを(そそのか)したんだろう!?」


 フランクの怒りは今度はイワンに向けられた。


「唆すなどとは心外な!! 俺たちはお互いに愛し合っているんだ!!」


「よくもまあ俺の前でぬけぬけと!! 絶対に許さん!!」


 今の頭に血が上ったフランクにはティーナとイワンの言葉は届かない……何を言っても恨みから生み出される罵詈雑言が返ってくるだけだ。

 

(どうする? このままでは超回復薬の材料を手に入れるどころか二人の命が危ない…… こんな時、ベガ(アイツ)ならどうする?)

 

 交渉上手の友、ベガのやり方を頭の中で思い浮かべる……彼に及ばないまでもここは自分が何とかしなければ。

 意を決してアルタイルが三人の間に割って入った。


「まあまあ、そう感情的にならず少し落ち着いてもらえませんか?」


「何だ人間!? 無関係な奴は口を挟むな!!」


「私は既にあなた方の痴話げんかに巻き込まれているので無関係では無いですよ、実際ここにこうして監禁されているわけですし」


「ぐっ……」


 感情に流され三人を檻に入れてしまったが、確かに初めて会うアルタイルは自分たちのもめ事には関係がなかったことに気づく。

 

「確かにあんたは関係なかったな……おい、この人だけは檻から出してやれ」


 いくら人間が憎いとはいえ、そこの分別は付いている。

 アルタイルが一人だけ檻から出された。


「ありがとうございます、しかし先ほど言ったように私も既に巻き込まれているのですよ……宜しければ事の顛末を聞かせてもらえないでしょうか?」


「何であんたに話さなければならない!?」


「まあまあ、もしあなたがこれからティーナさんとイワンさんを処刑するつもりなら思いとどまった方がいい……第三者である私が間に入ればこんな不毛なやり取りより数段マシな落としどころを見つけられるかもしれないですよ?」


「………」


 複雑な表情を浮かべるフランク……もう一押しといった所か。


 「そうだ、それでは情報交換と行きましょう!! 我々がここに来た目的はあなた方にとっても有益なものだと思うんですけど興味ありませんか?」


 元々超回復薬の材料を取りに来た事は耳長族の村人に告げるつもりだったので実は情報としての価値は殆どないのだが、それを交渉材料の一つにする時点で、アルタイルは中々の策士であった。

 あとはそれにフランクが食いついて来るかどうかだが……。


「いいだろう、聞かせてやる……但し、そちらの情報が先だ」


「はいもちろん、こんな所で立ち話も何ですし、どこか場所を用意してもらえませんか? あちらの二人もご一緒に」


 檻の中のティーナとイワンに目を向ける。


「分かった、 二人を出してやれ……こっちだ、付いてこい」


 アルタイルは胸をなでおろし、ホッとため息を吐く。

 そして檻から出された二人にこっそりウインクしブイサインを向けてきた。

 この辺は完全にベガが乗り移ったかのような仕草だ。

 軽くお辞儀をして感謝を表すティーナ。

 大勢の耳長族の衆人環視の中、三人はフランクの後を付いていくのだった。




「単刀直入に申します、私達は超回復薬を生成するための材料を探しに来ました……

 こちらの集落にオーディン草は生息していませんか?」


「オーディン草? あるにはあるが……そんな薬を作ってどうしようというんだ?」


「もちろん魔王軍との戦いに傷ついた者たちの治療に使います……私が目指す超回復薬とは立ちどころにどんな重症も回復させる効果を持ったものです

 完成した暁にはあなた方にも提供させていただきたい」


「興味がないな、我々は村全体を空間歪曲の防護結界で守っている……ここが魔王軍に発見される事は無い、だから(いくさ)にもならないし負傷者も出ない」


「あなた方は自分たち以外の外の世界がどうなってもいいというのですか?」


「フン、我々は誰の助けも借りないし誰にも我々の力を貸さない……もし魔王とやらが世界を滅ぼすほどの力の持ち主だとして、オールダーグラフトと外、魔王に滅ぼされるのが早いか遅いかの違いでしかない」


