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PARTY

「俺ってさ、バースデーケーキ、食った事ないんだよねー」

 非公認サークル『ハッピーバースデー』の部長である彼がケーキのフォークをくわえながらそうつぶやいた。

「あのぉ……ぶちょ? 今口にしているものは何でございましょうか?」

 横にいる二年生男子が、おそるおそる半分、揶揄半分、といった口調で訊き返す。

「ケーキ、だな」

 『ハッピーバースデー』は部員やその知り合いの誕生日にパーティを勝手に企画して騒ごう、という非常にゆるーいコンセプトの、いわばコンパ用サークルだ。

 今もその例会、つまりバースデイパーティーの真っ最中だ。今年の新入会員である一年生女子が今日の主役だ。主役が未成年なので、アルコールは無し、解散は八時、という非常に健全なパーティだ。……まあ、後期試験目前でもあるし。

「彼女の、バースデーケーキ」

 バースデイプレゼントの包みを開けながらきゃあきゃあ言っている一年生の方を見ながら、彼が恨めしげにつぶやき、フォークをケーキに突き刺した。

「あぁ。つまり、自分のは、って事っすか?」

 彼が重々しく頷いた。手にしているのがコーラのグラスなので、今一つサマになってないが。

「それでこんなサークル作ったんだけどさ、やっぱり祝ってもらえねー訳。大学って休みがやたら長ぇんだよな。そこ誤算だった」

 ケーキをコーラで流し込みながら嘆く。

「あー俺、一生他人の誕生日祝って終わるのかな」

 あたしと同じ四年生の彼は卒業後、イベント会社への就職が決まっている。

「仕方ないよ。みんな忙しい時期だし」

「あれ? ぶちょの誕生日知ってるの?」

「うん、知ってるよ。名簿のメンテしてるのあたしだし。……あ、そうだ、名簿、どうしよう?」

 名簿っていっても名前と生年月日と連絡先の電話番号もしくはメアドとちょっとしたメモしか書いてないが。……とはいえ、人数だけは百人以上ある。

「んー。この酔狂なサークル引き継ぎたいっていう奇特な奴がいたら、渡してやればいいんじゃね?」

 このサークルが酔狂だという自覚はあるらしい。

「じゃ、最後だし、ぶちょの誕生会でも企画する?」

「お前の誕生日のが後だろうが」

「え? 先輩たちの誕生日って、いつ?」

 あたしたちが口々に誕生日を言うと、後輩たちは揃って「げ」「勘弁して」と呻いた。……まあ、あまり期待はしてなかったけど。

「ま、いまさら祝ってもらわなくてもね」

 主宰者のくせに、サークルの趣旨を根底から覆すような発言をする。

 まあ、その気持ちはわかる。

 だからこんなサークルを作ったんだろう、ということも。

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