MAIL
その情報を伝えてきたのは、一本のメールだった。
『就職内定者の皆様へ』
と題された内定企業からのメールは、その企業が大きな不渡りを出して会社更生法適用を申請したことを伝えてきた。そのため新年度の新卒採用が中止になったため、申し訳ないが内定を取り消しさせていただきたい、と重ねられていた。
目の前が真っ暗になる、というのを初めて体験した。
折り返し電話してみたが、ずっと通話中だし、企業のホームページトップは『お詫び』と題された社長の謝罪文に差し替えられていた。
誓約書などの入社手続き書類は年明けに提出することになっていたので、それらはどうしたらいいか、などの用件をメールした。すぐに返答が返ってくるとは思えないが。
今から就活のやり直しをしなきゃいけないとなると、胸がつぶれそうだ。
メールを受け取ったのはバイト先だった。
忙しい時期だというのに、ショックで使い物にならないあたしを早退させてくれて、あまつさえ『もし卒業までに就職先が決まらなかったら、バイトを続けてくれないか』とまで言われた。単に、新人バイトを入れると教育が面倒だ、と思っただけかもしれないが。
どうやってうちにたどり着いたのかは覚えていない。
明かりもエアコンもつけない室内でボーっと座り込んでいると、チャイムが鳴った。
ふらふらと立ち上がってドアを開けると友人の何人かが心配そうな顔をしてそこにいた。
「どうしたの……?」
「どうしたの、じゃないでしょ。メール見たよ。大丈夫?」
「メール……?」
話を聞くと、覚えのない内定取り消しのメールが送付されてきたのだそうだ。その企業の名前が、あたしが内定をもらったところだと知っている何人かが気付き、連絡を取り合ってきてくれた、という事らしい。
「ああ、質問メール送ったから、その時に誤操作したのかも」
そう、ここにいるメンツは、皆『ハッピーバースデー』のメンバーだ。会合のメールを送るアドレスに一斉送信してしまったらしい。
「ごめんね。みんなに迷惑かけて」
「いいよ、そんなの。でも、内定の件はほんとなんでしょ? 大丈夫?」
「大丈夫、……かなあ。正直、今は頭真っ白」
真っ白、というか、……何も考えられない。
「よし、とりあえず飲みに行こう! 試験も終わったし!」
「そうそう。こんな時に一人でいたらダメ!」
「大丈夫、あんたの分はみんなで奢るから!」
あれよあれよという間に部屋から引きずり出されてしまった。とりあえず戸締りだけは確認したけれど。




