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AFTER THE AFFAIR

 ぐったりして半分以上眠りかけた体をきれいにしてやる。

 タオルケットでくるんでその上から上掛けをかけてやると、幸せそうな笑みを浮かべる。

 シャワーを浴びて戻ってくると、寝返りも打たないで熟睡している様子。

 タオルケットの隣に潜り込んで、そっとキスを落とす。

「おやすみ。……ゆっくり休めよ?」

 そして、聞こえていないことを確認して、さらに言葉を追加する。


「大事にするから、全部もらうぞ」




 まどろみから浮かび上がりながら腕の中の柔らかいものを抱きしめる。

 腕の中の彼女は、お菓子の匂い。顔を近づけて思いきり吸い込む。

 思っていたよりも小さくて柔らかい体。

 滑らかな肌に手を這わせると、かすかに身を震わせる。唇で触れようとすると、無粋な電子音が遠くで鳴っているのに気付く。

 彼女が音の発信源を探るように身動いだので、先回りしてやる。

 発信源は彼女のコートだった。正確には、そのポケットの中の携帯。表示されている名前は、彼女のバイト先のケーキ屋だ。……うん。もうバイト先にいなきゃいけない時刻だしな。

 ベッドに戻る途中で静かになったそれを彼女の枕元に落とすと、毛布の中から手が伸びてきてそれを掴む。

 少し操作していたかと思うと、いきなり彼女が跳ね起きる。

「いやぁぁぁぁ! 遅刻ぅ!」

 わたわたとベッドの上を叩き回りながら目は携帯から離さない。

「あぅー。戻って着替えてる時間がない」

 ようやく、脱いだものはベッドの下に落としていたことを思い出したのか、手が床を払い始める。

「落ち着けって。まずバイト先に連絡入れて、指示を仰ぐのが先だろ?」

 うろたえる彼女を後ろから抱きしめ、耳元でささやいてやる。むっとした顔で睨まれたが、それは可愛いだけだと気付け。

 店長とのやり取りで、三十分で向かう、と主張する彼女は一時間後の出勤になった。グッジョブだ、店長。

「それじゃあさ、送るから、途中で何か食べてこう」

「送る、って。……え?」

 もちろん、朝食前に、おいしく彼女をいただいた。


 貪られてよれよれになった彼女を、風呂場でキレイにしてから、ファミレスで飯を食わせ、店に送り届ける。昨日の今日だから、バイクの運転は、それは丁寧に。バイト上がりは三時だというので、お迎えの約束を取り付ける。彼女の原付はうちに置いたままだからな。


 部屋に戻ると、そこここに彼女の名残が残っている。特にベッド。

 シーツに残る『処女の証』を見ると、思わずニンマリしてしまう。……変態か、俺は。

 窓を少し開けて、換気しながら掃除と洗濯に取り組む。

 ごみをまとめようと冷蔵庫の方に目をやり、ケーキの箱に気付く。

 ……どうしよう、これ。一人では食べきれないし、かといってここに他人を呼ぶ気にはなれない。もちろん捨てるのは論外だ。

 しばらく考えて、携帯を取り出す。

 十五分後。

 性急に鳴るドアチャイムに応えてドアを開けると、こわばった顔をした後輩が立っていた。

「よし、時間ぴったりだな。メリークリスマス」

 後輩の顔が引き攣る。

 俺からそんなセリフを聞くとは思っていなかったのだろう。

 俺自身でさえ、そんな言葉が口を衝いて出るとは思っていなかった。

「ご褒美にいいものをやろう。」

 満面の笑みを浮かべて、下駄箱の上に積んでいた物を手渡す。

「処分方法は任せるが、捨てたりしたら……(バチ)が当たると覚悟しとけよ?」

 蒼褪めてこくこく頷く後輩の目の前でドアを閉める。

 チョコなんか嫌いだ、と叫んでいたヤツだが、それは二月十四日限定だというのは判っている。

 謝礼に今度のヤツの誕生日には気の利いた企画を考えてやろう。

 チョコレートは外せないよな。

 声掛けるメンバーは、女子主体で。ヤツの好みのタイプを揃えよう。

 万一ヤツへの本命チョコなんかを用意してる子がいれば、場のセッティングだけで十分だろ。

 うん、まずリサーチが第一。

 ヤツは地元だから、中学、高校ん時の知り合いも近くにいるはずだよな、好都合なことに。『初恋の人との再会』プランってのも楽しそうだ。

 ……ああ、メモ取っとかないと、メモ。


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