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41.夏菜は俺のことが好き?

 夏菜は俺のことが好き、夏菜は俺のことが好き、夏菜は俺のことが好き、夏菜は俺のことが好き、夏菜は俺のことが――無限ループ。

 麗美が出て行き、一人リビングに取り残された俺の頭の中は、高尚な呪文で埋め尽くされていた。そう、夏菜は俺のことが好き。

 麗美から授かったお告げは、悶々と頭の中を行き交い、俺を呆けさせる。

(……すごく、優しい言葉だった。本当に、嬉しかったの)

(だったら、聞いてもいいかな。純の……本心)

(でもね、純に無視されるのって、私には結構キツイから――)

(ねえ、純。また一緒に帰ろうね)

「……」

 確かに、夏菜のこれまでの俺に対する態度を思い返してみれば、その可能性も無きにしもあらずだ。彼氏にぞっこんラブなら、俺のことなど気にも留めないはず――ああ、そう考えれば考えるほど、夏菜が俺に気があるような気がしてきた。

 そういえば、今日授業中に何度か夏菜と目が合ったよな。それで、夏菜は俺と目が合うと微笑みかけてきた……脈あり!?

 ……――いや、待て、冷静になれ。授業中に目が合って微笑みかけられたから好かれてますって、どこの自意識過剰の馬鹿の恋愛理論だ。そんな理論に乗っかる奴の気が知れねえよ。乗っかりかけてたけどな。

 しかし、呪文が。夏菜は俺のことが好き。呪文が頭の中を。夏菜は俺のことが好き。ぐるぐる回ってそれ以外考えられない夏菜は俺のことが好き。

 もし、本当に夏菜が俺のことを好きなのだとしたら? そして、今も俺のことを待っていてくれているのだとしたら夏菜は俺のことが好き。その想いに応えなきゃ、男じゃねえだろ夏菜は俺のことが好き。でも、夏菜は俺のことが好き。もし、勘違いだとしたら、夏菜は俺のことが好き、二度と立ち直れないかもしれない夏菜は俺のことが好き。

 ――昼休みに目の当たりにした光景が、頭の中にこびりついている。金田先輩の胸に頭をもたげ、体をまかせる夏菜。そして、夏菜の細い肩を抱く金田先輩――……。その光景は俺の陳腐な妄想なんて一瞬でかき消して、途端に俺の心を締め付けた。夏菜の隣に俺じゃない別の誰かがいる。他の誰かが夏菜に触れることを思うと、頭がどうにかなってしまいそうだった。

 そうだ。麗美の言った通り、お互いが傷つかない恋愛なんてない。自分も相手も傷つけないということは、結局何も始まってはいないということだ。相手を気遣って、自分が傷ついてみたところで、結局それは自己満足でしかない。気持ちは、伝えなければ伝わらないのだから……。

 他の男が夏菜に触れるのが嫌だ。理由なんてそれで充分だ。この気持ちを、ただ素直に夏菜に伝えればいいんだ。夏菜を大事に思ってるから、この気持ちも大事にしたい。そして、だから、伝えなきゃいけないんだ。

 しかし――。

「好きだ、夏菜」

「勘弁してください」

 ――ってなことになったら、どうしよう……?

 ごめんなさいじゃなくて、勘弁してくださいって、最上級のお断りを本音でぶちまけられた日にゃ、俺絶対立ち直れそうにないよ……。ってか、いくらシミュレーションしてみても、夏菜は一度も笑ってくれませんでした。

「やっぱ、やめよっかな……」

 って、なに考えてんだ、俺は! 告白を決意したそばから挫けんじゃねえぇ!

 そうだ、告白なんてのは、ノリだ。その場の勢いでぶちかませば、案外アッサリいくもんだ(根拠なし)。大事なのは勢いだって言ってたじゃねえか(ドラマの見過ぎ)。

 そう覚悟を決めると、俺は冷蔵庫から栄養ドリンクをありったけ取り出し、全部飲み干してから、勢い付いて玄関のドアを開けて――玄関の外で呼び鈴を鳴らそうとしていた夏菜とバッタリ出くわした。

「わ……! じ、純!? びっくりしたぁ……」

「か、かかっかかかかかっかかか……かかかな?」

 びっくりしたと言葉を発した自分よりびっくりしている俺を見て、夏菜は目を丸くして「え……な、なに?」と声を出した。そして、そんな夏菜に俺は「な、なんでもない」と言葉を返し、燃え上がっていた闘争心はあえなく鎮火されてしまった。

「えっと……も、もしかして、夕飯呼びに来てくれたのか?」

「あ……うん。もしかして、もう済ませちゃった?」

「い、いや、まだ――」

「そっか。じゃあ、ウチで食べる? 一応、純の分も用意してあるから」

 一応、の部分を強調してから、夏菜は笑った。しかし、笑い返す俺を見て、夏菜の笑顔は途端に引いてしまった。あれ、もしかして、うまく笑えてなかった?

「……純、なんか変じゃない?」

「へ! い、いや、そんなことないって! いやあそれにしても紗枝さんの手料理は久しぶりだな楽しみだ(棒読み)」

「おあいにく様。今日、お母さんは残業でまだ帰ってきてないの」

「……え゛」

「私の手料理で悪かったですね」

 そう言って舌を出す夏菜を呆然と見つめながら、俺は心の中で神に問いかけた。

 ――神様。もしかして、これはあなたが下さった好機チャンスですか?


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