第四十四話 六月十一日(月)昼休み 耀子のアルバム 2
やがて、写真の委員長は中学生になった。
緊張した面持ちで、真新しい制服に身をつつんでいる。髪型は、三つ編みだった。ここにきて、ついにといった感じである。小学六年生のころには、いまとほとんどおなじぐらいの髪の長さになっていたようだが、ストレートに流していただけで、まとめてはいなかったのだ。
ただし、前髪はおろしたままだった。おかげで、すこし地味というか、垢抜けない印象だった。
それから、見開きのとなりのページには、体育祭とおぼしき写真もあった。体操着姿で、弁当を食べている場面のものである。
服の胸部分が、中学生にしてはやけにはっきりと盛りあがっていた。
へえ、委員長は、このころからもうすでに胸がおおきかったのか。
僕は思わず顔をあげて、現在の彼女の様子を確認してしまった。
委員長は、さきの写真――中学校入学の日の朝だそうである――の補足説明をしているところだった。胸を腕にのせ、机についた肘で上半身をささえるような姿勢をとっていた。
両腕にはさまれて、おっぱいがすばらしく強調されていた。薄手の夏服は、彼女の乳房の豊満さを、すこしも隠してはいなかった。
否、もはや夏服がどうというようなレベルではなかった。たとえ冬服であろうと、これほどのものを隠蔽などできようはずがないのである。
まさしく、それは母なる双丘だった。神々に祝福されし愛のアムリタをもたらすものだった。
ああ、じつに素敵だなあ。いちどでいいから、抱きついて顔を埋めてみたいなあ。そうしたらきっと、気分がいいんだろうなあ。
……ええと。
うわ、しまった。僕はアホか。なにを変なことを考えているのだ。失礼きわまりないだろ。
あわてて、僕は彼女の胸から目をそらした。
「うひゃあ、耀子ちゃんって、このころから胸がおっきかったんだぁ」
いきなり、幸が感心したような声をあげた。どうやらおっぱいの、もとい、体育祭の写真に話題がうつったようだ。
まずい、なにか嫌な予感がする。
「おんや? 公平、どうしたぁ? なに赤くなってるのん?」
案の定、幸がニヤニヤ笑いをうかべながら、僕に話題をふってきた。よしてくれ、こういうのは苦手なんだってば。
しばらくのあいだ、僕が適当にもごもごいってごまかし、幸がからかいの言葉を口にするといった展開がつづいた。委員長は、とくに気にしたふうでもなく、おだやかに笑っているだけだった。




