↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界から来た不良召喚術士  作者: 平位太郎
第4章 他パーティーにて研修中!
37/197

第三十七話 お誘い(下)

 それにしてもカレンは堅物なのだろうか? 

 短い間だったが一緒に旅をしていて知り得たのは、普段は女の子っぽいのに、戦闘となると張り詰めた武道家のように戦う姿だ。


(ああいうの堅物って……言うんだっけ? でも今、身持ちが堅いって言ったよな?) 


 よくわからない。が、ここはジュディスの話に耳を傾けることにする。

 彼女が言うには、カレンとジュディス、そしてシルビアは王都では学友同士の間柄であるそうだ。


「あ、シルビアは神学院ね。先に卒業して尼僧になったのよ」


「ほうほう」


 一方、カレンとジュディスは貴族学院で、学年数に関しては神学院の方が多いらしい。

 ……。

 今のジュディスの話、何かおかしくなかっただろうか?


「今、カレンと同じ学校って言ったか?」


「言ったわよ? 2人とも休学中なんだけど」


「貴族学院って、貴族だけが通う学校だったりする?」 


「それ以外の何かに聞こえた?」


 ……。


「……お付きの侍女も一緒に入学できるとか、カレンってマジ貴族って感じだな」


「その侍女って、まさか……あたしのことじゃあないわよね?」


 かなり怒っているようなので、ここは素直に謝ることにした。

 再度確認してみたら、ジュディスも貴族の御令嬢らしい。


(自称だから、信憑性に関しては何とも言えんけどな)


「今、失礼なこと考えたでしょ?」


 弘は首を横に振った。


「……ふん」


 ジュディスは「どうだか……」と言いながら、エール酒……ではなく白湯を追加注文する。ひょっとしたら、実は酒に強くないのかも知れない。


「このことは知ってる人も多いけど、あちこちで喋り歩くようなことじゃないから。あなたも気をつけてよね?」


「へいへい」


 そんな大事なことを、よく知らない俺に話していいのかよ? と思うが、彼女が言うとおり、知っている者が多いのなら問題にはならないのだろう。


「けど、貴族の御令嬢ってんなら、身代金目的で誘拐とかされたりしねーの?」


「あたしもカレンちゃんも、何度か狙われたことがあるんだけど。上手く切り抜けてるし。それに……」


 ある程度の地位や身分持ちの冒険者に関しては、ギルドから有料だが護衛がつくこともあり、定時連絡を欠かすとたちどころに捜索隊が派遣されるのだという。


「完全に当てにはできないから、最後に頼りになるのは自分の実力ってわけね。ちなみに、あたしは最初から護衛は雇ってないわよ? あ、カレンちゃんもね」


 わかっていたことだが、家名に権力、資金力に物を言わせて安全を買っているのではないということだ。

 納得いった弘は残った料理を掻き込むようにして平らげ、再度口元を拭ってから木製コップの水を飲み干した。


「美味かった。お気に入りになりそうだ。で……だ、話を戻すんだが……」


 なんで俺を仲間に入れる気になった?

 ……カチャカチャカチャ……。

 女給が食器類を引き上げていく。

 テーブル上に残った物は、ジュディスの白湯入り木製コップと、支払いの残っている弘の伝票だけだ。

 聞かれたジュディスは人差し指を唇の下に当て、あらぬ方を見た。


「え~? 冒険者としてのアレやコレやを知らない新米君に、ちょ~っと手助けをしてあげようかな~って」


「嘘だな」


「嘘? 嘘だとしたら、あたしが何を狙って嘘をつくって言うの?」


「そんなの知るかよ。見ず知らずの人相悪い男を、女ばかりのパーティーに入れるって時点で裏があると思っただけだ。さっき言った囮云々だって、半分は本気で言ったんだぜ?」


