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HAPPY NEW YEAR AND…

 お風呂に入って頭を拭きながら部屋に戻る。

 日付が変わるまであと三十分ちょっと。

 携帯をマナーモードにしてバスタオルの上に置き、ベッドの上で髪を乾かす。就活に入ってから伸ばし始めた髪は、ずいぶん長くなっている。肩より長くしたのは十年ぶり、……それ以上、かな。

 長くなった髪は、乾かすのに時間がかかる。

 ドライヤーを使っていると、音が聞こえにくくなる。でもまだ日付が変わるまで間があるから、と油断していたら、携帯が光っている。

 慌ててドライヤーのスイッチを切り、時計を見ながら電話に出る。時計が遅れているのでなければ、日付が変わるまでまだ一・二分ある。

「もしもし?」

「おねーさん、パンツ何色?」

「………………着拒するよ? 発信者表示されてるんだからね」

 電話の向こうで苦笑する気配。

「動じないなぁ。まあ、お前らしいっていうか」

「イタ電するためにあんなメール寄越したの?」

「んなわけないだろ。お返しって書いてあったろうが。……誕生日おめでとう」

 いつの間にか日付が変わっていたらしい。もしかしたらタイミングを計っていたのかも。

「……ありがとう」

 ちょっとフライング気味だけど、『誕生日おめでとう』は正直に嬉しい。

 テレビから聞こえてくる『おめでとう』とは別物だから。

「ところで、ちょっと出てこれるかな? プレゼントがあるんだ」

「……は?」

 何か妙なことを言われたような。

「プレゼント。誕生日の」

「じゃなくって。……その前」

 出て来い、って言ったよね? どこに?

 ちょっと、って聞こえたような気もするけど。……どれくらいの、ちょっと、だ?

「寝てたんじゃなければ、ちょっと外まで出てこれないか、って」

「いや、だから……あんたどこにいるの?」

「ナビが正しければ、おまえんちの前。もしくは、お前と同じ苗字の、誰かのうちの前」

 はあ?!

 ナビが正しければ?

 急いで窓を開ける。

 町内に同じ苗字は片手以上ある。間違ってひとんちの前に立ってたら通報ものだ。

 塀の向こうに誰かがいるのが見える。窓を閉めてコートを羽織り、玄関へ急ぐ。

 途中、ダイニングの前で母に「どこ行くの?」と訊かれたので、「ちょっとそこまで」と答える。便利だな「ちょっとそこまで」って。

 コートのボタンを留めながら外へ出ると見覚えのある長身が見慣れない車の前に立っていた。

「よ。あけましておめでとう、も言っといたほうがいいか?」

「……今年もよろしく、って。なんでここにいるの?」

「プレゼントの配達に」

「…………年賀状、じゃなくて?」

 新年零時の『あけましておめでとう』は拒否りたいけど、年賀状までキャンセルするつもりはない。

「あのな、実物が目の前にいるのになんで年賀状?」

「直に会うのと年賀状は別。くじって何かわくわくするでしょ?」

「それはいえるけど……プレゼントは要らないのか?」

 若干不機嫌になった様子。

「えーと、欲しい、かな?」

「……かな?」

「いやいや。欲しい、です。いただける物なら何だって」

 バースデイプレゼントと銘打ったものだったら、それだけでありがたい。それに。

「わざわざここまで車とばして来てくれたんだし。……って、車持ってたんだ?」

 車には詳しくないし、暗いのでよくわからないが、白っぽいメタリックカラーの車。……傷をつけたら修理代が嵩みそうな。

「持ってた、というか、親父のお古」

「ふーん」

 『お古』というには新しそうな。車道楽のお父さんなのかな。

「……乗ってみるか?」

「いえいえ。遠慮しときます」

 手を振って半歩下がると、逆に距離を詰められた。

 ふわりと抱き(くる)められる。

「足、寒そうだぞ」

 そう。さっきから足が冷えて冷えて、無意識に足踏みしてた。

「もう、寝るところだったから」

「そうか。悪かったな」

 不意に、うしろからあたしを呼ぶ声がした。母だ。

「誰? お客様なら、上がってもらえば?」

 いやいや、母。新年とはいえ、深夜ですよ?

 お客様をお招きするような時間ではないと……

「すみません。ではお言葉に甘えて」

 あんたも図に乗って……あ?

 冷たい。何これ?

 雨とか降りだしてきたし。ま、しょうがないか。寒いし。


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