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日巫女ー混沌救世主伝ー  作者: 芳野 亜己羅
日巫女~初章~
1/3

プロローグ

 248年9月5日邪馬台国

 日本

 邪馬台国日巫女の次なる後継者の会議を日巫女の座所で行われていた。

「日巫女様の後継者は、やはり戸与で決まりとうわけですな?」

 日巫女の側近連中は、上座に日巫女を拝し両端に並び下座に戸与を座らせていた。

「うむ……」

「待って下さい!私の技量では皆に納得がいかず、反乱も起こるかもしれません」

「戸与……お前は私より高い霊力があるのだ、だからここにいる長を始め皆の意見が相違ないことを確認のうえお前に決めたのだ」

「そうだぞ戸与……立派に日巫女様の後継者として成長してくれ」

「父上……」

 村の長戸与の父親レオが同席していた。

「では解散じゃ」

 日巫女を残し側近達は帰って行った。


 日巫女と戸与は座所の上座と下座で向かい合う形で目を合わせていた。

「戸与……我が国に敵対する神皇は知っておるな?」

「はい…存じています」

「今日の朝神託があって、明日この国は滅ぶと出てな……」

「滅ぶ?」

「神皇は我が国を侵略し村に火を点け皆殺しにする風景が浮かんでな、すでに村人は避難してあるが」

「……」

 神皇とは邪馬台国と敵対国の陽御彦を中心とした先進国家で、邪馬台国は和を尊ぶ霊力を駆使する集団で神皇側の軍勢は2万人で日巫女側の軍勢は5千人位で神皇側が日巫女側に攻めこめば負けは必定だった。


 会話が一段落した時に戸が開く音がした。

「姉さん夜御膳を持って来たよ」

「倭……ここの場所では日巫女と言いなさいと何度も言っているのに、まだ分からないんですか?」

 日巫女の弟ヤマトであり漢名は倭と読む。

「別にいいじゃないか!いつもの姉さんだからさ」

「まったく……」

「まあまあ2人とも、それで明日の行事はどうしますか?」

「何?神皇が明日攻めて来るの?」

「倭!貴方は戻りなさい」

「子供扱いするなよ!おれも戦士だぜ、姉さんを守れるようになったんだから」

 日巫女は16歳倭は14歳の弟としてもそれ程武功も上げておらず、日巫女の気持ちは弟でしかなく心配の種だった。

「明朝の日の出時刻に我ら邪馬台国の戦士は、ここで神皇を迎え討つ」

「と、言うことは 戦をしても良いんだね!」

「倭!遊びじゃないんだから、貴方は隠れてなさい」

「聞かないよ!ここで姉さんに護られたら一生悔いが残るよ、だからこれからは姉さんを護る番だ!」

「倭ったら……」

 14歳の弟の顔はいつしか戦士の顔つきになっていた。


 御膳を囲み日巫女と戸与と倭で食事を済ませ日巫女は寝所に向かうことにし、戸与と倭は各々の家路に歩いて行った。


 戸与が我が家に着くと神妙な面持ちで戸与の父が母のメイが囲炉裏の前で座っていた。

「父上……どうしたんですか?」

「戸与!そこに座りなさい」

 いつになく厳しい顔つきの父が我が娘にキツく言うが、その言葉に愛情があるのか戸与の心に響く。

「いいか戸与……日巫女様は明日には神皇の軍と闘いなさるだろう、日巫女様は先頭をきってわが軍を指揮することになるが……」

「父上……」

「すまん、戸与……私に付いて来なさい」

 戸惑いながら父に付いて行く戸与、

 家から村の周りにある山の方向に歩いて行くと洞窟がありその前で立ち止まった。

「父上……これは?」

「とにかく付いて来なさい」

 洞窟に入り父に付いて行く。


 松明を持ちながら奥まで進むと鋼鉄の扉が現れた、

 扉の右脇に手型がありレオがそこに手を置く。

 厚さ10cmに高さ5mの扉が両側に開く。

 レオと戸与が奥に歩いていくと眩しいほどの光が2人を照らす、周りは鋼鉄の板が張り巡らせてあり直径約5mの広さがある真ん中に縦長の蓋が付いた鋼鉄のベッドみたいなのが置いてあった。

