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40.真相

 麗美の突拍子のない言葉は、まるでパチンコ台の中を跳ね回るパチンコ玉のごとく縦横無尽に俺の頭の中をさ迷い、結局フィーバーに至らなかったそれは、俺の中で消化されずうんぬんかんぬん。いやはや、困ったな。とりあえず、聞き返すしかないでしょう? って、ことで――。

「……ホワッツ(なんですって)?」

 うん。思わず英語で聞き返してしまったのは、それだけ動揺しているということだ。しかし、というか、やはり麗美はそんな俺の反応を予期していたのか、はあ、とため息を吐いて「だから」と声を出した。

「夏菜は純君のことが好きなの」

 十秒ほど、俺は麗美から目を逸らしてからその言葉の意味を考え、何とか、麗美の言葉を理解した。そして。

「はい?」

 また、聞き返した。でも、冷静でしょ? 母国語に戻ったしね。

「っていうか、言われる前に気付こうよ、純君……。夏菜がそういう素振り何度君に見せてると思ってるの」

「は……いや、でもそれって友達としてとか、そういう――」

 そんな腰抜けた俺の台詞を一睨みで黙らしてから、麗美は言葉を発した。

「君がここまで鈍感で腰抜けだって分かってたら――。全部私のせいなんだ。だから、このまま二人がすれ違っていくの、黙って見てられないの」

 いや、全部私のせいだとか言いながらなに毒吐いてんの君? ってか、言ってること全然意味分かりませんから。

「あの、麗美さん? 言ってることさっぱりなんですけど」

 俺の言葉に、麗美は小さく息を吐いてから声を出した。

「私なの」

「へ?」

「金田先輩に告白されたって夏菜に相談された時、私が付き合うように促したの。ほんとは」

「……え」

「そうすれば、君が夏菜を友達として好きなのか、それ以上の感情を抱いてるのか分かると思ったから。だから、私夏菜に金田先輩と付き合えって言ったの」

「あ……」

(私が金田先輩と付き合っても……なんとも思わないの?)

(私は純の気持ちが知りたいの!)

 あの時の夏菜の言葉が脳裏をよぎる。そして、間抜けな声を漏らす俺を見て、麗美はため息を吐いた。

「夏菜はね、純君のことがずっと前から好きだったんだって。でも、その気持ちを伝えられない理由があった。だから、待ってたんだよ。君が自分に振り向いてくれるの、ずっと待ってたの」

「伝えられない――理由って……」

「夏菜言ってたよ。純君には、ずっと前から好きな人がいるって。だから、自分の気持ちを純君に押し付けて、君を困らせるようなことはしたくないって」

「……」

「聞いた。その人はずっと前に亡くなってるってこと。いなくなったその人のことを、純君はずっと想い続けてるってこと。だから、って――」

 麗美の言葉に俺は左手首につけたビーズのブレスレットに目を落とした。そして「でもさ」と言って、麗美の声は弱弱しく揺れた。

「そんなの、夏菜が可哀想だよ」

「麗美……」

 顔を上げると、麗美は泣きそうな顔をして、まっすぐ俺を見ていた。

「純君、夏菜のこと好きなんでしょ? だったら、伝えてあげてよ。夏菜は、今も純君のこと待ってるんだよ」

 言葉を返せない俺をしばらく見つめてから、麗美はそっと俺から目を逸らした。

「純君がいつもつけてるビーズのブレスレット。それ、その人に貰ったものなんでしょ? いつか、私がそれ女っぽくて気持ち悪い。似合ってないよって言っても、ずっとつけ続けてるよね」

「……」

「でも、傍にいられない人のことより、傍にいてくれる人のこと、大事にしてよ。じゃなきゃ、君だって辛い思いすることになるんだよ……」

 そう言って、俺に目を戻す麗美と目が合って、俺はそっと俯いて、左手首につけたビーズのブレスレットを右手でなぞった。

 あの日見たビーズのきらめき。そして、恵美の笑顔。言葉。息づいている思い出。それを忘れることは、俺にはできなかった。そして――。

「悪ぃ、麗美……」

 沈黙が部屋の中を支配していた。その中で俺の声は虚しく宙をさ迷った。

「でも、違うんだよ」

「……え」

「今もあいつのこと想い続けてるとか、そういう綺麗なもんじゃないんだ。俺がこれを外すわけにはいかないから――」

「純君――?」

「……俺、夏菜のこと好きだよ。あいつのこと一番大事に思ってる。そんで、俺の知ってるあいつは、好きでもない奴と付き合ったりできる奴じゃない」

「え……。だ、だから、それは――」

 俺の言葉に、麗美は眉をひそめて声を出した。でも、俺は麗美の言葉を遮った。

「付き合い始めの動機がどうでも、もう、夏菜の気持ちは金田先輩に向いてんだよ」

 今日見た光景が、俺の胸を締め付ける。そして、麗美のどんな言葉も、俺を楽にはしてくれなかった。

 しばらく無言で俺を見つめてから、麗美は気を取り直したように「ごめんね」と声を出した。

「私、出すぎたことしてるよね。でも、純君と夏菜を見てたら、なんかもどかしくてさ……黙って見てられなかったんだ」

 麗美の言葉に、俺は苦笑を返すしかなかった。

「でも、最後に一つだけ言わせてね」

 そう言って、麗美は椅子から腰を上げて、言葉を発した。

「今、純君の胸になにがつっかえてるのか知らないけど、それをすっきりさせる方法は一つだけだよ。それに、君も夏菜も相手のことばっかり考えてないで、もっと自分の気持ちに素直になってもいいと思う。お互いが傷つかない恋愛なんて、どこにもないんだから」

「……麗美」

「ぐずぐずしてたら、ほんとに金田先輩に夏菜のことられちゃうよ。あの人、純君よりずっと素敵な人なんだからね」

 そう言って、イタズラっぽく笑ってから、麗美は「じゃあね」と言って、俺の家を出て行った。






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