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第百八十五話 王都に集う

 翌朝。

 冒険者ギルドの宿を出た弘は、その足で盗賊ギルドへと向かった。

 晴天下、商人達の事務所や倉庫が集まった区画にあるそれは、実に堂々と店を構えている。とはいえ、貧相でなく立派すぎでもない。他商家の建屋に挟まれて、悪目立ちしすぎない風情と言ったところか。


「うまく紛れ込んだもんだぜ……」


 過日、弘はこの盗賊ギルド本部を探し当てるのに相当な苦労をしたのだ。それが発見してみれば、こんな近いところ……冒険者ギルド王都本部から歩いて数分の距離にある。考えれば考えるほど馬鹿馬鹿しい。他の偵察士や盗賊達も、ちょっと教えてくれれば良かったのに。


「なんで締めあげても喋ろうとしなかったんかねぇ?」


「そりゃあ、盗賊ギルドの本部の場所なんか喋って、それが後でバレたらマズいからでしょうが」


 弘のぼやきにノーマが苦笑しつつ答える。言われた弘は「まあ、それもそうなんだが……」と頷き首を傾げつつ、盗賊ギルド本部へと入っていく。そして受付前に立つと、受付嬢に名前と用件を告げた。

 もちろん、他の来店者……という事になっている盗賊達に用件が知られないよう、「先日の件で出発することにしたから、監視役って人を呼んでくれ」とボカして伝えている。受付嬢の方も、弘達が来るであろう事は知らされていたのか「承知しました。暫くお待ちください」とだけ言い残して奥へ駆けて行った。

 数分後。受付嬢に連れられて、1人の男が姿を現す。

 グレーの魔法使い風ローブに、金属製の杖。

 短く刈り込んだ頭と、少しこけた頬の中年男性だ。体格は痩せ型と言って良い。丸メガネをかけて親しげに微笑む顔には見覚えが……。


「って、西園寺さんじゃないすか! お久しぶりっす!」


「やあ、沢渡さん。予定どおりに王都に到着されたようで」


 日本語ではなく共通語で挨拶した弘に対し、西園寺は、ハッハッハッと笑いながら頷いた。

 彼の名は西園寺公太郎。弘と同じく日本から異世界転移してきた公務員。

 そして、主に石に関連した召喚を行う召喚術士である。


「その後、どうっすか? レベルとか上がりました?」


「割と頑張ってるつもりなんですが。今は29です」


「へえ……」


 弘は思ったよりもレベルの上昇が遅いと感じてた。

 この世界に飛ばされた際の初期レベルは、召喚術士によって個人差があるようで、弘の場合はレベル3で始まり、西園寺の場合はレベル1でスタート。今この場に居ない、もう1人の召喚術士……犬飼毅は初期レベル18という優遇ぶりだった。


(まあ18始まりつっても、そこからレベル18までの分の経験値を稼がないと、次のレベルにアップできないってのがな~) 


 こういった事情を踏まえても、西園寺のレベル上昇は遅い。ひょっとしたら召喚術の種類によっても、レベル上昇に差が出ているのかもしれない。


(実際のところは、わからんけど……って)


「そういや、毅とは別れたままなんすか?」


 最後に彼らと別れた時。西園寺と毅は別行動を取ることになっていたはずだ。弘の記憶では、自分のレベルアップが停滞していることに焦った毅が、半ば西園寺を振り切るようにして単独行動に踏み切っている。

 召喚術士2人で組んで行動していると、経験値の取り合いになってレベルアップがはかどらないと考えたのもあるだろうが……。


「その辺りも踏まえて、色々と話し合った方が良さそうですね。これから暫く行動を共にすることになるでしょうし」


 西園寺は盗賊ギルドの受付を見てから、弘を見直す。


「一室借りて情報交換といきませんか?」


「それは賛成……だけど。暫く行動を共に……って?」


 今ひとつ、言われたことを把握できない弘が首を傾げると、西園寺は明るく笑った。


「まだ言ってませんでしたかね。今回の盗賊ギルド絡みの古竜討伐で、派遣されてきた貴族方の監視役って……この私なんですよ」



◇◇◇◇



 実は盗賊ギルド本部にも会議室はある。

 別に冒険者ギルドを真似たわけではなく、そういった貸し出し部屋があるのは便利だから、そうなっただけだ。ちなみに冒険者ギルドの2階宿に相当する施設は無い。


「冒険者の組合施設とは違って、犯罪組織の拠点ですからねぇ。おおっぴらに酒場や宿なんかを営業するわけにはいかないと……」


 借りた一室……冒険者ギルドの会議室に似た部屋で、西園寺が語っている。

 へえそうなのかと思う弘であったが、彼に聞きたいのはそういう事ではない。


「西園寺さん~? それよか『大貴族様』んとこの監視役ってマジっすか?」


「いやもう、本当なんですよ。あ、そうそう……皆さんに自己紹介して良いですかね?」


 そう言われた弘は、カレン達に西園寺や毅のことを話していたが、こうして顔を合わせるのは初めてであることを思い出した。


「……どうぞ」


 言葉少なに承諾したところ西園寺が席を立ち、会議テーブルを囲む面々を見まわす。


「では改めまして。私、西園寺公太郎と言います。こちらの沢渡弘さんとは同郷で……ああ、同じ国出身という意味でして。生まれた場所は離れているかもと言いますか。そうそう、一応、沢渡さんと同じで召喚術士をやらせて貰ってます」


