第十五話 そして檻の中
名前:沢渡 弘
レベル:5→8
職業 :不良
力 :28→35
知力 :13→14
賢明度:24→27
素早さ:28→30
耐久力:30→38
魅力 :16→19
MP :20→35
(3レベルもアップすると、けっこう色々と上昇するもんだな。ん~……3レベルアップしてるのに知力が1しか上がってねーとか……傷つくわ~)
他に気になったのは、耐久力の伸びがいいこと。これは先程の棒叩き刑を耐え抜いたからだろうか?
アイテム欄も開いてみたが……。
・財布(5,028円。銅貨12枚。普通運転免許証。スーパーのポイントカード)
と、ほとんど変動がない。
銅貨については山賊仲間から貰ったものが、そのまま入っている。
さて、次は召喚画面だ。
・鉄トゲのメリケンサック 攻撃力+6 消費MP6
・樫の木の警棒 攻撃力+4 消費MP6
・自転車のチェーン 攻撃力+4 消費MP3
(おおお、色々とパワーアップしてるな。しっかし、チャリのチェーンとか……昔のスケバンみたいだぜ)
樫の木の警棒とチェーンは攻撃力が同じになっている。
(その割には消費MPに差が出てるな? アレか? 使いにくいから、そのあたりで調整が付いたのか?)
実際、弘は喧嘩道具として自転車チェーンを使ったことがなかった。
おそらく召喚しても、上手く使うことはできないだろうと思う。
樫の木の警棒も、バージョンアップして強力になったと言えるが、やはり木製であることが問題になるだろう。
(これで相手の剣とか受け止めたら、スッパリ切り飛ばされるだろうしな)
当面、この世界の武具を装備し、必要に応じて武具召喚をするべきだ。
ちなみに、鉄トゲのメリケンサックについては大いに気に入っている。殺傷力はかなりのものだし、拳による殴打が強化されるのは、慣れた戦い方が強化されるわけだから非常に心強かった。
(こうなると、他にどんなのが召喚できるようになるんだろうな? 興味は尽きねーぜ)
不良武具で言うなら、まず木刀や鉄パイプ。模造刀やバールなどが思い浮かぶ。後は、バットに金属バット。
指折り数えた後で、弘は小首を傾げた。
「実際、そういうのが召喚できたとして、相手は槍やら剣やら持ってるんだよなぁ。相手になるのか? ひょっとして俺の能力って、使えね~んじゃないか?」
要は使い方次第とも言うが、その辺りのやりくりで何とかなって欲しいものだ。
(……まあ、レベルアップしたらステータス数値も上昇するようだし。身体能力が上昇するってことだよな? そのあたりに期待するか……)
門兵の目があるので、その場での召喚テストをするわけにもいかず、弘は暇を持てあましだした。そして、そのうち「あ、今のうちに逃げるのも手だな……」などと考え出したところへ、カレン達が戻ってきたのである。
……チッ……。
「はあはあ! お待たせしました!」
「カレン様、そんなに走らずとも……。ところで今、舌打ちしませんでしたか?」
(聞こえたのかよ!)
尼僧の聴力恐るべし!
弘が「あ? するかよ。耳がボケてきたんじゃねーの?」と言ったところ、「私は、そんな歳じゃありません!」と怒られてしまった。
聞き流しつつ2人を見ると、両者とも背負い袋を背負っている。
割と重量がありそうなのに、普通に背負って動いているのは、さすがにこの世界で旅ができるだけあるな……と弘は感心した。
「じゃあ、揃ったことだし出発するか?」
「そのことで、その……お話しが……」
言いにくそうにカレンが申し出る。
彼女が言うには、門兵の詰め所で一泊できるよう交渉してくれたらしい。
「もう夜中ですから、出発は一泊してからにした方がいいと思ったんです。ただその、普通の宿はサワタリさんが入りにくいかもしれませんので……」
「お、おう。気ぃつかわせちまったな」
弘自身、夜間移動は気にならなかったが、女性2人の方はきついかもしれないと思った。
(いや、今の体調だと俺もきついな……)
山中を昼夜問わずゴブリンに追い回された経験があるとは言え、棒叩きをされた後なので、やはりゆっくりと休養したいところだ。
弘はカレンの申出を受けることにした。
「事後承諾ってのはどうかと思うけど、ありがたく世話になるぜ。さっきの話の続きは、そこに入ってからでいいんだろ?」
2人が頷き、カレンが先導して道案内をしてくれる。
荷物を取りに行かせたのに、結局は町で一泊することになってしまった。
余計な手間を取らせたかな……とも弘は思ったが、門兵詰め所に宿泊場を変更するとなると、一度荷物を取りに戻ったのは正解なのだろう。
(俺だけ門外で野宿しても良かったんだが、それだと俺が逃げちまうしな~)
ある意味でカレン達に拘束され続けている状況だとも言える。少しばかり面白くないが、宿を世話してもらうのだから我慢するべきだろう。
(こういう時、『俺は、お前達とは無関係だ。だから世話になる筋合いはない』とか言って、1人でサッサと何処かへ行く方がいいのかねぇ)
男らしい気もするが、身勝手で格好悪いような気もする。
(ああ、面倒くせぇ。取りあえず今は世話になるか)
再度方針を固めた弘は、先行くカレン達の後をついて歩き続けるのだった。
門兵の詰め所は門の内側、入ってすぐ右の壁面に隣接して建てられていた。
規模としては、駐屯兵詰め所の半分以下。
この町には二箇所大きな門があるので、もう一方の門にも同じような門兵詰め所があるのだろう。
その一つで弘達は一泊することとなった。
元罪人である弘のために、カレンとシルビアが交渉までして用意してくれたのだから、弘としては文句を言う筋合いがない。しかもカレン達は、一緒に泊まるために利用中だった宿をわざわざチェックアウトしているのだ。
(……なんか、こう……裏がありそうな気がしてきたな)
見ると、詰め所入り口でカレンが門兵と話をしており、門兵はカレンには愛想が良かったが、弘に対しては厳しい目を向けてくる。居心地悪いなぁ……と思いながら、カレンの手招きに応じて中に入ると、なんと留置所に案内された。
「お、お~……鉄格子だ……」
地元警察に捕まって、一泊させられたのを弘は思い出す。
聞けば、門兵詰め所には来客用の部屋などなく、配置兵用の狭苦しい寝台があるだけなのだそうだ。門兵側は最初、カレンとシルビアに対しては自分達の寝台を提供しようとしたのだが……。
「実は……」
すすっとシルビアが弘の側に来て、耳打ちをする。
(「サワタリさんだけ、留置場に入れると言われたので、カレン様が……」)
気を悪くして「それなら、私達も留置場でけっこうです」と言い張ったらしい。
(「厚意にすがって泊めてもらうのに、よく言ったもんだな」)
弘が苦笑しつつささやき返すと、シルビアは困ったように目を伏せた。
(「それが、その……門兵の方々の視線が……いやらしい感じでしたので……」)
さらには「俺の寝床に美女の移り香が!」と言った声も聞こえたらしい。
(「なるほど、そりゃあ嫌にもなるだろうな」)
弘は別にして、本来は女の2人旅なのだ。
そういった反応を示されたのでは嫌気もさすし、警戒したくもなるだろう。
結局、留置場の一室にて3人で夜を明かすこととなった。