「父上これは何ですか?」

「人工冬眠装置といい一定期間眠ってもらう機械だ」

「眠るって、この中に日巫女様を眠らせることですか?」

「そうだ……日巫女様をお護りするのが我らが使命、いいか戸与……明日日巫女様の危機が迫ったらここに連れてきて護ってやってくれ」

「分かりました」

 と、ひとまず納得したがいつの間にこんな装置が出来たのか疑問が残りレオに聞いてみた。

「父上この装置はいつからあるのですか?」

「我らがこの土地に来る前日巫女様が神託した結果、東のこの土地に来るように言われた今から50年位前の話しになるが」

「でも日巫女様は16歳なのに」

「そうか戸与は知らないか」

「何がですか?」

「今の日巫女様は三代目なんだ」

「では、日巫女様は……」

「そう、日巫女とは継承者として代々霊力がある者に引継ぐ」

「それが私になるわけですか?」

「そうだ……だから霊力があるお前に日巫女様は託された」

「はぁ〜私って大丈夫かな?日巫女様みたいになれるかな……」

「何を言うお前は巫女の儀式を行ったろうに、16歳になってさらに霊力も上ったお前は巫女に相応しい霊媒になったのだ」

「霊媒?とは、どういう意味ですか?」

「知らんのか?霊媒とは神をその身に下ろすことを言う」

「あまり実感が湧かないな〜」

「その時が来れば出来るようになる、さて外へ出るぞ」


 洞窟から出て村に向かう途中でレオと戸与が立ち止まる。

「どうしたのですか?」

「ちょっとここで涼んでいく、戸与は先に帰りなさい」

「で……でも」

「帰りなさい」

「はい……お休みなさい」

 戸与はレオに振り向きながら家路に帰る。


 村から木立を抜けて歩くと荒れ地がありそこで海面に浮かぶ月の灯りを眺めているレオに、後ろからレオに歩み寄って来たのは日巫女だった。

「レオ殿何をしているのですか?」

「日巫女様……いよいよ明日ですね、我々が貴女をお護りすることが最期になるとは」

「やはり他の地へ逃げませんか?」

「我々は日巫女様を代々守護する一族、そして我が娘戸与は日巫女の継承者として先代を護る為に……」

「レオ殿無理に私を庇うことはやめてください、私もこの国の一員です……」

「ですが……」

「レオ殿は私のお守を良くしてくれましたね、我が養母から聞きましたレオ殿は私が熱を出して寝込んだ時は薬草を取りに危険な所へ行っていたと」

「覚えてましたか……あの頃の日巫女様は病弱で、私がその都度山奥へ行き薬草を採ってきましたね」

「その時はお世話になりました!」

 2人揃って笑っていた。

「日巫女様…神皇がこの山の向こう側に陣を張ったとなれば、こちら側の戦力は難しい事になるでしょう」

「それでも私は戦うよりか逃げたい本心がありますけどこれは皆には内緒ね……」

「分かりますよ……私も怖いですからね」

「でも私は皆さんの為に戦う覚悟はあります、貴方達が戦うなら一緒に……」



 日巫女の陣から見て一つ山を越えた所に日陽彦率いる神皇軍が陣営を轢いていた。

 山を背にして陣屋に囲まれた中心に布地の囲いを施し、木製の椅子に静かに座している日陽彦がそこにいた。

「皇子!侵攻の準備が整いました」

「うむ……」

「皇子……どうなされましたか?」

「はっきり言うとな、あまり気が進まんのだが……」

「仕方がありません、日巫女の土地は元々我らの領土だった場所です!」

「だから武力で取り返すか?」

「皇子……貴方は優し過ぎます、初代日巫女が我らと仲違いした事をお忘れですか?」

 日陽彦と対面して会話しているのは、二代目日陽彦のお側のカムイで今も三代目の世話係りをしている。


「忘れてはいない……」

「明朝我らは日巫女の村を襲います、皇子はどうしますか?」

「どうとは?」

「心ここに無い皇子が先頭に立っては我らの士気が下がります!」

「……いや 私が指揮を上げなければ皆は着いて来ないからな、カムイよ私と一緒に闘ってもらえないか?」

「喜んでお供します」

「下がってよいぞ」

「お休みなさいませ」


「兄様……寝床の用意ができました」

 日陽彦の妹クイナがこの戦にお供しているので日陽彦の身の回りの事をクイナは当然のように世話をしている。

「クイナ……いつも苦労をかけてすまんな」

「何を言いますか兄様、私のワガママを嫌な顔せず戦にお供として頂いてありがとうございます」

 クイナの後を歩きながら兄の日陽彦は寝所に向かう。