「肝心そうなところを、ついでみたいに言わねぇで欲しいんすけどね」


 この世界において約200年ごとで出現する異世界からの転移者……召喚術士。彼らの行使する術は、この世界の魔法では完全再現が不可能であり、一周期あたりの転移者数は1人ないし2人程度と少ない。

 ところが今周期の転移者は、把握できているだけで4人と大人数だ。その内の2人が顔を合わせる現状は、サラッと流して良いことではないだろう。


「ハッハッハッ。お互い召喚術士同士、積もる話もあるんですが……ここは仕事の話を先に済ませましょう」


 西園寺はカレン達の自己紹介が済むのを待ってから、主に弘に対して話し出した。

 自分は現在、とある貴族に雇われていること。それは街道移動中、モンスターに襲われていたところを助けた縁によること。そして……。


「今回の盗賊ギルド本部による古竜討伐……正確には頭部の採取ですか。その監視役の用立てを、回り回って私の雇い主に依頼……実際は、上下関係に物を言わせた命令だそうですが……ともかく依頼があったわけでして」


 手持ち私兵の中では最も戦闘力の高い西園寺に、お鉢が回ってきたらしい。


「正直、いい迷惑なんですが。私が古竜と戦うわけじゃないですしねぇ」


 そう言って西園寺が弘を見るので、弘は苦い薬でも飲まされたような顔をした。そして鼻で大きく息を吸うと、精神的な疲れを隠さずに西園寺を見返す。


「そういうこってすか。俺はまた、西園寺さんの雇い主が、クレーマーみたいに暴れてる例の大貴族様かと思いましたよ」


「そんな大貴族様が雇い主だったら、月給はもっと良かったんでしょうけどね」


 ま、今の雇い主に不満があるわけじゃありませんが。と言い、西園寺は仕事の話題を継続した。


「私が派遣された経緯は今話したとおりです。次は依頼遂行中から、その後のことについて話しますか」


 弘が古竜を退治するか失敗するまでと、退治したなら古竜の首を持ち帰るまでの間、西園寺は弘達と行動を共にする。その目的は古竜の首採取にあたり、不真面目な態度が無いか、不正な行為が無いかを確認することだ。


「不真面目はともかく。不正というと、どういうことだろうか?」


 グレースが質問し、それを受けて西園寺が肩をすくめる。


「出発はするんですけど、戦わずに戻ってきて『手も足も出ませんでした』なんて報告をするとか……ですかねぇ」


「ヒロシは戦わずに逃げたりなんかしないわよ! 嘘だってつかないし!」


 会議テーブルをバンと叩いて声を荒げるのジュディスだ。その彼女を、弘は何ともしまらない困り顔で見た。


(古竜が聞いたとおりの化け物なら、本当は逃げたいって気持ちはあるし。都合や状況によっちゃ嘘だってつくぞ?)


 しかし、ここで訂正をしても、変な空気にした上で会話の流れを切ってしまう気がしたので、弘は黙っておくことにする。


「私も心配はしてないんですけどね。そういう役目を任されてるということです。はい」


 ジュディスの怒声を涼しい顔で受け流し、西園寺は弘に視線を戻した。


「とりあえず今話したような事情ですから……同行するのは問題ないですよね?」


「問題ない。てゆうか、監視役を連れて行くのは元から決まってたことだし。道中、自分の身は……自分で守れるんすよね?」


 レベル29の召喚術士。それぐらいの強さであれば、大丈夫だと弘は考えている。

 ちなみに弘がレベル29の頃といえば、以下のとおりだ。


名前:沢渡 弘

レベル:28→29

職業 :チャラい不良冒険者

力:94→97

知力:37→38

賢明度:75→77

素早さ:97→100

耐久力:100→105

魅力:65→67

MP:180→210


・RPG-7

攻撃力+150 消費MP20(1射につき+5P) 