 フランクはどこまでも(かたく)なだ……ここまで来るといじけを通り越してムキになっていると言わざるを得ない。

 しかし彼の口ぶりからアルタイルは察した……彼らオールダーグラフトの住人は長きに亘って外界との接触を断っていたことで世界全体が置かれている状況を正確に理解していないのだと。

 尚且つ祖先の移住の際の迫害追放の所為もあるのだろう、主張が利己主義に偏っている。

 この状況でこれ以上議論してもらちが明かない


「分かりました、私からは以上です……では次はそちらの要件を伺いましょう

 フランクさん、あなたは何故そこまでティーナさんとイワンさんを憎むのですか?」


「いいだろう、知りたいなら教えてやる……その女は俺という許婚が居ながらそこの人間の男と恋に落ち、あまつさえ駆け落ちして村から姿を消したのだ!!」


 アルタイルはすぐに閃いた、これは嘆きの断崖に纏わる悲恋の言い伝えに関することだと……ただその言い伝えでは種族を超えた許されざる恋愛の末、その男女が崖から身投げしたというものだったが、まさか女性の方に許婚が居たとは初耳だ。


「俺はグリッターツリーの次期族長の座が決まっていたんだ!! それが許婚に逃げられた情けない男の烙印を押され、村を追放されたのだ!!

 そして村を出された失意の俺は運よくこのオールダーグラフトを見つける事が出来、今はここの族長になるまでになった!!」


「………」


 アルタイルにはフランクにかける言葉が見つからない……確かにこれは当事者以外が口を挟んでいい事案ではなかった。

 そんな中、ティーナがおもむろに口を開いた。


「そう、私の身勝手の所為であなたがそんな事になっていたなんて知らなかったわ、なんてお詫びをすればいいか……いえ詫びても詫びきれないわね」


「その通りだ!! お前らが心中したと聞いた時はある程度気持ちに整理がついていたが、こうして生きていたというのなら話は別だ!! 俺の気が済むまで報いを受けてもらう!!」


「それはあまりに横暴だ、ここは少し頭を冷やしてください!!」


 あまりにも危うい雰囲気が場を支配しかけたのでアルタイルは慌てて仲裁に入った。

 状況はますます悪化するばかり……もうどうすることも出来ないのか?

 そこへ息を切らし慌てた様子の耳長族の青年が一人、フランクの前に現れた。


「どうした? 何かあったのか?」


「フランクさん、大変だ!! 村に空飛ぶ鬼のような怪物が押し寄せてきた!!」


「何だって!?」


 こんな所で話し合いをしている場合ではない……その場にいた者は次々に散らばり戦闘の準備を開始した。


「貴様らがここへ来たせいで村が発見されたんだ!! この疫病神どもめ!!」


 そう言い捨てフランクは走り去っていった。


「そんな……」


 その言葉に傷つき放心状態のティーナ。


「ティーナさん!!」


 アルタイルが声を掛けても返事が出来ない。


「私は……」


「ティーナ!!」


 イワンでも同様だ。


「あの時死ねばよかった……」


「馬鹿なことを言うもんじゃない!! お前が諦めなかったから俺たちは再会できたんだ!! 死ねばよかったなんて悲しいことを言うなよ!!」


「イワン……」


 イワンはティーナと向かい合い、両肩に手を置きじっと瞳を見つめる。


「もう自分を追い詰めるのはやめろ!! この事に関しては俺も同罪だ!! 一人で抱え込むなよ!! 彼がお前の命をもって罪を償えというなら俺も一緒に命を差し出そう!! だから……だから……!!」


 イワンも最後は感極まり言葉にならない。


「ごめんなさいイワン……そうね、自分を貫いて招いた事態なんですもの責任は取りましょう……そして今やるべきことは敵を倒すことね」


 涙を流しながらイワンの胸に寄り掛かるティーナ……そんな彼女をイワンは優しく抱きしめる。


「二人とも行きましょう、敵はすぐそこまで来ていますよ!!」


「おう!!」


「はい!!」


 アルタイルに促され、ティーナとイワンは轟音のなる戦場へと向かうのだった。

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