表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
焔の檻  作者: iro.
3/12

3


だが一一次の言葉は、

彼の予想をあっさり裏切った。


「この血、使う?どうせ役に立つんでしょ?」

「......ほぉ?」


「価値があるんだったら使ってくれていいですよ。

ただその代わり、私を、ここに置いてください」


黎炎の表情が止まる。

ほんの数秒。彼の顔が「無」となった。

その直後だった。

「一あはははっ!」

重低音の笑い声が、部屋に響いた。

普段、どこまでも冷静で皮肉混じりの黎炎が、まるで喉の奥から爆発するように笑い出す。


「なんやねん、君.....俺に"取引”仕掛けてくる女、初めて見たで......!」

笑いながらも、目が細いられる。

その目の奥には、獣のような光が宿っていた。

「おもろいわ。気に入った」

黎炎は椅子から立ち上がり、春に歩み寄った。

その距離感はまるで、獲物に触れる直前の捕食者。

「ええよ。ほなー取引成立や


君は"龍焔”のもんになる。その代わり、君の価値、たっぷり使わせてもらう」

そう言いながら、彼は指先でそっと春の髪を払った。


「.....名前、なんて言うん?」

「美咲、春です。」

「そっか。春......ええ名前や

今から君は、ウチの“駒”や

それも、特等席のな」


重い沈黙が一度流れたあと、黎炎はゆるりと顎を指でなぞった。


「.....りゅう、部屋、用意してやれ。

春の専用の」


控えていた黒服の男がすぐに一歩前へ出る。

無言で会釈したあと、彼はレイラのほうを向いた。

「こちらへ」

レイラは一瞬だけ黎炎を見たが、何も言わずにその背を追った。

細い足取り。けれど、背筋はまっすぐ伸びている。

扉が閉まる音を背に、黎炎は指先で髪をいじるように額を払った。

しばらく無言。


一周しゅう

「.....はい、黎さん」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