 対戦車火器が召喚品目に追加された頃であり、レッサードラゴンのような大型のモンスターに対しても、有効な遠距離攻撃ができるようになっていた。

 西園寺が同じように強くなっているとしたら、かなりの強者になっていると考えて良いだろう。

 そんなことを弘が考えていると知ってか知らずか、西園寺は微笑みながら頷いた。


「ええ。自分の身を守るぐらいなら。沢渡さんには遠く及びませんけれどね」


「ご謙遜だぁ。そりゃあレベル的に十数倍ぐらい開いてるけど……」


 その辺の冒険者なんか数個パーティー集まっても、西園寺には勝てないはず。そう思う弘は笑い飛ばそうとしたが、対する西園寺は丸眼鏡の奥で目を細めた。


「沢渡さん。何か勘違いしてるようですけど、私のレベル29と沢渡さんのレベル498では、数字の差以上に開きがあるんですよ」


 西園寺は人差し指をピッと立て、「TVゲームのRPGで考えてみましょうか」と続ける。

 例えば、今の沢渡弘はコンピュータRPGの主人公だ。フィールドを歩き、出現するモンスターを倒して経験値を得る。そうしてレベルアップするわけだが……。


「さて、とある絶対に通過しなければ行けない場所に、強いモンスターが居ます。今の沢渡さんのキャラレベルでは勝てない相手です。どうしますか?」


「勝てるレベルになるまで経験値稼ぎをするかな。通りたい現地の近場でモンスター狩り……うん、そのうち勝てるようになるっすよ」


 特定の条件ないしアイテムが必要とされないのであれば、経験値を稼ぐことでいずれ勝てるようになる。それが、よくあるコンピュータRPGというものだ。


「では、そのモンスターに勝てたとして……そのときのモンスターと沢渡さんのキャラのレベルは、どれくらいの差があるでしょうね?」


「モンスターにもレベルがある? てことは……え~と? 俺の方が3から5ぐらい、レベルが上ってところか。何度か挑戦してて、ようやく勝てるようになったってんなら、そんな感じでしょ?」


「まさしく、そういうことです」


 我が意を得たりと西園寺は頷く。

 同じゲーム内のプレイヤーキャラとモンスターでも、その程度のレベル差があれば勝てるのだ。では、その理屈を同じ召喚術士同士である、弘と西園寺に当てはめるとどうなるか。西園寺は、弘のレベルを数レベル上回る程まで強くならなければ、弘に勝てないということになる。

 そもそもレベル数百同士の戦いになるなら、数レベルぐらいは誤差の範囲だから、また話は変わってくるのだろうが……。


「ともかく、私と沢渡さんの強さの差は、十数倍という範囲を遙かに超えてると思うんですよ」


 石の召喚術士と不特定多数のアイテム召喚術士。その違いによって微妙な修正はあるだろうが、それでもレベル差十数倍を覆せるほどではない。


「だから沢渡さんは、もっと自信を持っていいと思うんです。今把握できてる他の召喚術士……つよし君とキオ・トヤマでしたっけ? みんなひっくるめても一番強いはずなんですから」


「ハハッ……そこまで持ち上げられると照れちまいますって。だいたい、トヤマって奴のレベルは解ってないでしょ~が」


 頬が熱い気がする弘は後ろ頭を掻くと、誤魔化す意味も込めて話題を変えた。


「トヤマって奴は王都に居るらしいんすけど。毅は、今どこに居るんでしょうね?」


「毅君ですか? 王都に行くようなことを言ってましたから、今頃は彼も王都に来てるんじゃないですか?」


「へぇ~。てこた、王都で召喚術士が集合かぁ……」


 呟きながら弘は会議室の天井を見上げる。


 前述したとおり、炎の召喚術士である犬飼毅は、弘とのレベル差に衝撃を受け、1人でレベルアップするべく西園寺と別れたはず。その彼が、王都で西園寺と再会するとなったら、多少……いや、かなり気まずいことになるだろう。西園寺は大人の対応を取れるだろうが、まだ中学生程度の毅がどう出るか……。


「主人公願望があるらしいが……。自分の人生の主役ってだけで我慢して欲しいもんだぜ」


 その後、当初の予定どおり東門から王都を出た弘は、街道外の小さな林へ移動し、前後に段違いでローターを配置した大型ヘリ……CH-47チヌークを召喚した。そして、驚いたり感心したりするパーティーメンバー及び監視役の西園寺公太郎を乗せると、自律行動による自動操縦で目指すドラゴンの出没地へと飛び立ったのである。



◇◇◇◇



「ふぇっくしょい!」


 弘達が大型ヘリで飛び立った頃。お約束的にクシャミをした者が居る。

 赤いローブに身を包んだ、一見すると魔法使い風の少年。

 その名を犬飼毅という。名字の読みが日本の古い政治家と同じであるため、あやかって同じ名を頂戴しているのだ。

 一人武者修行をするべく単独行動を続けていた彼であったが、タルシア王国の王都に来た時点では単独でなくなっていた。

そう、今の毅はパーティー行動を取っている。

 パーティーのリーダーは毅で、同行するメンバーは3人。

 1人目は、小人族……ショーティーの女偵察士、バルバラ。姉御肌で毅を弟分のように可愛がっている。

 2人目はエルフ女性の戦士、アストリッド。彼女はエルフ定番の武装……ロングボウとレイピアではなく、ショートスピアを背負っていた。副武装として腰に短剣を吊っており、弓の類いは装備していない。沈みがちな表情と、上目遣いが印象的だ。

