シュートに込めた願い
お題:一人きりの体育館が舞台で『眼鏡』が出てくる戦う話
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部活動の後の体育館は、独特の熱気に包まれている。夏場はもちろんだが、ちょうど秋に差し掛かるこの時期は、夏の熱さとはまた違った空気が漂うものだ。
既に他の部員は片付けや掃除を終え、帰宅している。たった一人、彼は残ってバスケットボールのシュート練習をしていた。特に大きな大会が控えているわけではなく、シュートが下手なわけでもない。ただ黙々と、目の前のゴールに向かって、ボールを投げ続けるだけだ。
「あと二十本……」
一本決めるごとに、そのカウントは減っていく。しかし、一本、リングに嫌われ外れると、彼は頭を抱えた。
「ああ、またやり直しだ」
外したボールを取ると、再びフリースローのラインに立つ。
彼には目標があった。「三十本連続でシュートが決まれば、この恋が実る」。そう決めていたのだ。
彼はバスケットボール部に所属しているマネージャーの子が好きだった。
彼女に彼氏がいるという話は聞いたことないが、当然のようにライバルは多い。特に顔がよいわけでも運動神経がよいわけでもない彼は、とにかく彼女の目を引くことが精いっぱいだった。
何のとりえもないなら、せめてこの挑戦でも成功させよう。そして、告白しよう。そう決めたのだ。しかし、何度やっても、途中で外してしまう。
「集中力の問題か……」
そう思いながら、彼は一度眼鏡を外して汗を拭いた。
すると、眼鏡を付けていたよりも、ゴールがよく見える気がする。試しに外したままシュートをすると、難なくゴールに入った。
「よし、これだ!」
そう言うと、彼はぼやけた視界の中から、ボールを手に取る。そして、次々とゴールめがけてシュートを放った。
一本、また一本と決まる。外すことなど考えられない。もはや作業のように、ボールを一本一本、ゴールに向かって投げるだけ。そして、ついに三十本シュートが決まった。
その時、彼のスマホにメールの通知が入った。相手は、大好きなマネージャーからだ。
「体育館、使い終わったら鍵をかけておいてね。私は今からA君とデートに行くから、戻れないの」
それを見て、彼はがっくりとうなだれた。眼鏡を掛け、シュートした先を見ると、ゴールとまったく別の場所だった。
最初は眼鏡でアリと戦う話にしようと思ったのですが、なんかグロいのとみみっちいのと一度使ったネタだったのでやめました。あまり眼鏡の使いどころが。
一人での戦い、自分との戦い。これも戦いの一種でしょうか?