 数秒間、弘とジュディスの視線がぶつかり合う。

 先に表情を崩したのはジュディスの方だった。


「じゃあ、胡散臭い勧誘は断ることにする? あたしは別に構わないわよ?」


「いや? ありがたく誘いに乗らせて貰うが?」


 弘の返事を聞き、ジュディスは呆れ顔になる。


「あ、あたしの話に嘘があると思ったのよね? なのに誘いに乗るわけ?」


「俺が嘘だと思ったのは、先輩の親切心で誘ったって点だからな。普通に冒険をして、普通に分け前を貰えるなら、俺の方で断る理由はない」


「そ、そうなの? でも……あんたのこと何かに利用するつもりなのかもよ~?」


 悪戯っぽく笑うジュディスに対し、弘は平然と言ってのけた。


「さっき言った条件さえ守ってくれるなら、俺が加わることで……俺の知らないところでアンタらが得することがあっても、それは関係ねーよ。好きにしてくれたらいいさ」


「ふ~ん。わかった……今晩のうちに他のメンバーに話を通しておくから、明日の朝、この酒場の営業が始まる頃に、ここで待ち合わせっていうのはどう?」


 そして、適当な依頼を見繕って、お試し冒険に出かけるのだ。


「いいぜ? 明日の朝、この酒場が営業開始する頃だな? 了解した」


 きちんと復唱し、弘は伝票を持って会計に向か……と、ここで弘が白湯をチビチビ飲んでいるジュディスを振り返った。

 ジュディスが「ん? なに?」と見上げてくる。 


「こいつは好奇心って奴なんだがよ。あんた、なんで冒険者なんてやってるんだ?」


 少し間を置いて、ジュディスが口を開く。


「秘密よ。こういった仕事をしてる以上、身の上話なんかベラベラ喋るわけないでしょ?」


「そりゃそうだ。つまらんこと聞いて悪かったな」


 今度こそジュディスに背を向け、弘は歩き出した。


(言われてみりゃそうだよな? ゴメスさんやカレン達には、反応見たさに喋っちまったが……今後は異世界関係のことは喋らない方がいいか。……シルビアには説教までされちまったしな)


 とはいえ、武具召喚などを見られたら、やはりアレコレ聞かれるのだろうが……。




 ジュディスと別れた後、弘はブルターク商店に向かった。

 用件は、ここまでに入手した物品の下取りと、新たな剣の購入だった。暫くは鉈で頑張ろうかと思ったが、ジュディスパーティーに加わることになったので、剣を新調する気になったのだ。

 なるべく武具召喚を知られたくないというのが、その理由である。


「おはよ~っす。店長、いる~?」


 気安い声と共に入って行くと、前に見たときと同じで、陳列台の向こうに店主が居た。

 引き締まった体で腕組みをしている。


「なに? 剣が欲しい? 前に買ったのはどうした?」


「それが……でかいトカゲの下敷きになって、その……折れちゃって……」


 事情を聞いた店主は「そうか」とだけ答えると、今度はどういった剣を買うか聞いてきた。


「一口にバスタードソードと言っても品質によりけりだからな。その分、値段も違うが……」


「だったら前よりイイのが欲しいな」


 もっとも弘には武具の目利きなどはできないので、店主を全面的に信用することになる。


「わかった。ちょっと待ってろ……」


 弘の申出により店主は、店の奥から一振りのバスタードソードを持ってきた。

 そして陳列台の前に回ると、弘の見ている前で剣を抜いてみせる。


「こいつは前のに比べると、少しばかり頑丈だ。切れ味にも配慮があるが……どうする? 買うか?」


「へえ~……」


 よく切れて頑丈。

 なかなかに心惹かれる文句である。


(前の剣みたいにデカいモンスターの下敷きになったら、やっぱり折れちまうんだろうけどな……) 


 苦笑しつつ、弘は新たなバスタードソードの購入を決定し、ついでに前に買ったのと同じ木盾も購入した。

 お値段は2点合わせて銀貨11枚と銅貨30枚。

 高く付いたが、なぁに暫く依頼遂行を続けていれば元は取れるだろう。

 その後、オーク討伐等で得た戦利品を下取りして貰い、弘はブルターク商店を後にしたのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。