 最後の3人目は、人間の僧職者でマリベル。召喚術という、聞いたこともない能力者である毅に興味を示し、彼のパーティーに加入。つまりは、弘のパーティーで言うメル・ギブスンと似た経緯を持つ少女だ。もっともメルは魔法使いで、マリベルは大地母神の信者という点で異なっている。

 歳は15歳の毅に対して、他の3人は全員が年長者だ。毅はパーティーメンバーを年齢で選んだわけではないので、これはまったくの偶然だが、事あるごとに年下扱いされる現状は、毅にとって実に不本意であった。

 さて、前述したように4人編制である毅パーティーだが、これは8人編制の弘パーティーはおろか、通常の冒険者パーティーによく見られる6人程度のパーティー編成と比べても少ない。更に言えば前衛戦力が貧弱である。

 例えば、弘と毅のパーティー編成を比較した場合。

 弘パーティーは、前衛で戦える戦士職が弘を含めて3人。レイピア装備のグレースを含めた場合は4人となる。更にメイスやフレイルを持つ僧職者……ウルスラとシルビアも近接戦闘が可能であり、姿隠しの短剣を持つノーマも前に出るなら、メルを除いた7人での近接戦が可能となる。

 これは前衛3人を擁する冒険者パーティーと戦闘になったとして、弘側は相手の前衛職1人に対し、最低でも2人を投入できる計算だ。もっとも、たいていは弘が召喚した銃火器でなぎ倒してしまうので、これはほんの一例に過ぎない。

 一方、毅のパーティーでは戦士のアストリッド、僧職者のマリベル、偵察士のバルバラが前衛として戦闘が可能だ。とはいえ、この3人が全力で近接線に入ると、僧職者のマリベルが負傷者の治療に回ることが困難となる。また、この3人は短刀を投げたり、スリングで投石したりと後衛行動も取れるため、本来であればマリベルとバルバラは後ろに下がるのが望ましい。

 この4人というメンバー数は、人手不足としか言い様がないのだ。

 では、弘がしているように、毅も前に出て戦えば良い……ということになるが、実は毅自身は前衛戦闘に向かない。

 なぜなら、弘と別れた際のレベルが18だった毅は、現在レベル23となった今もステータス値が魔法使い寄りであり、戦士職のようには戦えないからだ。ちなみに、これは西園寺やキオ・トヤマも同様であり、召喚術士というのは結局のところ、後衛に適した魔法職の一種でしかないことがわかる。同時に沢渡弘が、召喚術士の中にあって如何に異端な存在かであるかも浮き彫りとなるのだ。


「いやまあ、前衛が足りない分は、僕の召喚術で何とかなるんだけどさ」


 王都の大通りを歩く毅は、下唇を突き出すようにして不満を漏らす。それはふて腐れたときの弘の仕草に似ているのだが、当人は気がついていない。


「炎の戦士とか槍兵とかをワラワラ召喚したら、それでもう『魔法職』が前に出る必要なんかなくなるし。それに……」


 毅の召喚する炎の戦闘個体とでも言うべき存在は、どれも自律行動が可能であり、ものによっては会話すら可能だ。召喚物の自律行動というのは、弘の場合であれば現状のレベル498に至るまでの、かなり後期で習得した解放能力である。それがレベル23で可能というのは、弘にしてみれば仰天ものなのだが、毅は満足していない。それどころか不満だらけだ。

 その理由とは、犬飼毅にとって『異世界転移した物語の主人公は、魔法も使える戦士』が理想であり、自分はそうではないことに他ならない。

 広くネット上を探せば、獣医であったり防御特化と言った主人公も存在するのだが、毅の理想はあくまでも『魔法戦士』。

 身近なところでは沢渡弘が該当し、その彼にレベルで大きく引き離され、名声や実績でも負けているとあっては、夢見がちな少年……犬飼毅の心は穏やかでは居られないのである。


「沢渡さんが、あんな感じだから。僕も同じように出来ると思ってたんだけどな~……」


 毅の不平は、とどまるところを知らない。もはや聞き慣れてしまったパーティーメンバーは、顔を見合わせ苦笑するのみだ。しかし、王都へ来たからには冒険者ギルド本部で依頼をこなし、名を挙げたいところである。それが出来れば、指名依頼も入るだろうし収入も大きく向上するはずだ。

 午前中の人通り多い場所で、いつまでもグチグチ言わせておくべきではない。

 そういった思惑もあっただろうが、パーティーの女性陣は毅に話しかけだした。


「まあまあ。上ばかり見てたって切りがないさね。ここは一つ、気晴らしもかねて勇者の剣に挑戦してみたらどうだい?」


 バルバラが、ショートボブ風に切りそろえた緑髪を揺らしつつ言う。

 彼女の言う勇者の剣とは、王城の一角に建てられた聖堂に安置された強力な剣のことだ。適正のある者しか抜けず使用も出来ない剣は、ひとたび振るわれると強大な攻撃力を示す。

