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異世界から来た不良召喚術士  作者: 平位太郎
第1章 異世界転移で山賊に再就職!
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第一話 ままならない日常

 夏のお昼時。

 とある葬儀場前で交通整理をしている男がいる。

 沢渡弘。二十歳。

 不良揃いの底辺学校を卒業した彼は、左こめかみから顎に至る向こう傷のせいで就職することもままならず、日々をバイトで食いつないでいる。


(実家で住めるだけ増しかもな……後は、このバイトがいつまで続くかなんだが~)


 弘は男前よりの顔立ちだが、先に述べた顔面傷により威圧感がある。

 コンビニ等の客商売系は、「君の顔が怖いと苦情が……」等と店長に言われてクビにされること数えきれず、せめて葬儀場の駐車係ぐらいは長続きして欲しい。


(世の中ままならね~なぁ。高校時代は怖いモノなんか何もなかったってのに……)


 高校時代、弘は暴走族構成員だった。地方の小規模なチームだったが、当時は特攻隊長さんとして暴れ回っていたものである。

 あの頃の自由気ままさが、今となっては懐かしい。


「もっとこう……俺向きの仕事とか無いもんかなぁ。……ん?」


 ふと自動車の走行音が聞こえたような気がして顔を上げる。


(おっとしまった、車が来ていたか? どっちに行くんだ? 誘導を……)


 ごく短い時間の中で、そこまで考える弘であったが、そんな彼が目にしたのは、猛スピードで眼前に迫るトラックであった。

 


◇◇◇◇



 強い衝撃を感じたような気がする。

 身体に痛みなど感じないものの、妙に視界が暗い。トラックに撥ねられたときは、確か昼間だったはずだ。 


(目ぇ開けてるのに何も見えね~し。……俺、死んじまったか?)


 ろくでもない人生だったと思うが、バイト中に事故死とかさすがに泣けてくる。

 わかっているのは自分が仰向けに転がっていること。そして周囲が真っ暗闇であることだけだ。


「三途の川か何処か知らんが、とにかく暗いままってのは……」


 ぶつくさ文句を言ってると、眼前で白い光が生まれる。 

それは直径が数十センチほどの光球だったが、弘が見つめていると、突然顔面に向けて飛んできた。


「うお! 危ねぇ!」


 慌てて両腕を眼前でクロスさせるも、光球は腕をすり抜けて弘の頭部を包み込んだ。

 瞬間、視界が真っ白に染まり……気がつくと弘は別所に立っている。 

 そこはやはり暗かったが、空には星が見えるので屋外なのだろう。

 問題は、どこの屋外であるかだが、それについてはまるで見当がつかない。

 少なくとも舗装もしていない通りと、その両側に並ぶ木造家屋。それらに弘は見覚えがなかった。

 いや、そう言った景色よりも気にすべきことがある。

 前方数十メートルほど離れた地点にある二階建て家屋を、数十人の人影が囲み、手に手に松明や鎌、手斧などを持って襲撃しているのだ。


「なんだ、ありゃ? ゾンビ映画みてーだな」


 それにしては服装が古くさい……ファンタジーRPGなんかで見かけるような、そういう印象の服である。が、他人の服装以前に、まず弘の着ている衣服が変化していた。

 葬儀場の駐車場係をしていた弘は、茶系の警備員服を着ていたはずだ。しかし、今の彼は黒系の衣服を着用し、その上から茶色のボディーアーマーのようなモノを着込んでいる。


(これ……プラスチックじゃないな。革か?) 


いぶかしんでいると、不意にすぐ隣から声がかかった。


「私も魔法で援護しよう。最初に大きなのを叩き込むから、村人が混乱した隙に斬り込んでくれたまえ」


 そこに立っていたのは、五十代くらいの男性だ。

 身体をすっぽり覆う外套……ローブのようなものを着用し、身長ほどもある木製の杖を持っている。その魔法使いのような風体にも驚かされるが、より弘の目を引いたのは話しかけてきた男性の顔立ちが、どう見ても日本人のそれではないことだ。

 月明かりに映える白い肌、そして高い鼻。


(欧米の人? お、おおおおっ!?)


 戸惑う弘の意に反し、身体が勝手に動き出す。


「了解だ。じゃあ、ちょっと行ってくらぁ!」 


 今叫んだのも自分の意志ではない。

 口ぶりからすると、この白人男性とは知り合いのようだが、弘にしてみれば見知らぬ白人さんなことに変わりはなかった。

 戸惑う彼の心、あるいは精神を無視して身体が駆け出し……二階建て家屋を襲っている人々の中に飛び込んでいく。


(ちょっ! 俺、丸腰! 何も持ってない……って、ありゃ?)


 弘……の身体は、いつの間にか両手に一本ずつの警棒を持っていた。

 自分の身体の行動に関しては、それなりに注意していたはず。しかし、この警棒の出現にはまるで気がつかなかった。

 突然出現したか、どこからともなく『召喚』されたような唐突さで、警棒は手に握られていたのである。

 それは金属製で、先端から3分の1ほどに鉄トゲが備わっている。


(なんだこりゃ? こんな世紀末ヒャッハーな警棒だか棍棒を持ってたら、職質されちまうぞ!?)


 弘の疑問はもっともだが、それは少なくともこの場においては場違いな疑問だったことだろう。

 弘の身体は群衆の一人に対して問答無用で殴りかかり、群衆側も弘めがけて襲いかかって来たからだ。


(クソが! なんだって身体が思うように動かねーんだよ!)


 叫ぶ弘に関係なく身体は動き、人々を殴り倒していく。

 その中で目を引いたのは、殴るたびに警棒の接触部から青白い火花が飛び散っていること。 


(電気? スタン警棒とか、そんな感じの警棒なのか?)


 そしてもう一つ、気になったことがある。

 殴った相手の耳から、小さく蠢くモノが噴出していた。


(なんだ? 耳垂れにしちゃあ黒い……アレは……)


 ハンディカメラの画像のように視界が揺れているので、なかなか注視しにくい。それでも弘は、目をこらして観察しようとしたが……。

 ここで再び視界が暗くなってきた。


(またかよ! マジで、どーなって……)


 悪態は最後までつけなかった。

 弘の意識は電源でも落ちたかのように、ブツンと途切れてしまったからだ。 


読んで頂きありがとうございます。異世界に飛ばされた元不良の青年が、テキトーに動いていく様を書ければいいかな……と思っています。

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