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”ハル”
今でも思い出す、あの人の声。
意地悪で、お調子者で。私にだったら何をしてもいいと言う。
何かとふざけているように見えて、いざという時頼りになる。
そんな彼を知っているのは私だけだと。彼にとっても私は特別であると。
いつからそんな勘違いをしていたのだろう。
優しく呼ぶ声。怒っている声。
落ち込んでいる、笑っている。
いつだって君のそばにいたのは私だと思ってた。
ずっとそうだと思っていた。
だけども、そんなのは私のただの妄想にすぎなくて。
時間が進まないのは私だけだった。
それを知っていたらちゃんと言葉にしてたのに。
もっと早くに。
もっと早くにちゃんと見るべきだったのだ。現実から目を背けずにいるべきだった。