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プリンセス王子と虹色騎士団  作者: 美作美琴
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第19話 遠き呼び声

「そんな事があったなんて…」


アルタイルとツィッギーの報告を聞きシャルロットは驚きを隠せない。

そしてそれっぽい事を言ってみんなを連れ出し、物見遊山的にこの森へ来てしまった…調子に乗っていた自分を内心恥じていた。


「そう言う事で私はエターニアに『無色の疫病神カラミティ・オブ・ノーカラー』討伐を要請したいと思っている…ただこの子供の身体では森から出る事が叶わなかったのでイオに手紙を出して人を呼んだと言う訳さ…まさか君らが来るとは思ってなかったけどね」


手を広げ首をすくめるアルタイル。

だがこの村へ来るまでだって自分達だけでも命からがらやって来たシャルロット達に魔法を使えない子供状態のアルタイルの護衛が出来るのだろうか。


「私も途中まで送るから心配しないで…晩御飯も用意したから今晩はここに泊って明日出発するといいわ…」


「何から何まで…ツィッギーさんにはご迷惑を掛けます…本当にありがとうございます」


シャルロットは立ち上がりミニスカートの裾を軽くつまみお辞儀をする。

ハインツ達も慌てて立ち上がり礼をする。


「いいのよ…こちらも無理ををお願いするのだからお互い様よ…

ところであなたの鎧の胸に付いている紋章なんだけど…」


「これは我がエターニア王国の王家の紋章だよ…これがどうかした?」


何故そんな事を聞くのだろうとシャルロットは小首を傾げる。


「いえ…実はあなたに会った時から気になっていたのだけど…

その紋章…この森の中で見た事があるの…」


「えっ!?それは興味深いな…」


シャルロットより先に真っ先にアルタイルが食いついた。

伊達に研究者をしていないと言う事だろう。


「この村から西に少し言った所にその紋章に似たものが刻まれた岩があるの…明日お国に帰る前に寄ってみましょうか?」


「それは是非に!!」


アルタイルは目を輝かせた。




となりの部屋から料理を乗せたお盆を持った女性たちが現れた。

部屋中に食欲を刺激する香ばしい匂いが充満する。

切り株のテーブルに並べられた料理はどれもこれもエターニアではお目に掛かった事が無い珍しい見た目と色どりをしていた。

料理の中にはここに来る時に倒した角兎(つのうさぎ)の丸焼きらしきものもあった。

他には未知の野菜の入ったスープ、不思議な形のフルーツも並んでいる。

そして全員に木製の枠がはめられたガラスのコップに何やら小さい泡が充満した透き通った緑色の飲み物が運ばれてくる。

シャルロット達は物珍しそうにコップを見つめる。


「さあ皆さん、いっぱい食べて明日の英気を養いましょう!!私達の出会いを祝して乾杯!!」


ツィッギーの音頭でコップの飲み物を飲み干す一同。


「ぷはっ…!!何これ!?喉がシュワシュワする!!」


「喉がスキッとしますね!!」


目をまん丸にして驚くシャルロットとグロリア。


「それはサイーダという飲み物よ、サイーダの木の樹液を水で割ったものなの…気に入ってくれた?」


「はい!!こんな飲み物初めて飲んだよ!!」


「ではおかわりをどうぞ」


「この角兎の丸焼きもいける…どこか鶏肉に似た味わいだ」


豪快に丸焼きに噛り付くハインツ。


「香草を詰めて焼いているから風味がいいでしょう?あなた達が狩ったものなんだから遠慮せずに沢山召し上がれ」


「これは何です?この形はその…あの…」


あるフルーツを前にしてイオが口ごもる…それはまん丸で肌色をしており一カ所だけ色の濃い突起があった。


「ああ…それはパイチの実ね…あなたが言いたい事は分かるわよ?…こう二つ並べるとほら!!」


「いや~~~ん!!恥ずかしいです!!」


イオが赤面して慌てて目を逸らす。

突起のある方をこちらに向けて二つ並べられたそれはまさしく女性の乳房に非常によく似ていた。


「見た目はこんなだけど甘くておいしいのよ?このパイチ…お一つどお?」


いたずらな笑みを浮かべて勧めてくるツィッギー。


「俺は要らない…」


ハインツは拒否した…彼も若干頬が赤くなっており目を背けた。


「僕は挑戦してみようかな…」


「それじゃあ私も…」


シャルロットとグロリアはパイチの実に手を伸ばし恐る恐る口に運び一口頬張る。

それを見てニッコリと微笑むツィッギー。


「何これ!!おいしい!!」


「本当…甘い…まるでミルクみたいな風味があるわ」


食べた二人も見る見る笑顔になっていく。


「やっぱり僕も食べる!!」


イオもパイチの実に噛り付いた。


「はぁぁん…おいしい…」


目を潤ませ悦に入った表情のイオ…見ていたハインツとアルタイルは若干引いてしまった。

しかし暫くしてシャルロットとイオに異変が起った。


「あれ…何か胸がむず痒い様な…」


「おや奇遇ですね…ボクもそうなんですよ…」


そうこう言っている内にそのむず痒さが少しずつ増していく。

耐えられなくなり身もだえをはじめた。


「あっ…やっ…胸が…胸が…!!」