 大陸に数ある国家の中でもタルシア王国は、魔法具の開発に長じており、例えば騎士団に所属する騎士全員が魔法武具で装備を固めているが……それら魔法武具と比べても、勇者の剣の攻撃性能は破格だ。

 いつ誰が制作したのかは失伝しており、今はこれまた制作者不明の悪魔像に突き刺さった形で保管されている。

 そして、その剣を抜くことができ、かつ使用できる者を、この大陸では『勇者』と呼ぶのだ。


「勇者の剣か……。抜ければ国家公認で勇者になれる。僕の望む主役ポジになれそうだけど……。でもねぇ……」


 勇者になった場合は、軍への加入を強制され、状況が魔王軍との戦時下であれば最前線送り。戦時下でなければ、定番の『魔王討伐』の使命を与えられ、ほぼ単身で放り出されることとなる。


「王国は『勇者』を都合良く使い分けている。まるで道具みたいに……」


 毅は、バルバラを見た後で視線を正面に戻し、ボソリと呟いた。

 戦時下であれば戦意高揚に利用し、そうでなければ使命だけ与えて放り出す。

 毅や弘が転移前に夢想した、『みんなに持て囃される、かっこいい勇者像』とは掛け離れた扱いであるが、これには理由があった。

 魔王は勇者の剣が抜かれたことを、どういう仕組みかすぐさま察知し、勇者討伐に動き出すのだ。その行動力はコンピュータRPGに登場する魔王のように、最終局面まで居城から出ようとしない魔王とは一線を画する。さすがに魔王1人で出てきたりはしないが、過去の事例では魔将軍数人とともに魔王自ら出撃。最前線……それも王国軍の真っ只中へ斬り込み、勇者の首級を挙げるや速やかに退散していた。

 その後は、普通に近隣の都市に攻め込んだり、派遣された人類軍によって追い払われたりの繰り返しであり、大規模な侵攻は行っていない。

 特に、ここ200年ほどは、時折出現する勇者を始末するのみで、魔王自身は居城に引き籠もりっぱなしだった。


「何が何でも引き籠もってるわけじゃないそうですけどね。5代ほど前の勇者が手強いと知ったときは、魔王が出張ってきたらしいですけど」


 尼僧のマリベルが不満げな口調で口を挟む。彼女は、勇者に対する国家的な遇し方に不満を持っているが、それ以上に勇者が殺害される事態に憤慨していた。

 つまり、彼女は勇者に同情的なのだ。

 そう、驚いたことに、この世界の人間は『魔王を倒すという大目的を果たせず、代替わりしては殺されてばかりの勇者』に対し、総じて同情的であり、親しみを持っているらしい。

 ここまでの話を聞けば、弘や毅などの異世界からの来訪者は「それって勇者じゃなくて、疫病神?」あるいは「国家規模の貧乏クジじゃん」と言いたくなる。勇者とは決して楽しい立ち位置ではなく、むしろ命の危険が高まる危険職種なのだ。

 にも関わらず、人々は勇者に対して友好的であり、親しみを持ち、協力的に接している。


(どうなってるんだろう?)


 毅は小さく首を傾げた。彼から見た『勇者のていたらく』は、党代表が何度交代しても失敗し続ける政権与党のようであり、応援や支援をしたいと思える存在ではないのだ。

 このような事情下で勇者の剣を抜くことに挑戦するなど、当たりが出たら死ぬクジを引くようなもの。毅個人としては、剣抜きに挑戦するどころか近寄りたいとすら思わなかった。 


(聞いた話じゃ、参加料まで取って剣を抜く挑戦をさせてるのに、聖堂前には行列が出来てるって。馬鹿じゃないの? ……沢渡さんぐらい強かったら。剣を抜いて勇者になっても、どうにかしちゃうんだろうけど……。一般人なんかじゃ無理だよね)


 自分が勇者になったとしても、魔王討伐を果たせる自信は微塵もない。

 この先、頑張って頑張って頑張り抜いて、弘ぐらいのレベルになればあるいは……と思うが、ともかく今は駄目だ。

 勇者になれば死ぬ。必要とされるレベルが圧倒的に不足しているため、完全な負けルート。バッドエンド以外の何も見えはしない。

 召喚術士としてのレベルアップシステムを知っている毅であれば……いや、知らずとも少し考えれば理解できるはずだ。

 なのに自分のパーティーメンバー達は、しきりに勇者の剣を抜く挑戦を毅にさせようとする。


「ツヨシなら、絶対に勇者になれるぞ!」


「挑戦……するだけでも……」


「イヌカイ様なら、きっと大丈夫です!」


 豪快に笑うバルバラ。

 伏し目がちだが、口元が微笑んでいるアストリッド。

 そして、信仰する神に対して向けるような眼差しで言い切るマリベル。

 皆が皆、毅に期待し大丈夫だと微笑むのだ。

 彼女らと出会い、今の人数になって今日までの間、半年と経っていないが……。

 こんな風に毅を焚きつけるというのは、今までになかったことだ。


(みんな、どうしちゃったんだよ……)


