ATTRACTOR
クリスマスが終わると、ケーキショップは通常営業になる。
……のだが。
うちのショップには人寄せパンダが一匹増えた。
「ケーキセット一つで三時間も粘られるとさすがに困るんだけど」
外からよく見える定位置で(さすがにヤツは自分の外見を知っている)のんびりとコーヒーを口に運ぶ男は悠然と答えた。
「おかげで売り上げが増えたって喜ばれたけど?」
「誰に?」
「店長」
あんの店長めぇー。従業員の労働環境を何だと……
「何時間でもいてもいいよって言われたけど、就業中の店員には手を出すなって釘刺された。おかげでキスの一つもできない」
……注意されなかったら何か仕掛けるつもりだったのかこいつ。
「うちはケーキショップですから」
「うん。それは知ってる。店長の腕前も認めてる」
……だそうですよ店長。何その上から目線。
まあ、でなきゃ月に万単位でお金落とさないわな。従業員割引を要求してるけどな。
「来年度もうちのサークルが存続するかどうかはわからないから。……まあ、ささやかな恩返し?」
「……へえ」
「ところで、こんなとこで油売ってていいのかな?」
何その余裕の笑み。……あ、お客さんか。
「……『また何かご注文がおありでしたらどうぞ』」
コーヒーサーバーを抱えてカウンターに戻る。
……何か気に食わない。が、お客様にそんな顔を見せるわけにはいかない。
「いらっしゃいませぇ」
あと二時間頑張れば、今年のバイトは終了。気合入れて頑張ろう。
店は三十一日まで開いてるって話だけど、店長と副店長で回せるって言ってるし。




