表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥王星の少女 -the phantom girl of absolute zero-  作者: 草原猫
第二章 クッキーとイチゴパフェ
36/210

第三十六話 五月七日(月)黄昏 5

 ジョルノには、数分ほどでついた。

 道路に面した窓から、内部の様子が見てとれる。料理に定評のあるカフェというだけあって、店内には外食を楽しみにきたといった感じの家族づれが多かった。もちろん高校生、あるいは大学生ふうの客もいた。

 店にはいると、すぐにウェイトレスがあらわれて、僕たちに接客してくれた。彼女が案内してくれたのは、ゆったりとしたふたり掛けの長椅子がむかいあうテーブルだった。

 さて、いつものメンバーであれば、こういうとき、僕と幸、ゴーと徹子ちゃんというように、ならんで座るところである。

 だが、今日はゴーがいない。さらに、もともと幸と徹子ちゃんがふたりで来るはずだったこともあり、おまけにあすかまでいる。

 となれば、この場合、幸と徹子ちゃんがならんで座り、僕とあすかがそのむかいにすわるのが正しい。

 そう思ったので、こちらからさきに席につくことにした。

「じゃあ、僕はこっちね」

 つづいて、あすかが僕のとなりに、徹子ちゃんがむかいに、それぞれ腰をおろした。

 そして、最後にのこった幸は、徹子ちゃんのとなりに腰かけるはずだった。

 はずだったのだが……。

「えい」

 かけ声とともに、いきなり、あすかが幸の手をひっぱった。すると、相手はそのまま吸いよせられるように、こちらの席にすわってしまった。

 幸は、自分が不自然な行動をとったことに、気づいていないようだった。

 はあ、なるほどねえ。公園をでるまえに、さわっていれば転ばせることは可能だとかいっていたが、こういうことだったのか。

 しかし、まずいな。あすかの姿は、僕以外の人間には見えていないのである。これでは、幸があたりまえのような顔でこちらの席についたというふうに、徹子ちゃんから思われてしまったはずだ。

 案の定、徹子ちゃんは、すこし微妙な表情をうかべていた。

 席順など、ふだんはほとんど意識したことがないが、男ひとり女ふたりという組みあわせで、男女がならび、のこった女の子がひとりで向かい側というのは、どうなのだろう。彼女に疎外感をあたえなければいいのだけど。

「おふたり、いつも仲がおよろしいんですね。うらやましい……」

 徹子ちゃんがいった。声に、苦笑めいた響きが感じられた。それにたいして、幸は相手がなにをいっているのかわからないというふうに、小首をかしげるだけだった。自分の意思でこちらに腰かけたわけではないのだから、当然のことだった。

 ……ううむ。

 それにしても、せまっくるしいな。

 椅子はおおきめだが、しょせんはふたり用の席である。僕・あすか・幸とならんですわると、さすがに窮屈といわざるをえない。

 いちおう、ほかのテーブルには、席のまんなかに子供をすわらせて三人掛けにする夫婦の客もいる。とはいえ、ああいうのは子供がちいさいからこそできることだ。

 小柄な幸を中心に据えるのなら、多少はバランスがよくなる気もするが、それもむりな話だ。そのためには、いまあすかとそうしているように、体を密着させなければならない。

「ほら、公平。もっとこっちくるの。幸さんと離れすぎてて、不自然でしょ!」

 うわっ、考えごとをしているときに、いきなり腕をひっぱるなよ。

 まあ、とにかくだ。そもそも、距離が不自然なのは、ふたり用の席に、むりやり三人ですわっているからだろう。アピールとやらのために、僕と幸をならばせたかったのだろうが、まんなかにあすかがいたら、まったく意味がなくなってしまう。徹子ちゃんのとなりがあいているのだから、そちらに移動すればいいのに。

 あすかは、意地でもこの三人掛け状態をキープしたいようだった。あるいは、このことには、なにか儀式とかそういう特別な意味あいでもあるのだろうか?

 幽霊の考えることは、よくわからない。正直なところ、それが本音だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