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夢の中

どうしてこうなるのか。

私は考えた。

少し前を歩く、担任の横顔を見ながら。


「一緒にまわるか。」

そういって、担任は私の手をとって、ゲートをくぐった。

くぐってすぐに手を離したけど。


なんか、おっきかったな、手。


いやいやいや。一人の私を気遣って、誘ってくれたんだ。

かわいそうな子と思われたかもしれない。


「さて、どこに行きたい?」


そう聞いてくれた担任に私はちょっとだけ、期待してしまうのだった。



「大野は薬剤師になるんだよな。」

ポップコーンの列に並んでいるとき、担任が言った。

「なれるか、分かんないんですけど…」

ここのポップコーンはどの映画館のよりも美味しい。

と担任が言ったので、長だの列に並んで半分のときだった。

「お前なぁ…、なりたいと俺に言ったんだから、自信持てよ。

 お前がなるって思わないで、どうすんだよ?」

「なりたいけど、大学うかるか、不安です」

甘い匂いが近づいてくる。

一歩一歩。

「センセー、夢の国で進路の話はナシですよ。」

私は言った。


たぶん、この感覚と似ている。

どんどん近づいてくるんだ。

色んなことが。

不安とかホントはそんなモンじゃない。

砂時計の一粒一粒が惜しい。


ほらね!進路のハナシなんかしたから、夢から覚めちゃったじゃんか。


「ごめんごめん。

 でもな、そんないっぱいいっぱいにならなくても、大学がゴールじゃないんだから。

 落ちても、次がある。

 本当になりたいものは、いつからでもなれるんだぞ。」


パレードがもうすぐ始まると放送が告げた。

また私は夢の国へ引きずり込まれる。






「あれ?大野さんと高田先生でまわってるんですか?」

ジェットコースターに並ぼうとしていたとき、国語の安部先生に声を掛けられた。

阿部先生は、一人で食べ歩きのチキンを食べていた。

「そうなんですよ。大野が化粧してきたから、注意してる間に友達とはぐれちゃったみたいで…」

「そうなんですか~。大野さんいつもはしてないのに、気合いれちゃった?」

阿部先生がにこやかに私の顔を覗く。

「まぁ…はい。そうですね」

なんか、上から目線!!

「安部先生はお一人で?」

担任が訊く。

阿部先生は恥ずかしそうに

「ええ。さっきまで派手なカッコのうちの生徒を補導して一緒に歩いてたんですけど、逃げられちゃっ て…」

と言った。

阿部先生は、一昨年学校に赴任してきた若い先生だ。

いつもの授業の怒鳴り声とはまったく違う、小さな声。

「じゃあ、一緒にまわりましょう。」

と担任は言った。

「そうね、歩いてる間に、大野さんの友達にも会えるかもしれないですしね!」

阿部先生はにっこりと担任に微笑んだ。

そして私に

「大野さんも、早く友達にあえるといいね。」

と言った。


この人、あまりに分かりやすく、且つ図々しくないですか?!



私は二人の後ろを歩きながら思った。

私が担任と歩いてたのに。

私が担任の横にいたのに。



ってあれ?



なんでこんなに怒っているんだろう?



よくよく考えたら、阿部先生の態度は当然だよね。



生徒と教師で歩いていて何か楽しいことあるか??



「やっぱり私、絶叫系無理なので、パレード見に行きます!」


私は列に並ばず、走りだした。



「えっ!おいっ待て!!」


制止した担任の声に背を向けて。



読んでくださって、ありがとうごさいます。


楽しんで読んでいただければ、と思います。

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