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ハツコイソウ  作者: 榎田頼
第1章
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unit1

”ハル”


今でも思い出す、あの人の声。


意地悪で、お調子者で。私にだったら何をしてもいいと言う。

何かとふざけているように見えて、いざという時頼りになる。


そんな彼を知っているのは私だけだと。彼にとっても私は特別であると。


いつからそんな勘違いをしていたのだろう。



優しく呼ぶ声。怒っている声。

落ち込んでいる、笑っている。


いつだって君のそばにいたのは私だと思ってた。

ずっとそうだと思っていた。



だけども、そんなのは私のただの妄想にすぎなくて。

時間が進まないのは私だけだった。



それを知っていたらちゃんと言葉にしてたのに。


もっと早くに。


もっと早くにちゃんと見るべきだったのだ。現実から目を背けずにいるべきだった。

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