 その頃カムイは自分の部下達と策所で戦略を練っていた。

「いいか!この策は皇子には内緒にしておけ!」

「しかし…何故皇子には黙っておけと?」

「皇子はこの戦にあまり熱心ではない、従って兵達は士気が下がりこちらが敗れるかも知れん…」

「ですが、皇子に知らせず勝手な事をしたら…」

「その時は我が責任をとる、いいか…我が声をかけたら一気に進軍する」

「分かりました…」



 明朝辺りの山々は朝日を浴びながら麓はやや霧がたちこみ、これから戦が始まる静けさが森の鳥の鳴き声を押し黙らせる。

 日巫女の本拠は日陽彦の軍と浅瀬を挟んで対面して陣を建てていた。


「日巫女様…用意が整いました、皆に姿をお見せ下さい」

 日巫女のいる座所は木製の階段を長く上った所にあり、日巫女はそこから軍勢が見える。

「レオ殿女性や子供は避難させましたか?」

「ハイ…全て安全な場所に移しました」

 日巫女の御側付きの男二人が座所の幕を開ける。


「日巫女様ーー」

 5千人の日巫女の軍勢は日巫女の御姿が見えたと同時に、弓や槍や青銅の剣を天上にかざして日巫女を讃えていた。

「皆の者!我ら日巫女様の軍は日巫女様を守る為にある、神皇軍恐れるに足らず…我らは日巫女様の為に!」

「オオーッ!」


「日巫女様行って参ります……恐らくこれが私の最後となりましょう」

「レオ殿…ご武運を」

「それでは!」

 レオは階段をかけ下り軍勢の先頭まで進んで行く。


 日巫女の視線の先に山の頂きにあるのは神皇軍の本陣があり、日陽彦がそこにいるのか日巫女の眼差しは哀しく見えた。

「日巫女様…どうかしましたか?」

「戸与 和解の道はなかったんですかね?」

「父上が私にこう言われました、一つ違う考えがあればもう一つ違う考えがあるのが人だと」

「間違いが人を戦に走らせるのですか?」

「日巫女様……」


「神皇 我ら出陣の時です、兵に御言葉を」

「うむ…」

 日陽彦は岩の高台に立ち整列している神皇の兵に激を飛ばす。

「よいか神皇の兵達よ! いよいよ奪還する日が来た、我等が土地を取り返すために出撃せよ!」

「オオー!」

 兵達はそれぞれの陣地に散って行った。


「カムイ殿、これからどうしますか?」

「周りの兵達は神皇の従属兵だ、我らは日巫女の座所に行く為に従属兵に紛れて裏に回れ!」

「ハハ!」


 陣を張った囲いの中で切ない眼差しで座っている日陽彦は直線上にいるであろう日巫女に向いていた。

「皇子…カムイ殿が不穏な動きがあります、どうしますか?」

 声の主は日陽彦の影で歴代の日陽彦に付き添い付かず離れずいる存在で、影にはいつも助けられている。

「カムイの事だ おそらく兵に紛れて日巫女を殺すだろう……影よ、日巫女を助けよ」

「ハハ!」


「神皇の兵達が揃ったようです」

「いよいよ来るか……」

 先頭にいるレオは後ろを振り向き娘のいる座所に視線を送る。


「父上……」

 今生の別れが戸与の心に届いたか、ふと言葉が出ていた自分に驚き我が身を引き締めた。


 周りの山々に朝霧がかかっていたものが晴れてきて山の尾根がくっきり見え始めた。

「戸与姉!」

「倭!あなたどうしてここにいるの?」

「僕も兵士さ!日巫女様を守りたくなってね」

 何処かに身を隠してたかいきなり戸与の横に現れ戸与は驚いている。

「貴方には何を言っても私の言葉など届きませんか?」

「日巫女様…」

「好きなようにしなさい、倭は父上に似て頑固ですからね」

「それじゃお言葉に甘えて!」

 倭は日巫女との最期の別れが近付いているのが本能的に分かっていた、また戸与も日巫女の別れが近付いているのを知っている為哀しみを飲み込んでいた。

(それでも太陽の鼓動が変だわ…)

 日巫女の霊感は太陽の波動まで受信出来るように感度が上がっていた。


 太陽が山の稜線に顔を完全に覗かせたのを合図に日巫女と日陽彦の軍が互いに衝突した。


「行くぞ!付いてこい!」

「ハッ!」

 従属兵に紛れていたカムイ達は後方から山側の縁を周り、日巫女の死角になる階段のすぐ側まで来ていた。

「カムイよ! 相変わらずな男だな」

「貴様はレオ…」

 カムイの動向に注意をしていたレオはカムイの性格を知っていて、日巫女の暗殺に動くと思い先回りをしていた。

「ここから去れば見逃してやるぞ!」

「バカめ…貴様は一人で待っていたか? 多勢に無勢だな!レオよ!」

 キーン バキーンッ!