 毅の知るバルバラなら、毅が調子に乗ろうとするとお姉さんぶって止めようとしたはずだ。普段は自分が調子に乗るくせに。アストリッドなら、派手な催し物や人混みを嫌う傾向があるので、下手をすれば冒険者ギルド宿に引き籠もっていたかもしれない。マリベルは、大地母神の尼僧らしく、やんわりと、しかし反論出来ないように釘を刺したりするだろう。

 だが、今日の彼女らは違っていた。

 幾つかの冒険依頼を遂行して、打ち解けて親しくなり、信頼できる仲間となった彼女ら。その彼女らを今、毅は妙に怖く感じている。まるで人の形をしたモンスターのような……。


「くっ……」


 毅は二度三度、頭を振ってから歩き出した。

 目指すは冒険者ギルドの王都本部。

 そこに行ったからと言って、今の状況がどうにかなると思えないが……依頼掲示板でも見ているうちに、気が晴れるかして皆が元に戻るかもしれない。

 ひょっとしたら、王都に向かうと言っていた沢渡弘が居て、相談に乗ってくれる可能性だってある。もしかしたら西園寺公太郎だって居るかも。


「ツヨシったら、何処に行くのさ!」


「ツヨシ……人の話は聞かないと、駄目……」


「イヌカイ様、置いていかないでください!」


 それらの声と共に皆が追いすがってくる。

 いっそ振り切りたい気持ちになるが、そうもいかない。何故なら、彼女らは大事な……仲間なのだから。


 

◇◇◇◇



 CH-47チヌークにより午前中で移動を終えた弘は、ドラゴン達が巣くう山脈の、街道を挟んだ反対側でトーチカを召喚している。外観は円筒形……鋳鋼製のトーチカだが、銃眼の類から機関砲の銃身が突き出ているわけではない。

 これはあくまで野営用の召喚具だ。

 外装は戦車砲で撃たれたくらいではビクともしないほど強固だが、内装はロッジ紛いの宿泊施設と化している。少し手狭に感じるものの6人部屋が2つ。風呂にキッチン、トイレ付き。銃眼に相当する部位には可動式のシャッターが備わっており、完全密閉した場合でも、2日ぐらいは持ち堪えることが可能だ。

 御都合主義の塊のような一品だが、これは幾度かの召喚術実験の中で、弘が内装の部位選択モードを発見したことによる。つまり、召喚前にステータス画面から所定のウィンドゥを開き、内装をセレクトできるわけだ。ちなみにセーブスロットに登録することで、いつでも特定の組合せで召喚することが可能となっている。


「ほうほう。トーチカとは……また凄いモノを召喚しますねぇ」


 皆で中に入ったところで、西園寺が丸メガネの位置を直しつつ、感心したような声を出した。声には出さないが、まったく同感だと弘は思っている。


(それにテントやらトーチカやら、マメに都市外へ出て召喚したら。それで宿代が浮くってんだからたまんねぇよな。……毎度毎度、都市外泊とかしてたら変な噂が立つんで、その辺が面倒だけど)


 自らセッティングした内装を見回し、弘は全員に声を掛けた。


「じゃあ、ちょっくら出てくるから。みんなは適当に観戦でもしててくれ。冷蔵庫の説明……は、したよな? 中に入ってるのは買い出した食料だ。ナマモノも多いが、すぐに腐るってもんでもない。好きなように使って飲み食いしててくれ。あと、トーチカ周辺には、機関砲やら歩兵砲やら出して自律行動させておくから、モンスターが出ても外に出たりしないでくれな?」


 畳みかけるように言い放つ。 

 その理由は、事ここに到って「やっぱり自分達も一緒に戦う」なんて言われるのが嫌だからだ。勢いに任せて発言する隙を与えず、自分1人だけでサッサと外に出ようという魂胆なのだが、幸いにして真剣な表情で聞くカレンが頷き、他の者達も同情に頷いている。

 一番ごねそうなカレンが素直に従ったのは、弘にとっては有り難い話で、これ幸いとトーチカを後にした。


「サワタリさーん! 頑張ってくださいねーっ!」


 かかったカレンの声に振り返ると、銃眼の位置に皆が並んでおり、弘の方を見ている。中でも目立つのは、両手の平をメガホンのようにして口元に当てているカレンだ。次いでグレースやシルビアといった、恋人達が並び、メルと西園寺の男組の顔も見える。


