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26.再びの悪夢と来訪者

 俺は夏菜のことを一番に考えている。だから、金田先輩と付き合うことを決めた夏菜の意思を尊重すると決めた。なのに、どうして、夏菜は俺の気持ちなんて聞いてくるんだ。どうして、麗美は俺を責めるんだ。

 そもそも、夏菜が金田先輩と付き合ってなきゃ、俺だってとっくに気持ちなんて伝えてる。そうできないのは、夏菜に恋人がいるからじゃないか。といっても、金田先輩の存在がなかったら、俺は今もきっと夏菜への気持ちに気付いてなかったのだろう。

 ……分からない。夏菜がなにを考えてるのか。夏菜が俺になにを求めてるのか。

 でも、知りたいんだ。こんな苦しい思い、もうたくさんなんだよ……。

「ほほほほほ。そんなに知りたいのなら、教えてあげましょうか?」

「え?」

 まどろみが俺を吸い込み、気がつくと俺はただっ広い見渡す限りの草原に立っていた。見覚えのあるその場所に背筋に悪寒を感じ、たった今背後から聞こえてきた聞き覚えのあるおぞましい声に、体中に備わった危険を知らせる警報装置が全力で作動する。

 そして、俺は恐る恐る背後を振り返った。

 ――そこには、女の文字を顔にして、心の文字を体にした化け物が立っていた。

「出たあぁぁああぁあぁあああぁ!」

「ほほほほほほほほ! また会えたわね、ダーリン!」

 なんで、なんで、なんで、なんで! なんで、俺またこの化け物に追いかけられてんの!

 全速力で草原を走る俺の数メートル後ろを、笑いながら(なんか女の文字が歪んでる)おぞましい化け物が追いかけてくる中、俺は混乱する頭の中を必死で整理した。

 そう。確か、今日はまっすぐ家に帰って、自分の部屋に戻り、ベッドの上に転がり込んだ。そんで、昨日の夏菜の言葉と、今日言われた麗美の言葉を考えてて――。

 ――でも、知りたいんだ(女心を)。

 ……はい。そう強く思いながら、意識が途切れました。

「――って、だからって、てめえなんか誰も求めてねえんだよおぉ!」

「ほほほほほ! 照れちゃってぇ! そんなとこも好きよ、ダーリン!」

「誰がダーリンだ、ごらあ! 俺にゃもう心に決めた女がいるんだよぉ! てめえなんか、却下じゃ、ボケェ!」

「な、なんですってえええぇぇえぇえ! 許せない、許せない、許せないぃ! だったら、そいつ殺して私も死ぬっ!」

「いや、なに怖いこと言ってんだ、てめえ!」

「でも! その前に私にダーリンを感じさせてえぇえぇぇ!」

「ざけんな、てめ……! おあ! ちょ……いや――誰か助けてー(半泣き)!!」

 はい。あえなく、化け物に追いつかれ、化け物は俺の上に馬乗りに。

「はーはー! 覚悟はいいかしらぁ?」

「だ、誰かー! 誰か俺を叩き起こしてくれえぇぇえぇええ!」

「ほほほほ。無駄よ、無駄。いっただっきまーす!」

「――(声にならない声)!!!」

 ――ってとこで、謎の衝撃が俺を強制的に目覚めさせ、俺はくわっと両目を見開いた。

 見慣れた天井が無愛想に俺を見返していた。俺はしばらく天井とにらめっこをしながら、左手を、そっと胸に置き心から呟いた。

「こ、怖かったよぅ……」

 どうやら、夢にうなされているうちに、寝返りを打ち続けベッドから運良く転落して、その衝撃で目を覚ましたらしい。絨毯じゅうたんの上に仰向けに転がったまま、俺はあの化け物の沸いてこないこの現実に、心から感謝した。が、女心というものが分からない限り、今後もあの化け物が俺の夢に出てくる可能性は否めず、俺は深くため息を吐いた。

 ふと、時計に目を向けると、時刻は七時前だった。普段なら、そろそろ夏菜が夕飯ができたと俺を呼びに来る時間だったが、昨日はあんなことがあったので夏菜は俺を呼びには来なかったし、代わりに呼びに来てくれた紗枝さんにも、頭を下げて夕飯の誘いを断った。

今日も、おそらく紗枝さんが呼びに来てくれるのだろうが、やはり夏菜と顔を合わせるのは気まずかったので、断るつもりだった。

 が、数分後、チャイムの音が鳴り玄関のドアを開けると、そこには紗枝さんじゃなくて、夏菜が立っていた。

 ……俺は、絶句した。


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