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WAITING TIME

 少し早目に上がって、こっそり原付を回収しに行こう、という目論見は潰えた。何しろ上がり時間の一時間も前から店の前をうろついているのだから。

「ほかのお客様の邪魔になりますので、どこか別の場所でお待ち願えませんでしょうか?」

「あ、今日はサンタじゃないんだ」

 妙にうれしそうな顔で応じる。返事がかみ合ってないが。

「中では客の目を引く必要がないので。……なんなら中で待っていれば? ケーキセットのコーヒーはおかわり自由だから」

「……いいのか?」

「ケーキセットは自腹でね」

 売り上げに貢献することを条件に店内に入ってもらう。ちゃんとした格好をすれば、見場は悪くないから、客寄せにもなる……かな?

 入ってもらってしばらくすると、じわじわと『後悔』の二文字が湧きあがってきた。ずっと視線が追いかけてくるので仕事がやり難くって仕方がない。人伝に聞いた様子とはずいぶん違う。

「あれ、先輩の彼氏ですか? カッコいいですね」

 カウンターに戻ると、入ったばかりの高校生バイトの子がそう話しかけてきた。違う、と言いかけて思いとどまる。……そういうことに、なった、のかな?

「……気合入れてればね」


 昨日から同じ服だから着替えたい、というと、直接うちの方に送りつけられた。朝と同じように、教習所のお手本のような、それはそれは丁寧な走り方で。

「明日は休みだって店長に聞いたから、ゆっくりできるよね?」

 ヘルメットを持ってついてくるので、釘を刺しておこうと思い、ドアの前で後ろを振り向く。

「休みだからいろいろやっときたい事があるんだけど。洗濯とか大掃除とか……」

 ……何でそこで『見捨てられた仔犬の目』を繰り出すんだ。そのガタイで。

「……洗濯機回す間、待ってて」


 待っててはくれたけど、おとなしくはしていてくれなかった。

 おかげで洗濯物が干せたのは、洗濯機が止まってからずいぶん後になってしまった。

 酔っぱらうとキス魔になるのは知ってたけど、素面なのに。

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