「やれやれ。こりゃ何と言うか、闘技場で戦うより緊張しちまうな。恥ずかしい感じにならなきゃいいが……」


 主にカレンに、そして他の者達にも軽く手を振った弘は、数歩離れてから前方の街道を見る。距離にしておよそ200メートルほど。バイク等を召喚する程の距離ではないため、草むらをバスタードソードで切り払いつつ前進。周囲には、かなり間隔を開けて木々が生えており、雑草も腰の位置ほどには高かった。


「もうちょっと見晴らしのいい場所の方が良かったか?」


 再度振り返ってトーチカを見る。周辺の風景に合わせてペイントされた迷彩……これは召喚衣服などのデザイン機能を応用して施したものだ……により、意識していないと一瞬見落としそうになる。これならドラゴンが出ても、すぐには発見されないはずだ。


「ふむ……」


 一声唸った弘は、意識を召喚具に飛ばす。ここまで来る途中、弘はある仕込みをしているのだが、上手くリンクできているようで一安心。


「古竜と戦う時の切り札になるかもだし。これで安心材料が1つ……おう?」


 いつの間にか街道の近くまで来ていた。

 この世界の多くの街道は、草を刈られ、人々が行き交うことで踏み固められて、それが自然拡幅されて出来たようなものだ。余裕のある大都市付近では、防草目的で砂利を撒いたり、定期的にわだちを潰したり埋めるなどしているようだが……。


「この辺は轍とか酷ぇな。草とかも結構生えてきてるし……」


 さすがは辺境領と言ったところか。視線を上げると、遠くに天高くそびえる壁……のようにも思える山脈が見えた。そこには多くのドラゴンが居て、中には齢を重ねて強大化した古竜も居る。


「俺の仕事は、まずは古竜退治で……他のドラゴンも可能な限り始末すること~」


 それが、この領地を治めるセイファーディッツ侯爵からの冒険依頼だ。その後はノーマのために、盗賊ギルド本部からの依頼である『古竜の首』を入手して送り届けることになる。

 1つの仕事で2つある依頼と面倒事を解決できるわけだ。これこそが一石二鳥というものだろう。


「さて……ドラゴン、出てくるかなぁ……」


 出て来てくれないと困るのだが、取りあえずは暫く待ってみることした。

オフィスビルの簡易な会議室で見るような、金属パイプと樹脂製の座板で構成された丸椅子。それを召喚した弘は、どっかと腰を下ろす。

 現在の弘は、黒色衣服に黒塗りの革鎧(肩当て無し)の姿に革ブーツ履きで、腰には店買いしたバスタードソードを吊っている。一見したところでは、軽戦士といった印象だ。


「いや、軽戦士ってのは革鎧を着てるもんだが、持ってるのはレイピアとか短剣ってイメージがあるよな? けど、今の俺が腰に下げてるのはバスタードソードだし。両手でも使える剣……ねぇ。これってどうなんだ?」


 バスタードソードはロングソードよりも少し長めであり、柄が長いこともあって両手で使えるほか、腕力に自信があれば片手でも使用可能という武器である。戦士職の武装としては通常使用されることの多いロングソードよりも『重』に傾いた武器と言えるだろう。


「むうう……はっ!?」


 腕組みしながら弘は唸った。そして、あることに思い当たる。

 自分は『ただの鎧が貧相な戦士』なのでは……と。


(金ならあるし、王都に来たんだから値の張る格好良い鎧でも買うか?)


 しかし……だ。

 弘が肩当て無しの革鎧を着ているのには理由があって、召喚武具の『特攻服の上着』を着用する際、肩当てが邪魔になる。


(トップクの変な着こなしは我慢ならねぇもんな。けど、そうなるとせっかくの板金鎧とかも肩当てが無くなるわけで……。それはそれで格好悪いか? いや、ステータス画面のアイテム欄には、装備品のセットスロットがある。それなら、一瞬で装備変更ができるじゃん? だが……なぁ)


 この世界に転移してから数ヶ月。

 服を着ているとはいえ、ずっと肩丸出しの革鎧で通してきたのだ。腕をグルグル自在に回せる感覚は捨てがたいし、それに慣れてしまっていた。


「……装備一式ぐらいは、騎士様風なのを用意しておく……ぐらいでいいか。何かに使えるかも知れないし」


 貧相な装備のままでは、カレン達に恥をかかせることもあるだろう。事実、王都を歩いている時に、自分の装備を笑われていたような記憶がある。


(それにしても『騎士様』ねぇ。くくくっ……)


 先の独り言を思い出し、弘は笑った。

 異世界転移した頃。自分を拾ってくれた山賊団の頭……ゴメスが昔話をしてくれたことがあったが、元は騎士の従者だった時の話をした際、かつての主を『騎士様』と呼んでいたのを思いだしたのだ。

