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NEXT DAY

「だから、……大事にするから。……頂戴?」


 ……うん。

 大事にする、と言った言葉は、さしあたり嘘ではなかった。


 でも。

 明日もバイトがある、って言葉は、聞き入れてくれなかった。

 もしくは聞き流された。




 携帯の着信音で目が覚めた。

 どこで鳴っているのか辺りを見回すと、傍らで何かが動く気配がする。

 不意に、あたしを覆っていた体温が離れ、部屋を出ていく。携帯の着信音が近付いて来る途中で切れた。

 さむさむー、と言いながら布団に潜り込んできた彼が枕元にあたしの携帯を落とす。誰からの着信か確認しようとして携帯を開く。だがその前に時計が目に入り、一気に意識が覚醒する。

「いやぁぁぁぁ! 遅刻ぅ!」

 布団からはね起きる。着信履歴を出しながらもう片手で服を探す。あぁ、やっぱりバイト先からだ。

「あぅー。戻って着替えてる時間がない」

 うろたえながら散らばった服をかき集める。

「落ち着けって」

 後ろから手が伸びてきて抱き寄せられる。

「まずバイト先に連絡入れて、指示を仰ぐのが先だろ?」

 正論だけどっ。あんたに言われたくない気がする。

 着信履歴からリダイヤルして、出た相手に店長を呼んでもらう。

 寝坊した件を詫びると、相手は意外な事を訊いてきた。

「……は? そんな訳ないじゃないですか。外に出してた分だけですよ」

 昨夜の『一括お買い上げ』は店内の在庫も含めてか、と訊いてきたのだ。

『そっかぁ。残念』

 店長があからさまにがっかりした声を出した。常識的に考えても、店内にまだどれだけ残ってるかも判らないのに、全部買う、などと言う人がいるだろうか?現に『ほらごらん』という副店長の声が電話の向こうから聞こえる。昨日の嬉しそうな顔は、この勘違いのせいだったのか。

『じゃあ、寝坊の件は仕方ないから、しっかり朝ごはん食べてから、気をつけておいで。……何分で来られる?』

 三十分で、と答えると、今日も忙しいからたぶんまかないは出せないよ、と念を押された。

「……じゃあ、遅くとも一時間以内には」

 通話を切って部屋の主に何か食べるものはある? と訊ねると、冷蔵庫の上を指さした。いくら美味しくても朝っぱらからデコレーションケーキはちょっと重い。

「それじゃあさ、送るから、途中で何か食べてこう」

「送る、って。……え?」


 途中ファミレスで朝定食食べたけど、味なんか判んなかった。


「今日の上がりは、何時?」

 かつての彼女たちが恐怖のあまり二度以上乗るのを拒否したという大型バイクを、妙にしずしずと操って、バイト先の店先に停め、そう訊ねてくる。

「……一応、三時だけど。遅刻したし、店の混みようによっては少し延びるかも」

「んじゃその頃迎えに来るから」

 そう言い残して返事も聞かずに去っていく。……うん、あの走りはいつも通りだ。

 ……いったい、何が起こった?

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