表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

週末彼女2

作者: あい

彼と出会ったのは、あの合コンの夜だった。

最初の印象は、穏やかで優しそうで――実際、あの夜の彼は誰よりも丁寧だった。

酔いすぎた私を心配してくれて、タクシーを呼ぶふりをして、気づけばホテルへ。

拒む余地もなかったけれど、どこかで「この人なら」と思っていた。


あの一夜限りだと思っていた関係は、なぜか続いた。

でも、会えるのは決まって金曜日の夜だけ。

「平日は忙しい」と笑って言う彼の言葉を、私は何も言わず受け止めた。

けれど、“私以外の誰か”の存在が、週末の隙間から静かに滲み出してくる。


それでも、私は毎週金曜日になると、彼のための“私”を作る。

薄くて柔らかいストッキングに、膝上丈のスカート。

胸元をさりげなく強調するチューブトップブラと、崩される前提のハーフツイン。

ルージュも、香水も、彼に「可愛い」と思われるためだけに選ぶ。


駅で待ち合わせて、ホテルへ向かう道中。

彼の手が、当たり前のように私の太ももに滑り込み、スカートの奥へと入る。

もう私は、それを止めようとも思わない。

エレベーターの中、深く唇を奪われて、ルージュはすぐに消える。

私は、彼に「脱がされるための私」になっていく。


ベッドに押し倒され、パンプスが脱げ落ちる。

スカートがめくられ、ストッキングは荒々しく脱がされ、爪でできた伝線が太ももに走る。

ショーツのクロッチをずらされ、ブラはお腹まで押し下げられ、胸を揉まれ、舐められる。

まだ服を脱ぎきっていないままの、激しい一回戦。

スマホのレンズがこちらを向いていても、私はもう何も言わない。


二回戦目は、ボタンを外されたトップスが床に落ち、

ブラのホックが外れ、スカートも完全に脱がされる。

熱く打ちつけられる彼の腰。

私は汗と涙でファンデが流れ、乱れたハーフツインから髪がこぼれ落ちるのを感じながら、

また絶頂に堕ちていく。


三回戦目には、ショーツすら脱がされ、完全に何も纏っていない。

私の身体を、彼が見下ろす。

そこには、崩れたメイクと、潤んだ目をした“女の顔”をした私がいた。

愛されていないのに、身体だけは彼にすべてを許している――その現実に、心だけが遠く離れていく。


彼がシャワーへ向かったあと、私はそっと起き上がり、鏡の前へ行く。

乱れた髪、濡れた睫毛、落ちたルージュ。

メイクはぐちゃぐちゃに崩れ、口元は噛まれた痕で赤く腫れている。

だけど私は、鏡を見つめながら微笑もうとする。

「これでいい」そう思い込まないと、心がもたない。


シャワーを浴びて、彼に触れられたすべてを洗い流す。

そしてまた、ドライヤーをかけ、ヘアアイロンで巻き直す。

彼が好きだと言ったふわふわのハーフツインに髪を結び、

ファンデ、アイライン、マスカラ、ルージュ――“可愛い私”をもう一度作り直す。


足元にあるのは、伝線して履けなくなったストッキング。

それを無言で丸め、ホテルのゴミ箱へ入れる。

履き替えはない。

私は生脚のまま、夜の街に帰っていく。


心のどこかで、彼には本命の彼女がいる気がしている。

私の知らない誰かと、休日を過ごし、名前を呼び、優しくキスをしている気がしてならない。


それでも、私は金曜日が来るたびに、

彼に脱がされるための“私”を整える。

愛じゃなくても、熱が欲しい。

感じてしまう身体が、心の寂しさに蓋をしてしまうから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