月下の水たまりミラー
お題:誰もいない駅のホームが舞台で『水たまり』が出てくるトキメク話
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終電が通りすぎた田舎の駅のホームは、何とも寂しげだ。申し訳程度の無人の改札口しかなく、ホームはコンクリートの舗装がはがれて荒れ放題。周囲は田んぼと畑、そして改札側に数軒の民家があるくらいで建物がほとんどない。
誰もいない暗いホームを、階段に向かって歩く。今日は満月のため、外灯のないところでもいつもより明るく感じる。
しばらく歩くと、階段の手前に、小さな水たまりが見えた。電車に乗っている時に雨が降っていたから、そのせいだろう。
満月に照らされたその水たまりをこっそりのぞくと、自分の疲れた顔が映し出された。
いつもの自分だな、そう思っていると、水たまりの水面が揺れた。かと思うと、若い女性の顔が浮かび上がった。
おかしいな、ほかには誰もいないはずなのに、やっぱり疲れているんだ。そう思いながら、女性の顔を見る。年齢は二十代前半くらいで、黒く長い髪が美しい女性だ。
「僕はどうして疲れた顔をしてるのかな」
思わず女性に呟く。
「疲れた顔に見えるのは、あなたが頑張ったからです」
彼女はそう言っているように見えた。
「そうかな、そんなことは無いと思うけれど」
「本当に頑張っている時は、頑張っていると思わないものです」
「そういうものかな。じゃあ明日も疲れた顔を見せるよ」
「そんなに毎日頑張らなくてもいいでしょ? たまには力を抜いたら?」
そういえばここ数日、休みらしい休みを取っていない。休日にも家で会社の作業をしたり、イベントの準備をしたりしていたんだ。
「ありがとう、元気が出たよ」
そう言い残すと、水たまりを後に、階段を昇った。
いつもなら疲れた体にはしんどい跨線橋の階段も、今日は格段に楽に昇れる気がする。
跨線橋の上まで昇ると、上の通路を渡り、下り階段を下りる。改札に出ようとすると、「お帰りなさい」と声がした。改札の入り口まで行くと、長い黒髪が美しい若い女性が立っていた。私の妻だ。
「今日はやけにうれしそうね」
「そう見えるかな」
私を見るなり、彼女は笑顔で私の手を握った。
「さ、帰りましょ」
満月の夜空の下、誰もいない道を歩く。ふと、妻が呟いた。
「私の想い、通じたかな」
短いのになれていると、ちょっと長くなっただけで逆にしんどくなったりします。長い分、情景描写や心情描写を取り入れることができるので、場面は想像しやすくなるのですが、私はそういうのが苦手なのです(汁
さて今回のお題、7ツイート分とかなり分量が多いので、さてどうしようかと考えました。しかし、結局結末を考えず話を進めるという作戦に出ました。どうしてこんな結末になった(汁
ときめかせながらショートショートのオチに持って行きたかったのですが、無理でしたごめんなさい字数たくさんあったのにしくしく。
まあたまにはこんな話もいいでしょ、ってことで。