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冥王星の少女 -the phantom girl of absolute zero-  作者: 草原猫
第四章 噂話と誤解と疑惑
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第六十五話 七月八日(日)親睦会 5

 ひととおり、カラオケをうたい終わると、こんどはボウリングなどもして遊び、やがて夕方になった。蛍子さんのつごうもあるので、暗くなるまえに解散ということになった。

「そんじゃ、おれはホタルを送っていくわ。コウは徹子をたのむ」

「おう。じゃあな」

 ゴーと蛍子さんが、ならんで歩きはじめた。徹子ちゃんは、笑顔でふたりのうしろ姿を見送っていた。

「なんか、思ってたよりもずっと感じのいいひとだったね、徹子ちゃん」

 蛍子さんは、無口で無愛想に見えるところもあるが、話してみると、まったく冷たい感じはしなかった。おそらく、単純に他人との会話が苦手なだけなのだろう。

 美容師とは、おしゃべりな人間がなるものだという先入観があったが、彼女はだまって手だけ動かすタイプなのかもしれない。

「……わたし、こんど蛍子さんから髪を切ってもらう約束をしました」

「髪を? どんなふうに?」

 徹子ちゃんの髪型は、肩までの長さのおかっぱ、いわゆるミディアムボブである。まえが綺麗に切りそろえられていて、日本人形のようなかわいらしさがあった。

「幸さんみたいにしちゃおうかな。ばっさりと、短くしちゃうんです」

「そんなことは」

 いまの髪型だって、充分に似あっているよ。そういいかけて、しかし僕は口をつぐんだ。徹子ちゃんの声がふるえている。それは涙声だった。

「失恋したら、女は髪を切るものですよ」

「ああ……」

 よく、耐えていたと思う。僕が幸のことを好きなのとおなじように、徹子ちゃんも、子供のころから、ずっとゴーだけを見つめてきたのだ。

 それでも、どんなに好きで大切に思っていても、あきらめなければならないことはある。

「タケくんと蛍子さんを、わたし、応援してあげ、うっ……」

 彼女の両目から、大粒の涙があふれだした。僕はハンカチを取りだして、それをぬぐってやった。

「す、すみません、公平さん」

「いいんだよ。……さあ、帰ろう」

 はいと返事をして、徹子ちゃんは目を真っ赤にしたまま笑った。その笑顔は、ふしぎといつもよりおとなびたものに見えた。

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