 青銅の剣がレオと複数のカムイの手下の兵が闘う。


 次々倒れて行くカムイの手下を尻目に後退りするカムイは煙幕玉を放ち姿をくらます。

「クソ!カムイめ」


 時間が過ぎ去り太陽が頂上に差し掛かる頃日巫女の軍勢は半分に減りはじめ、いよいよ日巫女の村に日陽彦の軍勢が押し寄せる。

「レオ殿!囲いが耐えきれなく門戸が崩壊寸前です」

「…戸与! 日巫女様を!」


 座所から微かに見える父を凝視する戸与、父の言葉で我に帰り日巫女を連れて下ろうとした時日巫女が驚いた。

「戸与…どこへ行こうというのですか?」

 無理もないレオと戸与は分かってはいても日巫女には知らせてはいないからだ。

「父上からの指示です、私に従って下さい」

「レオ殿が?」

「戸与姉…どこに行くんだよ!」

「倭…黙って私の言う通りにして!」

「う…うん」

 戸与は日巫女の手をとり階下に降りようと中段まで進んだが、どこかに隠れていたカムイが階段を上がって来た。

「日巫女!」

「お前はカムイ!」

「やっぱり我は運が良い」

 じわじわと歩を進めるカムイに日巫女を庇いながら戸与と倭はカムイと対峙する。


「日巫女!覚悟せよ!」

 カムイが剣を振り上げたその時カムイの首筋に剣が見えた。

「カムイよ…それ以上進めば俺はお前を粛清する」

「貴様ーー!」

「貴方は?」

「私は日陽彦様の影です…」

「日陽彦殿の…」

「離せ!」

 影の手をほどき再びカムイが日巫女に向かって剣を掲げる。

「覚悟!」

 影の剣がカムイの背中に一太刀を浴びせる。

「グァ!」

 背中に傷を負ったカムイは長い階段を転げ落ちて行く。


「どうして私を助けに来たのですか?」

「日陽彦様の言い付けでここに来ました」

「日陽彦殿が?」

「日陽彦殿は変わりないですか?」

「元気です…」


「日巫女様…早く行きましょう!」

「影…日陽彦殿に…」

「分かりました…」

「戸与姉!何処へ行くの?」

「倭! 黙って着いてきて!」

 戸与は日巫女と倭を連れて裏山の洞窟に向かって行く。


「何? 日巫女が逃亡しただと!」

 最前線で戦っていた兵が日陽彦に告げた。

「見損なったぞ日巫女!」

「兄様…理由があっての逃亡したかと思います、日巫女様はそんな卑怯な人ではありません」

「日陽彦様どうしましょう?」

「放っておけ…」

「ハッ」

「クイナ…日巫女は何故逃げたのか分かるか?」

「…?」

「未来が見えるから安全な場所に隠れたんだろう」

「未来が見える?」

「そうさ 未来がな」


 裏山の洞窟前に着いた戸与達は辺りを見回して誰もいない事を確認し、戸与は日巫女達を連れながら松明を点けて奥に進む。

「戸与姉~どこまで行くんだよ…」

「もう少しだから我慢して」

「私…幼い頃ここに来た覚えがあるのですが」

「そうでしたか…ならば分かるかと思いますが」

「初代日巫女の秘密の空間と聞いてますが」

「とにかく…中に入れば分かると思います」

 戸与は鉄製の扉の横にある四角い凸板に手を当てて扉を開ける。

「スゲー何だよこれ!」


「日巫女様 これが日巫女様が入る箱です」

「こ…これは何ですか?」

