5.戸惑い?
あー、なにがなんだか、意味分かんねえ。一体全体、さっきのアレはどういうアレだ。神楽先生の授業より難解な問題だな、おい。いや待て、冷静に分析すれば謎は解けるはずだ。犯人はお前だ!
さて。えーと……。
(純。この人、三年生の金田健吾先輩。今……私が付き合ってる人)
おぅ。さすが、俺。たった三秒で謎は全て解けた。なるほど、あの金田先輩ってのと夏菜は付き合ってるわけだ。ったく、なら初めからそう言えっての、紛らわしい。危うく迷宮入りするとこだったじゃねえか、馬鹿馬鹿しい。
にしても、あの夏菜がなあ。確かに、ぶっちゃけトークでいくと夏菜は可愛い。肩で揃えたストレートのショートカットの黒髪。パッチリとした大きな御目目に、高いお鼻。ぷっくりとした唇。小動物に例えるなら、とりわけリスのかわいらしさを連想させるその顔立ちは、その笑顔が最終兵器だ。プロポーションはまあアレだが、あの折れるようなすらっとした細い体も女の子っぽくねえ? 俺なんか、さっき危うく抱き締めちまうとこだった……って、いや、いや、いや、あそこでもし夏菜のこと抱き締めてたら俺どうなってたの? おぅ。仮想修羅場が俺の脳内でひとりでに浮かびやがる。
嫉妬の鬼と化した金田先輩。ひたすらすっとぼけてパンパン手を叩く俺。てめえ、ふざけんじゃねえ、いや、ふざけてませんこっちも内心必死です。んで、押問答の末、そこには嫉妬の鬼に刺し殺された変死体が一つ。
とにかく、あの夏菜がなあ……。まあ、今まで一度も男と付き合ったことないって方が不思議っちゃ、不思議か。夏菜の奴、結構モテるって話だしな。
んで、その夏菜のハートを射止めた王子様が、あのクソ野郎か。って、あれ? なんか今言葉遣いおかしかった? すいません、金田先輩。
しかし、夏菜はああいうのがタイプか。一見、長身細身の優男。あれは何かスポーツやってんな。だって、肌が少し黒かったし、体つきも細かったけど、なんとなく鍛えてそうななさそうな、まあ、どっちでもいいや。しかし、結構なハンサム様だったな。すっきりとした短髪は今時珍しく染髪されてなかったし、いかにも爽やかなスポーツマンって風情だ。俺より少し、背ぇ高かったしな(ちなみに俺の身長176センチ)、負けたぜ、ちくしょう。
にしても、このわけの分からん胸のざわめきはなんだ。やべえ、今誰でもいいから殴ってやりてえ、気分だ。よし、このまま職員室直行して、神楽先生殴ってくるか。
……はぁ。教室戻ろ。