「ふぅううん…どうなってるのこれ!?」


「ちょっとどうしたんですか…二人共!?」


するとどうだろう…二人の胸が徐々に膨らんでいくではないか。


「あああぁん!!」


最後に爆発的に膨らんだ胸…それはまさしく女性の乳房そのものであった。


「ウフフ…パイチの実は食べた人の胸を大きくしてしまう効果があるのよ」


実はツィッギー…異国の訪問者をもてなす時はいつもこのパイチの実でいたずらをしているのだ。


「何ですって!?じゃあ何で私は大きくならないんですか?!」


「何でって言われてもね~」


何故か物凄い形相で食って掛かるグロリア…何故そこまでムキになるのか豊満な胸の持ち主であるツィッギーには理解できなかった。


「ボクの胸はずっとこのままなんですか~~~!?」


半べそをかくイオ…男性が恋愛対象で尚且つ自分が男性であることに喜びを感じている彼には堪ったものではなかった。


「大丈夫よ…個人差はあるけど大抵一日くらいで効力が切れて元に戻るから…」


「ああっ…それを聞いて安心しました~~~」


ほっと胸を撫で下ろ…せなかったイオ。

大きな胸の弾力で当てた手が押し戻される。

一方シャルロットはと言うと…。


「ねえねえ見て見てハインツ!!僕の胸、大きくなったよ!!触ってみる!?」


「やめろって…!!」


自分の胸が大きくなったことを特に気に病むでもなくハインツに胸を近づけ左右に振って見せるシャルロット。

拒否されても尚もにじり寄る。


「ほら遠慮しないで…ほらほら!!」


「やめろ~~~!!」


必死に逃げ惑うハインツと追うシャルロット…その光景を羨ましそうに見つめるグロリア。

折角の宴の席がとんだ大騒ぎになってしまった。


(でも変ね…パイチの実は男性の胸だけを大きくするはずなのに…何でシャルちゃんまで大きくなったのかしら…こんな事初めてだわ…まあ体質的な事もあるしそんなに気にした物でもないかな…)


ツィッギーは心の中でそう思った…しかしこれを今、口に出さなかった事は正解である…この場には誰一人シャルロットが男性だと知っている人間がいないのだ…そう、シャルロット本人でさえも…。




夜が更け、皆が眠気を覚えた頃…。


「さあ~お師様、今夜は一緒に寝ましょうね~~」


「覆い被さるな…胸が重い…」


イオがアルタイルに後ろから覆い被さる事でアルタイルの頭を挟むように乳房が押し付けられ肩に載る。

身体が子供になっているせいで身長差が逆転してしまっているのだ。


「不本意ですけど胸が大きくなっているのでいつもと違ったプレイが出来ますね…デュフフ…」


「…プレイ言うな…よだれを垂らすな」


半ばげんなりと言ったアルタイル…グリッターツリーに来てから色々な目に遭った事もあり彼は内心かなり凹んでいたのだ。


「もう…元気ないですよお師様…ずっとご無沙汰でしたし今宵はいっぱい慰めて差し上げますね」


イオは後ろからアルタイルを軽々と持ち上げそしてそのまま寝室まで連れ込みベッドに押し倒す。


「ちょっと待て!!イオっ!!あっ…アッーーーー!!!」


アルタイルの叫びがこだましやがて静かになっていった。

シャルロットたちには一人一人部屋が用意されており各々ベッドに入り眠りに就いていた。


(…ルロット…シャルロット…)


「う~~~~ん…誰…?僕を呼ぶのは…」


眠い目をこすりながら上体を起こす…窓の外に目をやるが空には星が出ておりまだ真夜中であった…部屋を見回しても誰も居ない。


「気のせいかな…?」


再び布団に潜り込む。


(…シャルロット…シャルロット…)


「いや…気のせいなんかじゃない…」


その声は先程よりはっきりと聞こえる…聞いた事の無い女性の声だ。

シャルロットは飛び起き身支度を整える。

しかし大きくなった胸が邪魔でプレートアーマーが着けられない…仕方なく軽装のままツィッギーの屋敷を飛び出した。


(…シャルロット…シャルロット…)


声がしている方向へと小走りするシャルロット…いや正確には方向など分かっていないのだが直感でこちらと分かるのだ…それは何故なのか彼女自身にも分からない。


茂みを掻き分け辿り着いた草原には岩が一つ鎮座していた。


「これは…あっ!!」


岩のやや上あたりにエターニア王家の紋章が刻まれていたのだ。


「そうか…この岩がツィッギーさんが言っていた…」


シャルロットは無意識の内にその紋章に手を触れていた。

すると突然紋章が眩い光を放ったではないか。


「きゃっ…!!一体何!?」


ゴリゴリと音を立てながら岩が左右に割れ移動していく…。

すると岩が退いた場所に地下に通ずる下り階段が現れたのだ。


(…シャルロット…シャルロット…)


「…間違いない…声はこの先に来る様に誘っている…」


不安が無い訳と言えば嘘になる…実際彼女の足は若干震えていたが恐る恐る地下への一歩を踏み出した。

するとどういう仕掛けなのか地下道の壁の蝋燭に明かりが灯り次々と地下に向かって明かりがリレーしていく。


「…行くよ…!!」


自分に言い聞かせながらシャルロットは地下へと消えていった。

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