「人工冬眠装置という物です」

「それは?」

「…強制的に眠らせ時期が来たら目覚める装置と思って下さい」

「戸与姉! 日巫女姉をこの箱に寝かせるのか?」

「そうよ! これはレオ…父上から言われた約束を実行しているだけ、日巫女様をお守りするのが一族の掟だから」

「分かりました…レオ殿の言い付けならばそれに従うのは私の務めです」

「それでは 始めます、蓋を開けますので裸におなり下さい」

「…何故か恥ずかしいですね」

「倭!後ろを向くの!」

「イケねぇ…」


 装置に横たわる日巫女に向かい別れの言葉を伝える倭。

「姉…日巫女様 また会えたらいいね」

「そうね…でも私は死ぬわけじゃないから、涙は見せないの…」

「だってさ…」

「日巫女様…後の事は私に任せて下さい」

「戸与…幼い頃よく草原で遊んだわね、あの頃の思い出は今でも覚えているわ」

「日巫女様…私もです」

『コレヨリ トウミンヲカイシシマス、フタヲシメマス』

「戸与…元気でね、さようなら」

 静かに蓋が下がりやがて液体が日巫女の体を包み始めた。

『アト 1フンゴニトビラヲシメマス キケンデスノデ…』

「行くわよ!倭!」

「姉さん」

 戸与と倭は洞窟の外へ走りだした。


 戸与と倭が洞窟の外に出た途端扉が閉まり元の岩場に戻った。

「もたもたしてられないわよ、安全な場所に行かないと!」

「戸与姉…何か周りが薄暗くなって来たような」

「え?…何なの?」

「あ! 上を見て」

「あれは?」


 戦いの最中のレオも異変に気付き上を見上げる。

「あれは…日喰い」

 日喰いとは皆既日食であり既に月が太陽に被さり始めていた。


 それと同時に地鳴りがし始めた。

 戸与と倭のいる場所も地面が横揺れをして立っていられない、レオもそして周りの兵達もあたふたしていた。

「ハハハ…レオ…覚悟しろよ!」

「カムイ…生きていたか?」

 その刹那レオとカムイの間に地割れが生じ日陽彦の兵側の連中が地割れに墜ちていく。

「クソーー! レオー」

 レオとカムイの間が開き次第にカムイの足元にも地割れが迫る。

 カムイの後ろは山であり逃げ場はない。

「日巫女! 必ず始末するからな!」

「カムイーー!」

 地割れに墜ちていくカムイは笑いながら闇に消えていく。


「兄様…私たちも避難しなくては」

「影…クイナ! 退却せよ!」

 兵をほぼ失い日陽彦は退陣して行く。

「全ては日喰いの成せる技か…」

「…?」

「クイナ…また日巫女に会えそうな気がする」

「日巫女様とですか?」

「未來にな…」

「未來?」


「父上!」

「戸与戻ったか、日巫女様は?」

「父上に言われた通りに…」

 日喰いの影は元の明るさを取り戻し眩しい太陽が顔を覗かせた。

「レオ様!姉様にまた会えるかな?」

「きっと会える!だから希望は失うな」

「私がいるから落ち込まないの」

「何か心配だな!」

「うるさい!」

「ハハハ…さあ!皆の元に帰ろう、母さんが待ってるぞ」


「絶対会える!日巫女様…」

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