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焔の檻  作者: iro.
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༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶


部屋は驚くほど綺麗だった。

中華風の格子窓に、濃い朱色の絨毯。

シーツは真っ白でふかふか、壁には牡丹の刺繍が施されている。

けれど、それらすべてがまるで”よそ行き”で、春の肌に馴染まない。

「.....広、なんか.......ホテルって感じ」

ぽつりと呟いたあと、春は制服のままベッドの端に腰を下ろした。

ふわりと沈み込む柔らかさが、妙に落ち着かなかった。

それでも、しばらくのあいだじっと天井を見ていた。

さっきの男李黎炎。

綺麗な顔に、獣みたいな目を思い出す。

「.....やっぱり、普通の人じゃないよね、あの人」

独り言を漏らしながら、何気なく背中の方を振り返った。

何か、感じた気がして。

けれどそこには、誰もいない。

ーいや。


"誰もいない”のに、"何かいる”


ドアの方でも、窓でもない。

まるで壁そのものが、じっと彼女を"見ている”ような感覚。

呼吸が一瞬、止まった。

視線。鋭くて、無機質で、感情のない何か。

けれど敵意も、興味もない。ただ見ている一そんな気配。

「.....見てるの、誰?」

声に出してみても、答えは返ってこない。

それどころかその"気配”は、まるで最初から存在しなかったかのように、すうっと消えていった。

春はしばらく黙って、部屋の空気を確かめるように深く息をついた。

「.....気のせい、だよね。多分」


そう言いながらも、背中にはまだ小さな寒気が残っていた。




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