第六十五話 七月八日(日)親睦会 5
ひととおり、カラオケをうたい終わると、こんどはボウリングなどもして遊び、やがて夕方になった。蛍子さんのつごうもあるので、暗くなるまえに解散ということになった。
「そんじゃ、おれはホタルを送っていくわ。コウは徹子をたのむ」
「おう。じゃあな」
ゴーと蛍子さんが、ならんで歩きはじめた。徹子ちゃんは、笑顔でふたりのうしろ姿を見送っていた。
「なんか、思ってたよりもずっと感じのいいひとだったね、徹子ちゃん」
蛍子さんは、無口で無愛想に見えるところもあるが、話してみると、まったく冷たい感じはしなかった。おそらく、単純に他人との会話が苦手なだけなのだろう。
美容師とは、おしゃべりな人間がなるものだという先入観があったが、彼女はだまって手だけ動かすタイプなのかもしれない。
「……わたし、こんど蛍子さんから髪を切ってもらう約束をしました」
「髪を? どんなふうに?」
徹子ちゃんの髪型は、肩までの長さのおかっぱ、いわゆるミディアムボブである。まえが綺麗に切りそろえられていて、日本人形のようなかわいらしさがあった。
「幸さんみたいにしちゃおうかな。ばっさりと、短くしちゃうんです」
「そんなことは」
いまの髪型だって、充分に似あっているよ。そういいかけて、しかし僕は口をつぐんだ。徹子ちゃんの声がふるえている。それは涙声だった。
「失恋したら、女は髪を切るものですよ」
「ああ……」
よく、耐えていたと思う。僕が幸のことを好きなのとおなじように、徹子ちゃんも、子供のころから、ずっとゴーだけを見つめてきたのだ。
それでも、どんなに好きで大切に思っていても、あきらめなければならないことはある。
「タケくんと蛍子さんを、わたし、応援してあげ、うっ……」
彼女の両目から、大粒の涙があふれだした。僕はハンカチを取りだして、それをぬぐってやった。
「す、すみません、公平さん」
「いいんだよ。……さあ、帰ろう」
はいと返事をして、徹子ちゃんは目を真っ赤にしたまま笑った。その笑顔は、ふしぎといつもよりおとなびたものに見えた。