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「……ん?ここはどこだ?」
っと、僕はふっと目覚めた。
ここはどこだ?…っッ、頭が痛い。いや、思い出そうとすると、頭が痛くなる。
僕は周りを見渡した。ここは、どこかの屋敷の中だろうか?
床は、黒光りした金属のような物体でできている。金属、が一番近いだろうか?そして、周りは白と黒のレンガが敷き詰められていて、壁にはロウソクが燃えて辺りを照らしている。それ以外は何もない。
部屋の広さはそう広くない。壁の白黒のレンガと、黒光りした床。これだけで、ここが普通の部屋じゃない何かだ、って事は簡単に理解できる。
「…ここは…どこなんだ…?それと…僕は誰だ?」
僕はどうやってここに来たのか。それ以前に、僕は何て名前なのか。…その基本的な情報すらも、思い出そうと頭を使おうとする度に激しい頭痛に襲われる。無理に思い出そうとしてはダメなのかもしれない。
「やあ、気が付いたかな?」
突然、そのような声が後ろから聞こえた。反射的に振り向くと、そこには一人の男の子が立っていた。
見た目は十歳そこらの金髪の男の子だ。目の色は赤。黒色のセーターっぽい服を着ていて、ズボンも黒色の半ズボンを着ている。見た目は年相応の少年だが、周りに漂う雰囲気が氷のように冷たい。
「…誰だ、お前は。」
「はははっ。随分と冷たい言い方だなぁ。僕はこんなにも幼いのにさ?」
声を絞り出して聞くと、男の子はケラケラと笑いながらそう答えた。
僕を見る目はどことなく楽しそうな感じだ。…これはそう、弱者を苛めるような、そんな感じの目だ。
「お前は…見た目は男の子だが、中身は絶対に幼い子供のソレじゃない。お前の雰囲気…というか、オーラがおかしい。」
「…ふーん。弱者は圧倒的強者を前にすると、本能的に差を感じるって言うけど、本当なのかなぁ、あの迷信。」
男の子はまたケラケラと言うと、ゆっくりと僕の目の前に座り込んだ。僕もへたり込むような形で座っているので、ちょうど視線を合わせたようになった。
「ねえ、君は今ここが何処なのか、君自身は誰なのか。思い出せる?」
そう聞かれて、また記憶を引っ張り出そうと試みたが、激しい頭痛が邪魔をして思い出すことができない。
「ふふっ、やっぱり思い出せないんだね?そりゃそうだよ、解決してないんだから。」
「……解決、だって?」
「そうだよ?それこそが、君がここに迷い込んだ理由なんだよね。」
男の子はそう言いながら、その大きな赤い瞳を閉じた。
胸に手を当てて、何かを考え込むようなポーズを取る。
「ねえ。人間ってさ、結構脆い生物でね。…ああ、身体の強度じゃなくて、精神の強度の話ね。」
「精神の…強度…?」
「うん、そうそう。自分で抑制できないのに、人間の思考はどんどんと増えていくんだ。人間の中には、それについていけなかったり、溢れる感情や思いを抑えきれずにとんでもない行動に出たりする人も居るんだよね。」
それって、例えば苦痛に耐えきれずに自殺したり、好きな人に告白したりする事か?
「大抵は何とか他の事に思考をチェンジしたり、考える事を止めたりして無理矢理抑えてるんだけどね?まあ、少数は死んじゃったりしてるけど。」
「…それと、この現状と何の関係があるんだよ。」
「今からゆっくり説明するよ?うるさいしせっかちだし。だから人間って扱いにくくて嫌いなんだよね。」
男の子は考えるようなポーズをやめると、瞳を細めて僕を睨みつけた。
蛇に睨まれるような感覚、とでも言うのだろうか。ゾクリとした寒気が全身を襲った。
「たまにね、記憶の中に閉じこもっちゃうレアな人が出ちゃうんだよね。それが君なんだよ。」
「記憶の…中…?」
「そうそう。現実逃避?が一番近いかもしれないけど、それは肉体を残して、精神状態が暴走してる状態ね。今回は、肉体を維持したまま、その中の精神の世界に閉じこもっちゃう、と言うのかな?」
「…意味が分からない。」
記憶の中に閉じこもる?…そんなおとぎ話みたいな話、ある訳がない。
…だけど、この周りの風景、目の前にいるこの赤い瞳の男の子はどう説明すればいい?
「…まあそうだよね?……ここはね、記憶領域って言う、一種の世界なんだよ。」
「記憶…領域…?」
「そう。……ここはね、記憶の中の世界。…さらに言えば、ここに迷い込んだ人の記憶を繋ぎ合わせて出来た、継ぎ接ぎだらけの世界なんだよ。」
男の子はそう答えると、口元に手を置いてニヤリと微笑んだ。