 同時に、山賊時代の思い出が湧き上がってくる。


(あの頃の俺は、元学者さんに読み書きを教わったり、剣が上手な先輩に稽古を付けて貰ったり……楽しかったなぁ)


 結局のところ、弘は根城にしていた洞窟の入口で見張りをすることがほとんどで、山賊働きには参加していない。あのまま山賊を続けていれば、いずれは商隊を襲うメンバーに加わっていただろう。討伐に来た駐留軍や冒険者を相手に、レベルアップして得た召喚銃器を乱射していたかもしれない。

 そうなる前に、カレンが加わった討伐隊によって山賊団は壊滅したわけだが……。


(カレンの件が片付いて……そうだ王都でカレンとデートする約束をしてたんだっけ。それも済んだら、また墓参りにでも行くか……)


 山賊団の仲間は、洞窟近くの森の中にまとめて埋葬されている。墓参りとしては一度行ったことがあるのだが、またみんなに会いたい。

 と、そんなことを考えているうちに何だかしんみりしてきた弘。だが……もちろん、油断はしていなかった。


「ひいふう……20匹くらいか。ゴブリンだな。いやあ、慣れてきたもんで、対象物解析とかなくても、気配で解るようになっちまったぜ」


 弘は丸椅子に腰掛けたまま、左手にAK-47自動小銃を召喚する。それと同時に右手にM67破片手榴弾を召喚して、『安全クリップを取り、安全ピンの先をまっすぐに戻す』といった予備動作を念動省略した。要するに、使用前の必要な動作を自動で行ったわけだ。

 傍目には、掌中で出現した手榴弾が勝手にピンを弾き飛ばし、それを弘が……後方へ投げたようにしか見えない。

 投じられた手榴弾は弧を描き、弘よりも数十メートルも離れた先で落下すると、ズバンという炸裂音と共に破片を撒き散らす。


「アギャギャギャギィ!?」


「びぎゅああああ!?」


 草むらから悲鳴が聞こえた。

 どうやら遠巻きに回り込もうとしていたゴブリンが、数体死傷したらしい。血まみれになって立ち上がり、そこから逃げようとする者。踏ん張って武器を構える者も居て、その数は4匹だ。ただし、別の位置にもゴブリン数体ほどの気配を感じる。

 弘は目視していないが気配で大まかな位置は解るため、右手に次々と手榴弾を召喚し、それらを後方一帯へばら撒くように投じていった。 


 ボン! ボボボバン! ズドム!


 投じた手榴弾は全て同じ物。だが、爆発位置によって聞こえる音が違うのは面白い。ついでにゴブリンの悲鳴合唱隊も加わったことで、弘は一気に退屈な気分が払拭されるのを感じていた。


「さすが街道だ。到着するなりモンスターが出るし。ま、ドラゴンが来るまでの暇潰しに最適だな」


 仕事以外でモンスターを殺し歩く趣味はないが、相手の方から襲いかかってくると言うのであれば話は別だ。


「ん?」


 ふと前方を見ると、10匹ばかりのゴブリンが草むらから立ち上がっている。棒きれの先にナイフを括り付けたような槍、何処で拾ってきたのかショートボウを構える者。ダイアーウルフに跨がった騎兵もどきまで居るようだ。

 街道で1人座っている冒険者を包囲して襲おうとしたが、回り込もうとしていた組が壊滅するのを目の当たりにし、行動に出たというところか。


(逃げないところを見ると、やる気だな。俺が後ろの奴ばかり攻撃してるんで、前に居る自分たちには気づいてないとか思ったか? まあ、気づいてないとしても逃げるのが正解だけどな)


 しかし、逃げない以上、そして向かってくる以上は攻撃対象だ。

 弘は左手に持ったAK-47で、薙ぎ払うような射撃を開始する。


 ドタタタタタタタ! タタタ! ガガガガガガ!


 引き金は引きっぱなしだ。MPによって弾薬が弾倉内に補給されるため、弘の召喚銃器はマガジンチェンジを必要としない。加えて言えば、大幅にレベルアップした影響かどうか、今では自動小銃を小一時間撃ち続けてもMPが消費しなくなってしまった。


(ステータス上のMPは百数十万だけど。実質、無限弾薬に近いってことだよな。……ちょっと前まで、それなりにMPが減ってた様な気がするのに。どうなってんだか……と、終わったみたいか?)


 少し考え事をしている間に、前方のゴブリン達は全滅したらしい。

 小銃弾を浴び、踊るように後方へ倒れる者。走ってる最中に頭部を吹き飛ばされて、ひねり込むように突っ伏する者。死に様は様々であったが、結果として辺り一帯にはゴブリンの死体が散乱してしまう。

 弘はAK-47を消しつつ、周囲を見回して頭を掻いた。


「まずった。死体を始末しないと臭ってくるぞ……。みんなに手伝って……貰うのもなんだし、ドラゴンが出てくるまでの暇潰し追加だな。しょうがねぇ、俺1人でやるか……」


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