小話
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ぐったりと項垂れた男の体が、拷問椅子に括りつけられている。
顔の半分は腫れ上がり、もう尋問どころではない。
情報は吐かせた。今は、ただ“後の処理”だけが淡々と進められていた。
床に血を垂らす音を聞きながら、二人の龍焰の部下が、備品整理と掃除のふりをしながら、そっと声を潜める。
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「……いつもより早く終わったな。」
「ああ……ボスのおかげでな。
あれ、今日周さんじゃなかった?」
「最近はたまーにボスが来る。
……暇つぶしか知らんけど、“あの人の目”があるだけで、現場が凍るわ」
「さっき電話越しに笑ってた。『はいはい〜』って、まるで退屈そうに……」
「けどあの声で、背筋がピリッとした。……意味分かる?」
「ああ。
“何を話してるか”じゃなく、“誰が話してるか”で空気が変わる。……本当に、“支配者”だな、あの人」
「なんでだろな……“背中見せたらアカン”って、身体が思う。あれ、“恐怖”とはちょっと違うよな」
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そのとき、足場の上からカーンと靴の踵をならした音がした。
手すりにもたれかかっていた彼が、ゆるやかに視線を落とす。
真下__音が急に静まった1階へ。
後処理を行う部下を見ながら
「……その口、次に開く時は誰に聞かれてるか考えてな?
ほな、片付け任すで、終わったら飯でも行っといでー
お疲れさん。」
男たちは無言で顔を見合わせ、誰からともなく作業を再開する。
上から落ちてくるその声は、澄んでいて、妙に静かだった。
李 黎炎。
人を支配し、奪い、壊し、そして守ることを生業とする男。
だが彼の貌は、不思議なほど整っていた。
肌に一点の翳もなく、唇の形は冷えた硝子細工のように均整で__
見惚れるには美しすぎて、畏れるには美しすぎた。
美が美であるがゆえに、冷たい。
“静けさの真実味”を嗜むその男は、
まるで――“この世にとって、余分なほど整った災厄”だった
国の名前を変更致しました。
存在している国の名前をやめて
蒼嶺会がある国を日映
龍焔がある国を華連
にさせて頂きます。
変更しましたが、残っている所があれば
教えて頂ければ幸いです。